農産物の貿易は、「安い」という理由だけで輸入することによる、「自国の農業の危機」や、 「安全な食の危機」、等の問題がよく挙げられます。
しかし、 環境問題 という観点でも、農産物の国際間取引は大きな影響を持ちます。 しかも、影響が出るのが、数十年先になったりするので、今、当事者が責任を問われることはなく、扱いの難しい問題です。
「水不足の問題が世界のあちこちである」、と報道されています。 その一方で、 もともと水の豊富な日本に「おいしい水」や「酒」として世界の水を集めています。
土の環境問題は大きく分けて2つあるようです。
農産物の輸入は水よりも複雑で深刻です。 農産物の輸入は、「栽培した場所の水と養分を移動させている。」と言い換えられます。 農産物に含まれる水(水分)については、上記と同じ問題が当てはまり、 世界の水を日本に集めてしまっています。
もともと水の少ない地域で作った作物を日本に輸入している場合は、 今は良くても、「その地域の慢性的な水不足、つまり砂漠化を加速させている行為」、と考えることができ、 これも問題です。
また、養分の移動にも似たようなことが当てはまります。 今は良くても、将来的にはその土地で作物が作れなくなってしまいます。 一方、日本は富栄養化が進んでしまい、これも問題です。
肥料については、化学肥料を使うことによって、作物が作れなくなる問題は緩和されているのかもしれません。 しかし、水の問題は深刻です。
まったく同じ品質の野菜が並んでいて、国産が200円で、輸入品が100円だった場合、輸入品を買うのが経済の仕組みだと思います。
しかし、その値段の中には、おそらく将来を見越した環境負荷は入っていません。
また、その不当(?)な値段のために、国産品が苦境に立たされているのかもしれません。
とても難しい問題だと思います。
「土と人のきずな 土から考える生命・くらし・歴史」 小野信一 著 新風舎 2005
深遠で優しい本です。
「土」にまつわる様々な事柄が記されています。
生命の起源・微生物・神話・古代文明・農業・土壌学・宗教・風習・相撲・教育・癒し、等です。
環境問題を政治的・経済的・科学的・技術的・倫理的手段などで、
解決しようとするのは大事なんですが、
そういう手段がすべてだと思って没頭した時には、
利害関係が起きたり、対立が起きたりします。
この本は、そういう時に忘れてしまうものが書いてあるような気がします。
著者が引用していた言葉や文章で、印象的だったものが2つあります。
「身土不二」
もともとは仏教の言葉で、「仏身と仏土は分かちがたい」、という意味だそうです。
今は、国の農業を守る目的で、
「身と土はつながっており、生命を養い、健康を維持しているのは、
大地のエネルギーが生産するさまざまな農産物」という意味で使うそうです。
著者の造語の、「心土不二」も併せて紹介していました。
「人間は大地の上に生まれ、習慣によって土に属し、共に育ち、
生まれるとすぐに、
世にも美しい絆によって結ばれ合っているのです。」
ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」にある文章だそうです。
「環境地質学入門」 鞠子正 著 古今書院 2002
地球を1つのシステムと見て、
サブシステムを地球固体システム、大気システム、水システム、エネルギーシステムとしています。
そして、それらを踏まえて地質学から気候や環境の変化を見ていきます。
「水環境基礎科学」 宗宮功・津野洋 著 コロナ社 1997
水の性質を述べた後、環境化学・環境物理・環境生物を述べ、最後が水域生態系です。
よく知っている法則が、現実の問題とつながっていないことを気付かされました。
「絵とき 地球環境を土からみると」 松尾嘉郎・奥薗壽子 著 農山漁村文化協会 1990
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