物理現象や化学現象は、原子や分子が動いて起こります。
原子や分子が動くのは、原子間や分子間に"力"がはたらくためです。
シミュレーションをするには、仮想空間内に原子や分子を並べ、
それらの原子間や分子間に"力"を与え、仮想空間内の原子や分子を動かします。
これが、分子動力学法(Molecular Dynamics)です。
"力"の与え方は、2つの方法があります。
一般的に、経験的方法の方が、計算量は少ないです。
第一原理分子動力学法は、原子が動いて、しかも量子力学的な研究ができるので、 化学反応 のシミュレーション方法として理想的です。 (経験的方法による分子動力学法でも原子や分子が動きますが、 量子力学的な観点がないため、化学反応を調べる方法には向きません。)
シミュレーション の所でシミュレーションの魅力について書きましたが、 化学実験をする分野(薬学・毒性学・化学)にとって、 第一原理分子動力学法は待望の方法です。
化学系の現象は、アボガドロ数のオーダーで起こっていますので、 自然界に近い計算をするには、仮想空間内の原子数を多くとることが重要です。 原子数を多くすれば計算量も大きくなります。
ところで、第一原理の計算は、もともと計算量が大きな方法です。
そのため、化学系の現象を
第一原理
の分子動力学法で研究しようとすると、
もともと計算量の大きな方法に原子数の多さという条件も加わり、
計算量が膨大になってしまいます。
第一原理分子動力学法による化学反応の研究を手軽にするには、
コンピュータの発達と、手法の改良が期待されます。
「分子システムの計算科学―電子と原子の織り成す多体系のシミュレーション―」 笹井理生 編 共立出版 2010
一つの原子の量子力学から始まり、密度汎関数理論に行きます。
境界条件等の、計算科学に特有の技法も詳しいです。
最後が化学反応の研究への応用です。
「分子反応動力学」 R.D.レヴィン 著 シュプリンガー・ジャパン 2009
560ページの大著です。
「古典運動論的に分子の動きを調べるための本」、と言って良さそうです。
「分子シミュレーション入門」 岡田勲・大澤映二 編 海文堂 1989
分子動力学法の入門書。第一原理には踏み込んでいません。
順路 次は 焼きなまし法