都市計画と言えば、大規模な土木工事で広大な敷地を作り、そこに最先端の技術を駆使した、 理想の町を作ることをイメージするのではないでしょうか?
たしかに、いわゆる高度成長期の頃は、そういう都市計画が流行っていたそうです。 そして、そうやって作った都市は、失敗例がたくさんあるようです。
現在は、都市計画で作った町の老朽化や、歴史ある町の衰退が問題になっていて、 新しく何かを作ることよりも、 持続する社会 の実現が注目されています。
「都市」を環境問題の対策の対象とみなすと、人間と自然の関係がすっきり考えられると思います。
「都市」を対策のターゲットにするのは、都市が地球にとって特別な存在だからです。 「特別な存在」になる理由は、2つあります。 ひとつめは、ヒートアイランドのように、都市の気候が周辺の気候と異なる現象があるためです。 ふたつめは、都市にヒトが集中しているために、都市が環境汚染の中心地になっているためです。
電気・ガス・上下水道・廃棄物を管理するためのシステムは、 通常、都市が単位になっています。 そのため、都市単位での環境の影響を考えたり、 都市単位での改善を考えることは、見通しの良いアプローチと言えそうです。
都市環境の分野では、これらのシステムのあり方が議論されています。 各ビルや、各家庭での省エネ・省資源は大切な取り組みですが、 都市のシステムが環境にとって良いものであるかも、大事なポイントです。
パターンというのは、景観の状況を表す言葉です。 パターン言語(パタン・ランゲージ)とも言われます。
パターンは、景観の要素や、景観をデザインするプロセスの要素です。 パターンを参考にしながらデザインすると、良いものができると言われています。 また、パターンは景観を見る時のポイントにもなります。
人によって違うのですが、パターンは主観的・経験的・心理学的に抽出されています。
ところで、パターンを使ってやろうとしていることは、 風水 と同じです。 風水の場合はパターンを経験的に決めています。 風水は、「気」の流れをパターンを使って景観から読み取ろうとするので、この点は異なります。
パターンを使って設計すると、設計されたものは「意味」が与えられています。 設計図の他に、言葉による文脈を持っています。 ヒトを「モノ」とは考えない設計には、このようなアプローチが重要なようです。
別の言い方をすれば、パターン言語は、「主観」を扱う貴重な手段です。
コンパクトシティは、持続可能な都市として提案されています。 文字通りコンパクトであることを目指す都市です。
コンパクトになることの効果が期待されています。 例えば、 自然との区分けによる自然の保全効果・効率アップによる経済効果・ 距離の短縮効果(車を使わず、徒歩や自転車で用が足りる、等)です。
コンバージョン(conversion)とは、日本語で「改装」や「転換」のことです。 建物の改装や用途転換を推進するためのキャッチフレーズには、 「改装」ではなく、「コンバージョン」が使われているようです。
古い建物を壊して、建て直すという発想は、環境への影響という点で良くないので、 日本でもコンバージョンの推進の動きがあります。 具体的には、オフィスビルの住宅への転用等があります。
コンバージョンは、欧米では伝統的な考え方だそうで、日本の建築は、その良い点を取り入れようとしています。 ただし、日本は地震の国なので、耐震性能を考えると、欧米の考え方をアレンジする必要があるそうです。
「都市計画数理」 谷村秀彦 他 著 朝倉書店 1986
第1章が、距離(都市計画では、人々と施設の距離の分布を見ることが必要)、
第2章が、施設配置計画として、
数理計画法
、
第3章が、土地利用予測として、
システムダイナミクス
という構成です。
第4章は、計画のための意思決定論です。
この本の意思決定論の内容は、
意思決定論
のページに書いています。
「建築計画・都市計画の数学 −規模と安全の数理」 青木義次 著 現代工学社 2006
施設や都市のの最適設計と、防災のための数理を扱っています。
ここで使われる数理は、前者が、
オペレーションズ・リサーチ
の最適化問題や待ち行列を使っていて、
後者が、
パーコレーション
による火災の広がり方のモデルです。
「実践やさしくわかる建築・都市・環境のためのソフトコンピューティング」 日本建築学会 編 丸善 2009
ファジィ理論
・
ニューラルネットワーク
・
遺伝的的アルゴリズム
・セルオートマトンを建築の分野で使う本です。
適用事例集になっています。
