ファジィ(fuzzy)は「あいまい」と訳されることがあります。 そのため、ファジィ理論は、人間のあいまいさを扱う理論と思われることも多いです。
ファジィに対して、「あいまい」という解釈をするのは、 ある意味で当たりで、ある意味で外れです。 ある意味で「当たり」なのは、人間の言葉を扱えるからです。 ある意味で「外れ」なのは、ファジィ理論では、言葉の数値的な範囲や関数をきっちり定義するからです。 定義にあいまいさはありません。
ファジィ理論が何の役に立つのかは、ファジィでない場合を考えると、わかりやすいです。
ファジィ理論を使わない場合、例えば、「暑い・普通・寒い」を定義する時に、
「暑い=25℃以上 ・ 普通=25〜20℃ ・ 寒い=20℃未満」
となります。
このような定義は、各カテゴリの境界付近の温度の感じ方が、人によって違うことが考慮できません。
ファジィな数値の範囲を定義するのが、メンバシップ関数です。 メンバシップ関数とは、何か決まった関数形がある訳ではなく、設計者の意図で選べます。
メンバシップ関数を使うと、
「25℃は、暑いが0.5、普通が0.5」
と言った表現が可能になります。
これによって、「あいまいさ」を表現できます。
ただし、「暑いが0.5、普通が0.5」というのは、設計者の意図で決まります。 0.5にするのか、0.6にするのかと言ったことを決める時には、どっちかにしないといけないので、 「あいまいさ」は入れられません。
ファジィ理論の役割は、「あいまいさを数理的に扱うための理論」、と考えるよりも、 「定量データと定性データを変換するための理論」、と考えた方が、本質的な解釈です。 別の言い方をすれば、「 量的データと質的データ の変換理論」とも言えます。
定性データを数値的に扱えるようになると、 人間の感覚的なものを、 データサイエンス として扱えるようになります。
灰色理論は、情報が不完全な状態で、 制御 をしたり、 意思決定 をするための理論として応用されているようです。
「知能システム工学 −ファジィ・ニュ-ロ・AI・学習システムの統合」 片方善治 著 海文堂 1993
ファジィ理論の入門書であり、啓蒙書です。
かなり丁寧な内容です。
ファジィ理論は、主観を取り入れられる方法としています。
「システム工学」 中森義輝 著 コロナ社 2002
システム工学
の本でいろいろな事が書いてあります。
その中に、ファジィ推論もあります。
「感性データ解析 :感性情報処理のためのファジィ数量分析手法」 中森義輝 著 森北出版 2000
感性データとは、
SD法
で得られたデータのことでした。
この本は、感性データを因子分析・
クラスター分析
・
数量化T類
で扱っていて、そこまではわかったのですが、
ファジィの理論がどう使われているかがわかりませんでした。
「ファジーで データを読む」 秋山好一 著 工学社 2015
AHP
で使うような一対比較のデータや、1と0のデータから、項目間の類似や順序を導く理論が解説されています。
論理演算が中心です。
このページの上記にあるような、メンバシップ関数の話はないです。
「理工系学生と技術者のためのわかる灰色理論と工学応用方法」 永井正武・山口大輔 著 共立出版 2004
CD-ROMが付いているので、実際に手を動かしながら、理解を深められそうな本でした。
灰色理論は、情報の中に含まれている数理規則を整理、発見することを目的とする理論、とのことでした。
灰色とは、情報が不足していて、既知の部分と、未知の部分がある状態。
図解によれば、灰色理論とは、ファジー理論のメンバシップ関数ようなものが、複数ある状態を想定している理論のようでした。
その意味で、ファジー理論を一般化した理論のようです。
「灰色理論による予測と意思決定」 聚龍 原著 趙君明・北岡正敏 訳 日本理工出版会 1999
制御や意思決定の事例が、比較的わかりやすかったです。
順路 次は 2値変数のグループを、1つの連続変数に変換