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品質学

品物を作っている業種は、材料、部品、機械、建築、エネルギー、等々、いろいろあります。 品質学は、品物の質についての、比較的共通している方法や考え方を集めたものです。

「品質管理」や「クオリティ・マネジメント」と呼ばれる分野では、 「品質」を、「経営の質」や「業務の質」という意味にしていることがあります。 混乱や誤解の原因になるので、 このサイトの品質学では、「品質」は「品物の質」にしています。 「経営の質」は、 経営学 の方に組み入れています。

品質の分類

「品質」を「品物の質」に限定しましたが、「品物の質」にはいろいろな性質があります。 性質を、均一性、全体性、再現性、信頼性、生産性、調和性というように分けると、 性質と分野の関係は、下記のような感じです。

品質工学は「再現性工学」

信頼性工学 は、「信頼性」という種類の品質を扱うので、「信頼性工学」という名前になっています。

品質工学 は、「品質のための工学」という名前になっているものの、 あらゆる品質を対象にしている訳ではないです。 信頼性工学のような名前の付け方をするのなら、 品質工学は機能の再現性を究めようとする学問ですから、 「再現性工学」という名前がちょうど良いように思います。

品質学の場面と分野の関係

品質学の場面と、各分野の関係は下の表のようになります。 ○は関係があることを表します。 品質工学から工程管理の方法が少し提案されていますので、品質工学と工程管理の交点に△を入れています。

品質工学や信頼性工学は、製品の機能が問題なく発揮されるために発展した分野です。 製品は、製造装置・工程・製造システムによって作り出されます。 そのため、品質工学や信頼性工学は、製品自体のためだけでなく、 製品を作り出すものの設計にも使われています。

品質学の場面と分野の関係
名前 主な対象 SPC TQC 品質工学 信頼性工学 生産工学 環境品質
工程管理 工程の状態 × ×
工程設計 製造装置・工程・製造システム ×
製品設計 製品の機能 × ×

品質学の中の統計学

SPC・TQC・品質工学・信頼性工学・生産工学では、 統計学 がよく使われます。 これは、これらの学問ができた頃の経済の仕組みが、 均質なものを大量に作ることを好ましいことと考えて来たことが背景にあります。 均質なものを大量に生産する時のデータを扱うには、統計学が適しています。

しかし、現在の生産の現場では、「均質なものを大量に作る」という前提に変化が起きています。

また、均質なものを大量に作る場合でも、現実の生産の場面では、統計学が当てはまらないことが多々あります。 例えば、動的なデータに統計学のモデルを当てはめると、 肝心な部分が見えなくなってしまうことがあります。 近年は、 センサーデータ 等の時間的に変化しているデータを蓄積する技術が進んでいるので、 このような動的なデータを解析する時があります。 統計学の得意なのは、 実験計画法 のデータのように、静的な(静的とみなせる)データです。

データサイエンス の基本は、何かの理論に当てはめる前に、様々な視点からデータをよく見ることです。 データを見るだけで、重要なことがわかることもあります。 品質学の中では、統計学よりも、まずは データリテラシー です。

品質学の諸派

「品質管理」、「QC」、「TQC」、「TQM」、「クオリティ・マネジメント」、 「品質工学」、「タグチメソッド」、「品質保証」、等、品質を扱う分野はいくつかあります。 これらの分野は、内容が多少重なっています。 また、これらはすでに数十年の歴史を持っていて、産業界や、学問の世界に根を張っています。

一方、実務でこれらの分野を使う立場では、 従来からの分野の分類は、使いにくいと思うことがあります。

そういった事情があり、このサイトの「品質学」の体系は、実務の立場で筆者なりに組み立ててみたものです。 「品質学」という名前は、「対象をストレートに表しているので、一番合っている。」、と思って付けました。

「品質」は、いろいろな意味で使う言葉です。 そのため、品質の手法に対しての誤解や拡大解釈が生まれているようです。 筆者は、均一性、全体性、再現性、信頼性、生産性、調和性という風にして、「品質」を分けてみました。 こうすると、諸派の主張して来た内容が、理解しやすくなったように思います。 また、全体を整理して組み直すことや、従来からの主張の見落としを見つけることもできるようになったと思います。



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