法規制や科学技術を使おうとする時には、 「コスト(費用)」や「 効率 」を考えておくことが不可欠です。 「環境のため」とか「健康のため」という理由があっても、 お金・人員・時間は無制限に投入できないからです。
「コスト」や「効率」は経済学的な考え方です。 環境経済学 では、このような場面のための、データ解析の方法が検討されています。 データサイエンス がいろいろ導入できそうな分野です。
下記では、ミクロ分析とマクロ分析に分けました。 両方で使えるものとしては、 システムダイナミクス があります。
ミクロ分析として、よく見かけるのが、 費用便益分析・費用効果分析・多基準分析です。 訳し方によって、違う呼ばれ方もします。 各単語の訳は、だいたい下記のような感じです。
Analysis - アナリシス・分析・解析・評価
Cost - コスト・費用・負担
Benefit - ベネフィット・便益・利益
Effect - エフェクト・効果
Multi - マルチ・多・多次元
Criteria - クライテリア・基準・尺度
費用便益分析(Cost-Benefit Analysis)は、 費用と便益の両方がお金で表せる時に使われます。 バランスを考えてベストな方法を選ぶための方法です。
環境経済学 は、 持続可能性 を重要視することもあり、 「割引率」というものを計算式に入れて、 将来における価値の変化を考慮しようとする場合もあります。 これは、金融の「利子」の考え方を、そのまま転用しています。 この転用の妥当性についての議論を、筆者は見たことがありません。 解説書では天下り的に登場する場合が多いようです。
「費用」の部分を、「 リスク 」に変えると、「リスク便益分析」になります。 リスク評価 の手法として用いられています。
費用効果分析(Cost-Effect Analysis)は、 効果が必ずしもお金で表せない時の方法です。 お金で表すことができれば、費用便益分析になります。
多基準分析(Multi-Criteria Analysis)は、 いろいろな基準(尺度)で、総合的に判断するための方法です。 国語・英語・数学・理科・社会の総合点を計算するような考え方と同じです。
それぞれの基準の点数付けや、重み付けをどうするかがポイントになります。 主観が入るけれども、ある程度の客観性も持てる方法として、 意思決定論 の分野では、 AHP が提案されています。
「こういう時には、人々はこういう行動をする。そして、結果的に環境はこうなる。」、 と言ったことを調べるための、行動の分析があります。 環境心理学 と題材が重なる分野です。
ゲーム理論 や、 人工知能 の方法が利用されているようです。
マクロ的な視点の分析では、 尺度 を実際に計算して、国別、時間別に分析するものがあります。 比較的複雑な分析としては、 産業連関分析があります。
産業連関分析 は、環境分野にも応用されています。
ただし、、もともとの産業連関分析は、 外部性 を含んでいません。
そのため、環境の分野に産業連関分析を使う場合は、 産業連関表に、各部門の活動による有害物質の発生量の項目を足したりします。
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環境経済学の参考文献は多いため、 環境経済学の本のページ にまとめてあります。