環境問題に目を向けると、「生物学」の中では「生態系(Eco System)」という視点が大事なように思います。
生態学の中には、遺伝や進化、性別の違いの研究もありますが、
これらについては環境問題という点では方向性が違うので、このサイトで扱っていません。
数理の面では、 反応速度式とロトカ・ボルテラの式は、 化学と生物学の違いがあるものの、式の形は同じです。 しかも、この「式の形」は、 システムダイナミクス と同じ数理です。 そのため、システムダイナミクスのソフトで シミュレーション が可能です。 これは、システムダイナミクスがすばらしいというよりも、 常微分方程式のすごさだと思います。
生態系で使われる数理は、 大別して統計学的なものと、シミュレーション的なものがあるようです。 統計学の方は、このサイトでは 統計学 や サンプリング として、別のページで扱っています。 このページでは、数理生態学と呼ばれるシミュレーション的な方法について、少し書いています。
dX / dt = a × X ( 1 − b × X )
の形をした、時間発展の式です。
「 b × X 」の項がなければ、指数関数的に X が変化する式です。
しかし、この項があるので、個体数に資源量との関係による、限界があることが表現できます。
ロジスティック方程式は、 環境経済学 でも、経済成長と資源の関係を表す簡単なモデルになります。
生物の増殖や、食う・食われるの理論です。 数の増減の変化を調べるのに使われています。
ゲーム理論 は、もともと経済の理論ですが、生態系にも応用されています。 異なる性格(戦略)を持っている生物群の、 発展の仕方の研究に使われています。
領域を格子に区切って、領域の変化を見る方法です。 統計物理学のモデルと似ています。 統計物理学では1次元から始まって3次元のモデルを考えていきますが、 生態系の格子モデルは、2次元で議論されます。 これは、「地球の表面」が2次元で表現できるからです。 そのため、生態系の格子モデルは、導入がやりやすそうです。
格子モデルは、森林の分布の変化、等のシミュレーションに使われています。
格子モデルによる解析を、もっと大規模に、 また、実際の自然の姿(景観)に対して使っていくアプローチは、 景観生態学 という 地理学 に近い分野で行われています。
数理計画法 の一種です。 生物が行動を起こすタイミング(スケジューリング)を、モデル化しています。
数理生態学の方法は、
カオス
・拡散モデル(偏微分方程式)もあります。
筆者がこのサイトを作り始めた当初は、
ロトカ・ボルテラの式しか知りませんでしたが、
ちょっと調べただけでいろいろありました。
ロトカ・ボルテラのような人名が、
必ずしも手法の名前に入っているわけではないですが、
上記の方法は、
それぞれに数学の理論を生物学に持ち込んだパイオニアがいるようです。
生態系では、 食べ物の種類や、住んでいる場所が生物種によって異なっています。 これをニッチと言います。 これによって、異なる生物種の競争が避けられている状態になっています。
ニッチは、 経営 や マーケティング の分野でも、 他社との過剰な競争を避けながら、収益を確保するための戦略の狙い目として使われる言葉です。
環境の浄化方法には、物理的・化学的・生物的な方法があり、 生物的方法の主役が微生物です。 浄化の話の中では、微生物を薬品のように扱っているのですが、 やはり生物として知りたくなってきます。
種の絶滅や生態系の危機が叫ばれていますが、 目に見える生き物の話がほとんどだと思います。 しかし、目に見えない無数の生き物と共存しているのも事実です。 微生物の世界は、何も変わっていないのか? 私たちとどのような関わりがあるのか? 興味深いテーマです。
捕食や 流れ によって、物質は自然界を循環しています。 生態系でば、酸素・炭素・窒素・リン・硫黄の循環が重要です。 (水は水素と酸素からできているので、水の循環は酸素の循環の中に含まれます。)
物質の循環は、自然環境だけでなく、人間社会とも関わっていますが、このサイトの話題としては、 リサイクル 、 農産物の貿易 があります。