ファジィ : 色彩の表現・振動制御
ニューラルネット : 振動制御・空調制御
遺伝的アルゴリズム : 外壁の材料選定・構造最適化
セルオートマトン : 建築空間配置・構造最適化(自己組織化で形ができる)
感性評価と力学的評価を同時に行い、用と美を両立させる話もあります。
「やさしくわかる建築・都市・環境のためのソフトコンピューティング」 日本建築学会 編 丸善 2005
理論の説明ではなく、研究事例が中心です。
2〜10ページ位の論文を集めています。
ファジィ : 避難シミュレーション・制御
遺伝的アルゴリズム : コンクリートの調合・骨組みの設計
ニューラルネット : 景観(アンケート結果から得られる感性データを扱う。)
その他にも、都市生成・美観、等
「都市変容の確率過程 −個人の自由選択による都市秩序形成」青木義次 著 大学教育出版 2009
「都市計画による政治的な統制がなくても、都市が作れるのか?」、
また、「都市計画で計画し切れない未来の姿を、どのように扱えば良いのか?」、を検討しています。
都市の変化を、確率過程のモデルを使って、研究しています。
(統計物理学のイジングモデルと、ほぼ同じモデルを使っているようです。)
結論としては、自己利益の最大化のための個人の行動が、自然と都市を形作るとしています。
また、都市の復興も可能としています。
この本の結論は、市場主義経済の主張と同じだと思います。
この本の方法は、非常にシンプルなものです。
例えば、このモデルでは、人と土地がセットになって、その地点に固定されています。
筆者は、このモデルと現実との関係が気になります。
最終的には、
行動経済学
で言われているような人の行動の複雑さとの関係や、
地形等の環境との関係につながると、面白いかもしれません。
「都市環境論」 花木啓祐 著 岩波書店 2004
環境問題の要因として、都市の影響力の大きさを挙げています。
総論として、生活の質にも配慮した、総合的な都市のマネジメントを論じています。
「都市の風水土 都市環境学入門」 福岡義隆 編著 朝倉書店 1995
都市にターゲットを絞った環境学の本です。
都市気候・音・色といった様々なテーマを扱っています。
風水
や、
アメニティ
にも触れています。
「環境生理学」 本間研一・彼末一之 編著 北海道大学出版会 2007
環境生理学
の本です。
地球環境・都市環境・社会環境という分類によるアプローチや、
物理・化学的環境、環境適応と言ったアプローチ等、 様々な視点からアプローチしています。
「絵とき入門 都市工学」 香坂文夫 著 オーム社 2007
古代都市・都市の要素(水道等)・防災・エコシティ・砂漠開発計画、等々を幅広く、
絵や写真でわかりやく紹介しています。
「都市環境学」 都市環境学教材編集委員会 編 森北出版 2003
教科書として作られた本です。
インフラシステムのような主要な話題と、
非圧縮流体の基礎方程式や、アンケートの作り方等の、
細かな話題が並列に近い形で解説されていて、
事典のような感じです。
「都市のアメニティとエコロジー」 植田和弘 他 編 岩波書店 2005
「岩波講座 都市の再生を考える」シリーズの第5巻です。
アメニティ論や循環社会論があります。本質的なことが、うまく言葉になっているような感じがしました。
「環境と空間文化 ‐建築・都市デザインのモチベーション」 中村良夫 編著 学芸出版社 2005
思想家の間で言われていることをチェックしておくには良いかな、という本でした。
「自然をデザインする ‐環境心理学からのアプローチ」 カプラン レイチェル・カプラン スティーブン・ライアン ロバート 著 羽生和紀 監訳 誠信書房 2009
生活に密着した身近な自然について、パターンを参考にしながらデザインするための本です。
まず、この本のパターンとは、心理と環境(風景)のつながりの要素です。
好む形・心地良い形・安心感のある形とされています。
また、このパターンには、デザインのプロセスの要素もあります。
最後のパターンが「小さな実験」です。
何をすれば良いかがはっきりしない時に、取り合えず小さな規模で試してみて、見通しのヒントを得ます。
「パタン・ランゲージ −町・建物・施工 環境設計の手引 」 クリストファ− アレクサンダ− 著 平田翰那 訳 鹿島出版会 1984
この本の著者は、都市計画のようなもので、バーンと一気に都市を作ってしまうようなことには否定的です。
都市は、パターンを取り入れつつ成長すると考えています。
