過疎化が進む地域、地方都市、、、そういえば東京23区の中でも、地域経済の活性化が検討されています。
地域経済の活性化の方法は、比較的古いものでは、観光客に来てもらって現金収入を増やすことや、工場を誘致して雇用の枠を増やすことが、一般的のようです。 そのために、リゾート施設やレジャーランドの建設や、工業地帯の整備があります。 (これらの方法論は、 景観 の破壊や、環境汚染の原因になったりもしています。)
新しい方法論には、歴史的・文化的な 景観 の保護、地域ブランドの確立、B級グルメ、ゆるキャラがあります。
地域経済を議論する分野を2つの立場に分けてみました。 ただし、実際には、地場産業のように、ひとつの地域に根差した産業があって、両方の立場を兼ねている場合もありますので、 理解をわかりやすくするための便宜的な分け方です。
空間経済学 や、 経営学 は、企業の都合だけで地域の発展?を論じていることが多いようです。
立地条件で、その地域を選ぶ立場です。都合が悪くなれば、その地域からいなくなることも考えています。 動物的です。
企業の立場は、工業や小売業との結び付きが強いです。 工業の立地では、その地域の人件費、電気、水、物流、資源の状況が立地条件になります。 小売業の立地では、年齢層や人口等が重視されます。
また、産業以外では、ゴルフ場やテーマパークのように、その土地の歴史や文化とは結び付きのないものは、 企業の立場に近い考え方のように思います。
その場所から移ることを考えていない人の立場です。植物的です。
住民の立場は、その場所から動かない産業、つまり、農業・林業・水産業との結び付きが強いです。 方法論としては、特産品の開発がありますが、それよりも、 経済学でどうこうできない、地域での精神的に深いつながりが重要になっています。
外来の企業は、遅かれ早かれ去って行く可能性があります。 持続可能な地域を作っていく取り組みとして、農業・林業・水産業の製品を、道の駅で販売したりするのは、世の中の自然な流れ、と思います。
産業以外では、古くからある町並みや食文化を、 今の時代の価値観に合わせて、盛り立てていく、、このような取り組みではないかと思います。
心や体の健康に良い食べ物、豊かで優しい味のする食べ物というのは、輸入品や、遠くの名産、規格の適合品ではなく、 地元の畑で採れたものではないかと思います。
こういうことは、たぶん、科学的にきっちり証明されてはいないです。 それで、経済的な力や、政治的な力とのバランスが崩れるのを防げなくなってしまい、健全な食や農が歪んでいるのではないかと思います。 (筆者は都会育ちです。いわゆる”地方”に住むまでは、地元の野菜の力は、実感がわきませんでした。)
「地域データ分析入門」 林宜嗣 編著 日本評論社 2021
日本の地域政策の問題点として、抽象的な目標設定や、希薄な現状分析があるとしています。欧米では、EBPM(Evidence Based Policy Making)と呼ばれる、データ分析に基づいた進め方が成果を出しているそうです。
オープンデータの活用、
アンケート
の分析、
回帰分析
、SWOT分析、
産業連関分析
、費用便益分析、
差の差の分析
、等を紹介しています。
「立地と経済発展 貧困削減の地理的アプローチ」 園部哲史・藤田昌久 編著 東洋経済新報社 2010
貧困の削減には、非農業の発展が必要としています。
この本は、日本の地域活性化の成功事例を、発展途上国における貧困削減の参考にしようとしています。
実際、参考にされて来ているそうです。
一村一品運動と、道の駅を、地域活性化の成功例としています。
・売りに行く商品 : 一村一品運動
・買いに来る商品 : 道の駅
で、両者は対称的です。
農業のブランド化を推しています。一農家では難しく、地域のまとまりが必要です。
雇用シェアの決定要因の分析があります。
アフリカ・アジアの産業の発展には、起業してから、生産量の拡大から、品質の向上に経営の主眼を変えられるかがポイントになるそうです。
しかし、量が拡大している時には、それに満足してしまって、質の向上に目が向かないのが問題なようです。
「地域ブランドと地域経済 :ブランド構築から地域産業連関分析まで」 佐々木純一郎・石原慎士・野崎 道哉 著 同友館 2009
かつては、建設業、進出企業、農業等の移出産業の3つと、地域内の小売りサービス業という、
「3+1」の柱が地域経済を支えていたが、
建設業と進出企業が不振になってきたので、移出産業に依存する形になって来ている。
そのひとつが、ブランド農産物の取り組み。
観光ブランドには、基本価値、意味付け、保証性が必要としています。
保証するのは、「来て良かった」と思える、経験価値の提供です。
この本では、
企業のブランド論
を、地域のブランド論に転用しています。
地域は、地域の文化や風土を資源として、商品化しているひとつの企業のような感じになっています。
「基本ケースで学ぶ地域経済学」 中村剛治郎 編 有斐閣 2008
・地域には、他の地域からの移入があるので、移出しないと赤字になる。
・2000年の食糧自給率は、フランス132%、アメリカ125%、ドイツ98%、イギリス96%、スイス61%。
先進国だからといって食糧自給率が低いとは限らない。
補助金制度で、自給率を向上させている。
