情報(うわさ等)・伝染病・熱に共通しているのは、 「伝播(でんぱ)」という性質です。 伝播(でんぱ)は、伝搬(でんぱん)と書く事もあります。
伝播を調べる時は、距離と確率の、2つのアプローチがあります。
水が伝わるかどうかなら、隣の頂点との高さの関係で決まります。 しかし、伝染病などは、隣の頂点には「伝わりやすい」のであって、伝わるかどうかは明確にはわかりません。
こういう現象を扱う時は、確率が適しています。
パーコレーションの意味は「浸透」です。
パーコレーションのシミュレーションのモデルは、 1〜3次元の格子モデルが使われ、伝わり方を調べます。 碁盤の目の隣から隣へと広がります。 伝わるかどうかは、確率現象として扱われます。
パーコレーションは、 相転移 のシミュレーションに使われたり、 2次元格子の場合は、 数理生態学 の手法として森林火災のシミュレーションに使われています。
パーコレーションに限らず、空間をコンピュータで扱う時には、空間を碁盤の目のように区切って、 碁盤の目の中は同じ状態とみなします。 基本は、正方形や立方体の格子ですが、 計算の効率を上げるために、正方形や立方体ではない事もあります。
ここでは、正方形の規則的な格子で説明しますが、
格子モデルの実際の計算では、接している格子(隣の格子)との関係を扱うようになります。
この計算の仕方は、ネットワークを分析する時と同じなので、
ネットワークの理論は、格子のモデルにも当てはまります。
「距離が近ければ、伝わりやすい」というのは、多くの場合に当てはまります。
様々な次数の頂点があるような複雑なモデルには、 ハブやショートカットがあり、これらの配置で距離が変わるので、伝わり方が変わります。 そのため、距離に注目して伝わり方を見るアプローチが重要です。
「「複雑ネットワーク」とは何か 複雑な関係を読み解く新しいアプローチ」 増田直紀、今野紀雄 著 講談社 2006
スモールワールド理論が発表されたのが、1998年で、それからネットワークの研究が様々な分野で急速に流行した。
スモールワールドの特徴は、現実のいろいろなネットワークで、平均距離が意外に短い事と、クラスターが多い事。
クラスターに注目する考え方自体は、この理論の前から社会学の中にあった。
べき分布は、その後で見つかった。
伝染病で、感染の拡大を防止するには、ハブに相当する人に、優先的に免疫を付ける方法がある。
飛行機などの交通手段ができたことは、ショートカットができたことを意味する。
つまり、世界的な感染の拡大が、昔よりも起きやすくなっている。
パーコレーションは、ネットワークのモデルのひとつとして紹介されている。
頂点から頂点への伝わり方を、確率的に扱うのが、統計力学やパーコレーションの分野。
この分野は、ネットワークモデルとして、格子モデルを扱う。
格子モデルでは、位置的に遠い事は、伝わりにくい(平均距離が長い)事を意味する。
格子モデルで、ショートカットを付けると、平均距離がかなり短くなることがわかっている。
これは、スモールワールドの理論につながる。
データ解析方法としての「
ニューラルネットワーク
」ではなく、本当の神経細胞のネットワーク(ニューラルネットワーク)の話があります。
「噂の拡がり方 ネットワーク科学で世界を読み解く」 林幸雄 著 化学同人 2007
噂の広がり方についての事例の話とは別に、ネットワークの強さの話もあります。
うわさは、伝言とは違う。
不安さ、あいまいさ、信用度が伝わりやすさに関係する。
ハブ(次数の高いところ)を通すと、うわさが早く広まる。
自然の法則として、少しでも自分が有利になるために、ハブにつながろうとする性質がある。
すると、ハブはさらにリンクを増やし、貴族化が進む。
また、これによって、次数はべき乗分布になって来る。
地理的に近いネットワークだけだと、分断されやすい。
遠いもの同士を結ぶショートカットがあると、ネットワークは強くなる。
オピニオンリーダー(専門性が高い人)よりも、市場の達人(多数派意見に敏感な人)が重視される風潮がある。
ネットワークの分析では、ネットワークのつながりの強さを見る分析と、ネットワーク上の流れ方の分析がある。
「私たちはどうつながっているのか ネットワークの科学を応用する」 増田直紀 著 中央公論新社 2007
スモールワールドとスケールフリーの知識を、現実に応用するためのアイディア集になっています。
通信、組織、社会の健全さを保つために頑健にするために、スモールワールドのアイディアを使う話が多いです。
スケールフリーの理論は、格差社会の形成の理論にもなっていますが、応用はまだこれからのようです。
「ソーシャル物理学 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学」 アレックス・ペントランド 著 草思社 2015
従来の社会科学と比べて、はるかに大量のデータを使って定量的に分析することから、「物理学」を使っているそうです。
インターネット上の情報の流れの話から、都市の形成まで広げています。
「つながりの科学 −パーコレーション−」 小田垣孝 著 裳華房 2000
ネットワークを伝わって広がっていく身近なものを例に挙げています。
「パーコレーション」 樋口保成 著 星雲社 1992
数学の本です。
「パーコレーションの科学」 小田垣孝 著 裳華房 1993
物理学の本になっています。
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