パターンは253個あります。
この本のパターンは規模の大きなものから解説されています。
最初が「自立地域」で、最後が「自分を語る小物」です。
著者は、この本のパターンが万国共通のものではなく、見本のようなものと考えているようです。
この本のパターンは、著者の居住地域の状況や、著者の世界観が反映されています。
著者は、世界の平準化が念頭にあるようです。
筆者はこの本の主張には、2つの方向があると思います。
両方とも発展して欲しいです。
ひとつは、この本のパターンをもっと普遍なものに昇格させることです。
かなり抽象的になるかもしれませんが、万国共通のものを目指します。
もうひとつは、世界中の各地域に合わせて、作っていくことです。
「新・LC設計の考え方」 「LC設計の考え方」改訂プロジェクトチーム 編 建築・設備維持保全推進協会 2002
LC設計というのは、ライフサイクル(Life Cycle)設計のことです。
この本では、その建物の存続期間内では、外因・内因の変化に対応できる設計のことを言います。
この本は、手順書であり、事例集です。
定量評価として、経済性はLCC(最後のCは、コスト)と、環境性はLCCO2を挙げています。
定性評価としては、信頼性と更新性を挙げています。
「建築の配置計画 −環境へのレスポンス」 宮元健次 著 学芸出版社 2002
光・風・水・地形・眺望・敷地形状・ノイズ・交通・ランドマーク・景観・象徴・信仰・鎮魂・再生、
という観点について、それぞれのすぐれた建築を紹介しています。
カッコ良く、美しい建築ばかりです。
風水
の観点による考察も多いです。
「初学者のための都市工学入門」 高見沢実 著 鹿島出版会 2000
タイトルは「都市工学」ですが、都市計画の本です。
土地の用途の規制についてや、
安全性や利便性と言った、都市を評価する指標について、書かれています。
都市論の分類がわかりやすかったです。
◇社会運動的 − エベネザー・ハワード − 郊外に田園都市を作る。
◇機械論的 − ル・コルビュジェ − 3次元の幾何学的な都市を作る。
◇生態的 − パトリック・ゲデス − その地域にふさわしい都市を作る。(都市の動態をよく観察する。)
◇認知論的 − ケビィン・リンチ − 万人が、感覚的に「良い」と感じられる都市を作る。
◇複雑系 − クリストファー・アレグザンダー − パタン・ランゲージ(
パターン言語
)で都市を作る。
「都市のエコロジカルネットワーク ‐人と自然が共生する次世代都市づくりガイド」 都市緑化技術開発機構 編 ぎょうせい 2000
「エコロジカルネットワーク」というのは、
都市の中に緑地がネットワーク状(網目状)にあって、生物が行き来できる仕組みのことです。
必ずしも緑地が連続的につながっていなくて、
緑地が飛び地のようになっているケースも指しています。
ある程度の距離の範囲なら、飛び地でも行き来できるからOKのようです。
この本は、都市の中での緑地や生態系のあり方として、エコロジカルネットワークを提唱しています。
提唱するだけでなく、エコロジカルネットワークの計画方法の手引き書にもなっています。
「流れは変わる・・・・・・都市・建築・不動産」 石塚義高 著 日刊建設通信新聞社 2000
短い論評を集めた本です。
建築や都市のLCM(ライフサイクルマネジメント)や、LCC(ライフサイクルコスト)という考え方があるそうです。
このサイトでいうところの
LCA
と、ほぼ同じ発想のようです。
建築物のライフサイクルは評価できそうですが、
都市のライフサイクルとなると、なかなか壮大です。
「実学としての都市計画」 実学としての都市計画編集委員会 編 ぎょうせい 2008
タイトル通りの実学集です。
「地球環境問題と都市づくり」という部分もありますが、今のところ、このサイトとして役に立ちそうもなかったです。
「エコロジーと歴史にもとづく地域デザイン」 法政大学大学院エコ地域デザイン研究所 編 学芸出版社 2004
エコロジーと歴史の結合を狙うと共に、東洋と西洋の融合も狙っています。
具体的な内容は、東京・ベルリン・ボストン・ヴェネッアの都市の姿を述べています。
水辺の話が多めです。
「〈地域人〉とまちづくり」 中沢孝夫 著 講談社 2003
商店街の再興や、古い街並みの見直しによる町おこしの話が多いです。
・部分的な変化が、新しい空気を運ぶ。(ドーンと新しい町をひとつ作るようなことは、失敗する。)
・「まちの遺伝子」や、「まちに積み重ねられた記憶の風景」を大切にする。
個人の着想の集積がある。