「数理生態学」 日本生物物理学会/シリーズ・ニューバイオフィジックス刊行委員会 編
共立出版 1997
15人の執筆者が各分野について、入門的な解説を寄せています。
「数理生物学入門」 巌佐庸 著 共立出版 1998
副題が「生物社会のダイナミックスを探る」です。
数ページ程度の小さな話題が、3部−21章の構成でうまく分類されています。
内容は多岐にわたりますが、それぞれの基礎がしっかりカバーしてあるような印象です。
「群集生態学」 宮下直・野田隆史 著 東京大学出版会 2003
数理生態学に重きを置いているわけではないですが、
ロトカ・ボルテラの式をベースにした数理モデルを参考にしながらの考察が、
基本になっているようです。
「やわらかい情報処理」 吉田紀彦 著 サイエンス社 2003
進化ゲーム理論について。
最後に生き残る種は、何を戦略にしたのかが解説されています。
(シミュレーションの話ですが。。。)
「計算統計入門/代数生物学」 手塚集・吉田寛 著 講談社サイエンティフィク 2008
副題が「大規模・高精度計算が拓いた新技法」です。
計算統計入門と代数生物学という2つの分野に1部ずつ割り当てています。
ここで関係するのは代数生物学の方です。
記号計算で公式を導き出してしまうという、非常に魅力的な方法です。
具体的な内容は筆者は理解できていません。
「絵でわかる生態系のしくみ」鷲谷いづみ 著 講談社 2008
紹介されている事例で、興味深いものが多かったです。
「環境生態学入門」青山芳之 著 オーム社 2008
生態系 → 生態系と人間との関わり → 環境問題
→ 環境アセスメント
→ 保全 → 新エネルギー → 環境学習 → 資格
という構成になっていて、広範な内容を扱いながらも、
論理の展開に順序がありました。
都市生態系と農地生態系の解説があります。
環境学習にもページが割かれています。
「水環境基礎科学」 宗宮功・津野洋 著 コロナ社 1997
水の性質を述べた後、環境化学・環境物理・環境生物を述べ、最後が水域生態系です。
よく知っている法則が、現実の問題とつながっていないことを気付かされました。
「蟲師」 漆原友紀 著 講談社
- 「むしし」と読みます。生物と非生物の間のような存在が登場するマンガです。
「光脈」が重要とされているのですが、これは「
龍脈
」のことでしょうか?
「もやしもん」 石川雅之 著 講談社
微生物が脇役として登場するマンガです。
「Q&Aで学ぶ やさしい微生物学」 浜本哲郎・浜本牧子 著 講談社 2007
「よくわかる菌のはなし」 青木皐 著 同文舘出版 2007
菌との付き合い方のおはなし。
「微生物 ―その驚異と脅威―」 杉山政則・重中義信 著 三共出版 2003
赤潮の微生物を殺す微生物をばらまいて、赤潮問題を解決しようとする試みがあるらしいです。
原因を解決せずに、結果のみの解決を目指した場合、
新たな問題を発生させることへの懸念を感じます。
「生物学超入門」 大石正道 著 日本実業出版社 2002
「遺伝統計学の基礎 Rによる遺伝因子解析・遺伝子機能解析」 山田亮 著 オーム社 2010
遺伝の研究で、
統計量
や
グラフ統計
を使う例を示しています。
統計学
によるいろいろなアプローチを、遺伝の分野で使っています。
連鎖解析:様々な仮説の尤度を計算することで、原因となる遺伝因子を見つけることに使う方法。
パラメトリック手法は、少数の大家系にある強い遺伝因子を求めるのに適している。
ノンパラメトリック手法は、小規模家系が多数ある中で、弱い遺伝因子を求めるのに適している。
有向グラフ:遺伝学では、時間の向きがあるので、それを矢印の向きとして表せる。
「遺伝統計学入門」 鎌谷直之 著 岩波書店 2007
連鎖不平衡や連鎖解析が詳しいです。
水の流れを扱う分野に流体力学がありますが、 地球規模での水の循環や、雨、雪、気象といった水の姿の変わり方については、水文学という分野があります。
「例題で学ぶ水文学」 椎葉充晴・立川康人・市川温 著 森北出版 2010
「水文学の基礎」 水村和正 著 東京電機大学出版局 2008
順路 次は 流れ(流体力学)