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流れ(流体力学)

流体力学は、大気や水の流れを扱います。 地球規模のものから、乗り物や建物の設計に使うものまで、流体力学が扱うものの規模は様々です。

流れの分類

流れている物の性質によって、いくつかの分類があります。

圧縮と非圧縮

圧縮流体というのは、密度が変化する流体です。 数学的には、非圧縮と仮定できる流体の方が扱いが楽です。

圧縮流体の代表が気体で、非圧縮流体の代表が液体です。 ただし、気体でも非圧縮流体として扱う場合がありますし、 液体でも圧縮流体として扱う場合があります。

定常と非定常

定常というのは、時間的に流れの様子が変わらない状態です。

粘性と非粘性

粘性とは、文字通り、流体の粘り気です。 粘性は液体の方が気体よりも高いです。

非粘性流体は、粘性がゼロと仮定した流体で、レイノルズ数が無限大ということでもあります。 非粘性流体は、完全流体とも呼ばれます。 非粘性流体は数学的な理想状態ですが、レイノルズ数が大きければ、身近な流れでも近似できることが知られています。

ニュートンと非ニュートン

ニュートンと非ニュートンは、両方共、粘性流体のことです。

ニュートン流体とは、応力が速度勾配に比例する(一次式で近似できる)流体です。 ニュートン流体は、気体や、水等の低分子の液体に当てはまります。

層流と乱流

層流とは、平行線のようにして流れていく流れです。 乱流は、文字通り乱れた流れです。

流れの方向に対して、垂直の方向にも流れの影響が出ているのが乱流です。

層流と乱流の違いは、レイノルズ数で表されます。

混相流

気体と液体、液体と固体のように異なる相が混ざった流体を混相流といいます。

液体の中に気泡ができてしまって、ポンプが働かなくなる等の悪さをする現象をキャビテーションと言いますが、 混相流は工業的に重要な現象です。

流動方式として、気体の混ざり方で、スラグ流やフロス流等の分類もあります。

流体力学の基礎方程式

基礎方程式がいくつかあります。 流体のシミュレーションでは、 基礎方程式を使い、境界条件等を工夫して現実の流れを再現します。

シミュレーションでは、これらを連立させて解きます。

実験で見つかった法則を使う

基礎方程式は、原理原則から式を組み立てて考えることができます。 一方、流れの理論の中には、 「○○は××の△△の7乗に比例する。」と風に、実験的に見つけられた法則もあります。 管や壁と言ったものを使って調べられています。 流体力学の本でも工学寄りのものや、水理学の中でこのような理論が登場します。

現実の流体では、管と流体との摩擦等がありますので、エネルギーが損失します。 この点は、省エネの観点で重要です。 例えば、管が急に太くなった場合等で、損失が調べられています。

水理学

流体力学に近いものに、水理学があります。水力学は、水理学と同じと思って良いようです。 扱うものが水なので、非圧縮ニュートン流体という前提で話が進められます。

開水路

管水路には水面がありませんが、 開水路というのは水面がある水路です。開水路の例は川です。 「水面」は、「大気圧と同じ」という境界条件を扱うことになります。

マニングの式

マニングの式は、スケールの大きな流れで成り立つ式です。 流速が、エネルギー勾配と断面積と深さで表せるとする関係式です。



参考文献

流体は、物理学の見方だと、連続体の一種です。 そのため、流体力学は、「連続体力学」がタイトルになっている本の中でも解説されています。 そうした本については、 連続体力学 のページに書きました。

また、化学反応が起きている流体については、 変化(相転移と化学反応) のページに書きました。

環境問題

環境科学入門」 河村哲也 著 インデックス出版 1998
環境問題として、 温暖化・オゾン層・酸性雨・海洋汚染・熱帯林減少・砂漠化・エネルギーを挙げています。
そして、地球の成り立ちの話があります。
この本の特徴は、 数値シミュレーション の概要が書かれていることです。 流体力学をどういう風に使っているのか等も含んでいます。 シミュレーションの対象は、温暖化と大気の流れです。


流体的地球像」 福田正己・濱田隆士 編著 放送大学教育振興会 2003
海・大気・大地、等の自然現象は、すべて「流れる」が共通項になっているとし、 特に「水」を重要視している本です。 選ばれているテーマは散発的なので、内容の体系化がもう一歩欲しいのですが、 大元の発想は面白いです。


理学寄りの本

流体力学」 神部勉 編著 裳華房 1995
流れの数理が丁寧に書かれています。 流れの安定性の解説の中で、 カオス の話が出てきます。 弾性体も扱っています。


基礎からの流体力学!」 河村哲也 著 山海堂 2006
数値解析が最終章にあります。 渦を考える、粘性を考える等、 だんだん扱う式を難しくして、 難しくするとどういう現象がわかるようになっていくかが、わかるようになる構成にしてあります。
非圧縮の仮定 : 音速よりも低い気体には成り立つ。


流体工学の基礎」 白樫正高・増田渉・高橋勉 著 丸善 2006
乱流、圧縮性流れ、非ニュートン流体で1章ずつになっている本です。
2章:圧縮性流体では、密度が変化し、温度やエントロピー等の熱力学的な量も変化する。
等エントロピー流れとして音波や、非等エントロピー流れとして衝撃波が出ています。
圧縮性流体力学はマッハ数が高い時の話
3章:ずり速度の増加で粘度が増加するのが、擬塑性流体(高分子流体やエマルジョン)