・ヨーロッパの美しい
景観
は、建物の壁のラインが町の輪郭になっているので美しく見える。
日本では、壁から看板が出ていたり、のぼりがヒラヒラしていたり、ネオンが点滅したりしているので、壁のラインが見えない。
・クルマ社会や、中心地の空洞化は、アメリカの方が進んでいるので、解決策もアメリカから学ぶことがある。
・町が盛んになると、集客力を目当てにした
フリーライダー
が現れ、町に協力せずに、うまみだけを吸い取ろうとする。
「まちづくりの経済学 ‐知っておきたい手法と考え方」 井上裕 学芸出版社 2005
都市づくりの投資のための、費用便益分析の解説が中心です。
まちづくりにおける経済学の苦手な事、等の、経済学以前の話題も、正面から解説しています。
「都市と地域の経済学」 黒田達朗・田渕隆俊・中村良平 著 有斐閣 2008
立地論や成長論もありますが、14章が「都市の環境問題」になっています。
「産業型公害は、工場から地域住民への一方的な外部不経済効果だが、
都市型公害は、都市住民の消費活動が他の住民に与える外部不経済効果」としています。
課税や、費用負担による解決を紹介しています。
また、土地の市場価格による環境評価も紹介しています。
「コンパクトシティ -持続可能な社会の都市像を求めて」 海道清信 著 学芸出版社 2001
EUや米国のコンパクトシティと、様々な論点を紹介し、日本のあり方を提案する展開になっています。
「日本版コンパクトシティ -地域循環型都市の構築」 鈴木浩 著 学陽書房 2007
コンパクトシティの考え方を日本に持ち込んだ時の諸事情についての本です。
「コンバージョンへの挑戦」 フィットリアルエステート 著 文芸社 2002
コンバージョンの事例を交えながら、コンバージョンをやさしく解説しています。
「都市の空間データ分析」 張長平 著 古今書院 2010
都市の研究として、空間的自己相関の分析(
空間統計学
)、
クラスター分析
、
主成分分析
、
因子分析
などを使った例があります。
「URBAN GEOGRAPHY :a global perspective」 Michael Pacione 著 Routledge 2009
T部 都市地理学の基本
U部 都市化
V部 都市構造と土地利用(エコロジカル・モデルもある)
W部 都市生活・経済社会
X部 第三世界の都市地理学(環境問題の解説多い)
「URBAN GEOGRAPHY」 David H. Kaplan・James O. Wheeler・ Steven R. Holloway 著 Wiley 2004
T部 都市地理学の基本(都市の起源、等)
U部 都市システム(国際化・通信、等)
V部 経済面(土地利用、等)
W部 社会面(移民・人種・貧困)
X部 政治面(都市計画・効率・環境保護もある)
Y部 世界の都市
メイヤー-ウィコフのフロンティアモデル(Mayer-Wyckoff Frontier Cities Model)というのは、
リンクを強めながら都市が統合し、発展していくモデルです。
「現代都市地理学」 北川建次 著 古今書院 2004
このサイトは、
品質
の分野を扱っていますので、
工業・交通・社会文化、等で都市の機能を分類する視点は、
アナロジー
として面白いと思いました。
この分類方法は、都市の次元分析に発展していて、そこでは、
因子分析
や
主成分分析
が使われていました。
「都市の勢力圏」や、「都市群を都市のシステムとして考える」という視点も面白いです。
認知地図を使った研究も紹介されていました。
「新しい都市地理学」 高橋伸夫・菅野峰明・村山祐司・伊藤悟 著 東洋書林 1997
上記の「現代都市地理学」とけっこう内容の重なる本です。
こちらの方が、具体的な数字が多いです。
都市の自然環境を扱っています。
「都市生態系」という言葉が出て来ますが、これは、「都市の中の生態系」ではなく、
「都市はひとつの生態」と言う意味です。
都市を、入力と出力のある代謝系とみなしています。
入力が、食料・水・エネルギーで、出力が、廃棄物や生産物、等です。
情報・人・お金は、入力にも出力にもなっています。
「都市空間の地理学」 加藤政洋・大城直樹 編著 ミネルヴァ書房 2006
章別で諸派を解説しています。
全体的には、哲学書みたいな感じです。
「都市空間分析」 田中和子 著 古今書院 2000
主に大阪市について、静的・動的な分析をいろいろしています。
空間分析の歴史の解説もあります。
順路 次は 地域経済の活性化