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景観生態学

景観生態学は、ランドスケープエコロジー(Landscape Ecology)の日本語訳です。 文献では、ランドスケープエコロジーの呼び方のものもあります。 空間と生態の関係を扱うので、地理学と生態学の両方に関わる分野です。

一般的に、 統計学 を使う学問は、均質性(均一性)を前提にしているものが多いです。 計量地理学 に対して、均質性を前提にしていることが批判の根拠になっていることがあります。 しかし、景観生態学は、地形的・生態的な空間分布についての、 不均質性を重視している点が特徴です。

もともとは、航空写真の分析から始まっているようですが、 景観生態学は、典型的なデータサイエンスになっています。 数理モデルを作り、モデルで現実を理解するアプローチを使っています。 景観パターンの解析に、 パーコレーション や、自己組織化臨界現象の理論が使われたりもしているようでした。 上記で、「地理学と生態学の両方に関わる」と書きましたが、 もう少し範囲を絞って言えば、 計量地理学数理生態学 に関わっていると言えます。

モザイク

景観生態学は、空間をモザイク状(格子状)に分割し、モザイクの分布や違いを研究します。 また、モザイク毎の変化も研究します。

また、格子状にしているため、 データサイエンス を持ち込みやすくもなっています。

「モザイク」は、景観生態学の重要な手法ですが、景観生態学の特徴を表すための、象徴的な言葉にもなっているようです。

スケール

スケールとは範囲です。 景観生態学では、 研究対象のスケールによって、わかることや、やるべきことが違う点を指摘しています。

「既存のシステムは、それぞれのスケールの中で完結するように(閉じているように)して、 作られている。」という意味のことも議論されているようです。 このサイトでは、フレーミング(枠取り)という言葉が出て来ますが、 言わんとすることは同じでした。 景観生態学は地理学の具体的なスケールを使うのでわかりやすのですが、 もう少し抽象的な「スケール」は、 カオス のような複雑系の話でも重要です。



参考文献

景観生態学 : 生態学からの新しい景観理論とその応用」 モニカ G.ターナー・ロバート H.ガードナー・ロバート V.オニール 著 文一総合出版 2004
2000年位までの論文を体系的にまとめた教科書です。 引用論文のリストが56ページもあります。 この本は、森の視点と、木の視点が両立しています。 景観生態学どうこうの前に、物事をまとめてひとつの物を作る力に、感動してしまいました。


ランドスケープエコロジー」 武内和彦 著 朝倉書店 2006
始めの方で、景観生態学の概要の説明があります。 全般的には、景観生態学の解説と言うよりも、環境保全に対しての著者からの提言集になっています。


社会基盤・環境のためのGIS」 柴崎亮介・村山祐司 編 朝倉書店 2009
「シリーズGIS」の一冊です。 GISを使った様々な事例が紹介されている中で、景観生態学もコンパクトに紹介されています。




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