工学寄りの本

図解 はじめての流体力学」 田村恵万 著 科学図書出版 2010
浮力等の、日常的に知っているものからのアプローチをしています。
・粘性による摩擦や、管の毛状でエネルギーの損失がある。エネルギーの損失は圧力に表れる。 ハーゲン-ポアズイユの法則は、流量と圧力差が比例とする。
・層流−管摩擦係数は、レイノルズ数で変わる。管壁の粗さは無関係
・乱流−管の粗さが関係する。
・相似則 : 実機と模型を比べるには、@幾何学的、A運動学的、B力学的な相似を見る。 また、無次元数を見る。 無次元数は、レイノルズ数、フルード数、オイラー数、ウェーバ数、マッハ数。


エンジニアの流体力学」 刑部真弘 著 朝倉書店 2010
筋の良い文章だと思います。 管路や翼等を題材にした流体力学の本です。 シミュレーションの解説も、最後の章に少しあります。


基礎から学ぶ流体力学」 飯田明由・小川隆申・武居昌宏 著 オーム社 2007
各項目を見開き2ページから数ページで整えてまとめていて、事典風です。
各項目の最初に、その項目の考え方のポイントが簡潔に書いてあります。


図解 流体工学」 望月修 著 朝倉書店 2002
薄い本ですが、コンパクトにまとまっています。管路の損失、等。 騒音の話が入っている点が珍しいです。


流体力学 :流れと損失」 渡辺敬三 著 丸善 2002
バッキンガムのπ定理による次元解析が、わかりやすくまとまっています。 この定理は、「物理現象に影響を与える物理量がわかると、無次元数の数がわかる」という定理です。 物理量が要約できるため、実験回数の削減に利用できるようです。


流れの工学」 山根隆一郎 著 丸善 2003
いろいろな流れの写真が多いです。また、抗力や損失の話が多いです。


熱流体工学の基礎」 井口学・武居昌宏・松井剛一 著 朝倉書店 2008
・流体の解説 → 管路の設計
・熱力学の解説 → ノズル
・気液二相流の扱い方


水理学・水力学

詳解 水力学」 今木清康 著 理工学社 2007
専門用語の英訳が親切に書いてあります。


Excelで学ぶ 水理学」 長岡裕 著 オーム社 2005
簡単な計算例が、Excelで学べるようになっています。 解説もコンパクトです。


水理学入門」 真野明・田中仁・風間聡・梅田信 著 共立出版 2010
保存則を丁寧に説明してから、水路の話を展開しています。


流れのシミュレーション

道具としての流体力学」 松本洋一郎 監修 山口浩樹 著 日本実業出版社 2005
流れの数学的な表現方法の解説や、シミュレーションの理論がコンパクトにまとまっています。 簡単なシミュレーションを表計算ソフトで実施する例もあります。
粘性の影響が大きいのは、壁面との境界面付近であることから、粘性流体の解析でも、 境界面から離れた場所は、完全流体で近似することができるそうです。


計算熱流体力学」 笠木伸英・松本洋一郎・大橋弘忠 著 岩波書店 2002
まず、伝熱や化学反応を含んだ計算の話があります。 両方を含んだ複雑な計算の例として、燃焼のシミュレーションもあります。
伝熱には、流体の式に伝熱の式を加えます。 化学反応では、化学種の保存則や、熱エネルギーの発生・吸収を加えるそうです。
この本のもうひとつの特徴は、 視点の大きさ別の計算の方法です。
マクロスコピック :一般的な流体力学の本で扱われている視点
ミクロスコピック :分子動力学法を使った分子レベルの視点
メゾスコピック :格子ガスオートマトン、格子ボルツマン法による拡散現象や、分離、分散現象の解析に使用。 「分子間の相互作用は、マクロな性質には影響するが、ミクロなレベルで遠くの分子への影響は薄いので、 ミクロとマクロの中間のレベルでモデル化できる」、ということらしい。 ミクロスコピックの計算方法の範囲を広げると計算が不可能になるので、その欠点を補える利点がある。


流れ解析のための有限要素法入門」 中山司 著 東京大学出版会 2008
中級位のレベルで、体系がよくまとまっている本です。
流れの 有限要素法 は、構造物の有限要素法のようには、変分法が使えないので、工夫がされているようです。 流れの解析に使われるのは、ガラーキン有限要素法と、ペトロフ・ガラーキン有限要素法とのことです。


流れのシミュレーションの基礎」 河村哲也 著 山海堂 2002
この本は、差分法によるシミュレーションの本です。


流体の研究方法

フルードインフォマティクス : 「流体力学」と「情報科学」の融合」 日本機械学会 編 技報堂出版 2010
流体の研究に、情報科学を持ち込んで行こうとしている本です。
計測とシミュレーションの融合 : 実際の流れを知るのに、計測というアプローチには情報が限られるという弱点があり、 数値シミュレーションには理想状態のものしかわからないという弱点があるので、両者を融合するアプローチ。 カルマンフィルタ 等、 制御工学 の手法を使って、両者を融合するようです。
定性物理 : 定性物理とは、 素朴概念 と同義のようです。 実験データや観察データから導かれた物理の式がなくても、また、あったとしてもそれを知らなくても、 常識的に自然現象を把握し対応できますので、それを活用します。 概念分析 で現象を理解しようとします。
協調的可視化 : 可視化によって、現象を理解します。
データマイニングと知識発見 : データ量の増加に半自動的に対応する方法として、 データマイニング を考えています。
アソシエーション分析の例 : 解析目的とそれを実現するための作業から、ルールを見つける
決定木の例 : 解析目的に対して、達成度の高い作業を見つける
SOMの例 : 作業の分類
流れの最適化 : 遺伝的アルゴリズムを利用。 最適化は、実際の設計に役立つ情報を引き出す目的で使うと良い。 最適解そのものよりも、結果の検討や解釈が重要。 最適化のプロセスは、流体を調べる手段になる。





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