日本は40%。韓国も日本に近い状況とのこと。
・地域経済を盛んにするには、
アメニティ
の充実といった、環境との関わりが重要。
・自治体やコミュニティを、「地域を戦略的に経営する経営体」、とする考え方は、
2004年の「地域からの日本再生シナリオ(試論)にある。
・上からの地域政策として、産業クラスター政策がある。
由布院は、地元の有志によって、活性化した。そこに住まない人が作る地域振興策は、うまくいかないみたい。
「持続可能な地域経済の再生 地域の現場に学ぶ」 東北開発研究センター「持続可能な地域経済研究会」 編著 ぎょうせい 2004
地域発の経済活動について、運用の中身や考え方をまとめています。
思想的な話が多いように思います。
「経済地理学入門 −地域の経済発展」 山本健兒 著 原書房 2005
農業のところで、エコロジカルな観点が出て来ています。
経済性との両立について述べています。
グローバル企業の展開の仕方から、都市の結び付きを調べる研究が、紹介されていました。
「地産地消と地域再生」 二木季男 著 家の光協会 2008
直売所が、地産地消の中心です。全国に1万2千ヶ所あるそうです。
農家がどのように顧客を意識しているかが大事。
・企業経営 : どこへでも移動できる経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を活用
・地域経営 : 地域資源(自然・歴史・文化・施設・人・特産)を活用
「地域経済再生への胎動」 地域経済調査研究会 編 岡山県自治体問題研究所 2007
実際に農業に携わっている方が執筆した論文が入っていて、「生の声」に触れている気がしました。
・金儲け本位、効率一辺倒の経済のあり方が、地域に根差した文化を歪め、押し潰している。
・地域と関係のない教育で育てられると、地域を大事にしなくなるそうです。
「グローバル・シティ・リージョンズ −グローバル都市地域への理論と政策」 アレン・J.スコット 編著 坂本秀和 訳 ダイヤモンド社 2004
「Communication/infomarion (通信・情報)」、
「Capital investment (資本・投資)」、
「Corporation/industry (企業・産業)」、
「Consumers/individuals (消費者・個人)」、という4つのCと、
「Population explosion (人工爆発)」、
「Poverty (貧困)」、
「Pollution(公害)」、という3つのPを挙げています。
そして、「規模の小さな国・地域・都市は4つのCがうまく機能しているが、
国と同じような規模の都市は、3つのPに苦しんでいる。」、と指摘しています。
(筆者には、このCとPの解説以外は、本の内容がわかりませんでした。)
「環境社会学への招待 グローバルな展開」 満田久義 著 朝日新聞社書籍編集部 2005
・環境社会学の様々な動きをまとめています。
・日本の事例も出てきますが、インドや米国等の話も多く、グローバルな立場に立っています。
・ネオ・ルーラリズム: もともと田舎に住んでいなかった人が田舎に移住する場合、
より良い生活環境を求める人、仕事を求める人、文化に対抗的な考えを持っている人、早期退職した人、等に分類できるそうです。
「山・川・海の環境社会学 地域環境にみる[人間と自然]」 大野晃 著 文理閣 2010
8つの章のうち、5つは高知県関係です。
・1987年の総合保養地域整備法によって、1980年後半から1990年にかけて全国の山村でリゾート開発が進み、
大規模林道、ゴルフ場、スキー場、レジャー施設等が作られ、自然生態系が深刻な打撃を受けた。
エコノミーがエコロジーを駆逐している。
・ストロー現象(自然が破壊され、その利潤は東京の本社に吸い上げられる。
スーパー林道(林業以外にも使う道路)は景観破壊や地域間格差になった反面、新しい勢力の刺激にもなった。
「農業がわかると、社会のしくみが見えてくる 高校生からの食と農の経済学入門」 生源寺眞一 著 家の光協会 2010
お金に換算できないところに、農業の価値を見出そうとしています。
国際的な
農産物の貿易
によって、食と農の距離が開いてしまい、生産者がしていることが、消費者にはわからなくなっていますが、
農家がインターネットで情報を発信することが農業の新しい動きとしてあるそうです。
「農業経済学」 土屋圭造 著 東洋経済新報社 1993
数量と価格の分析が多いです。
「日本の農業は、労働力が余っていて、また、資本が足らない。よって、労働力を非農業に出して、資本を増やすべき。」、
という話があるのですが、よくわかりませんでした。
「農業経済学への招待」 太田原高昭・三島徳三・出村克彦 編 日本経済評論社 1999
農業分野で使う手法として、
財務会計
や
統計学
等も解説しています。
「農業経済学」 荏開津典生 著 岩波書店 2008
・農業を考えるには「土地」が不可欠だが、主流となる経済学は工業を想定しているので、土地の観念が希薄。
・土地には地域の歴史が反映されているので、同じ面積だとしても多様
・世界の中で農業を中心に成り立っている国や地域では、資本主義経済ではないので、経済システムが異なる(開発経済学の領域)。
順路 次は 民芸