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感性工学

感性工学は、人の感性を把握し、それに合わせて新たな製品を考案するための学問です。

感性工学は、店頭に並ぶ商品から始まっていますが、人間の作る物すべてに適用できそうです。 風土工学 は、感性工学のアプローチを土木施設の建設や、 地域づくりに使っています。

感性工学の信条

感性工学は、 「感性に合う商品 = 売れる商品」と考えます。 「感性」をはてしなく広く考えれば、何にでも当てはまるかもしれませんが、 実際は、感性を調査する人のセンスに影響されやすいのではないかと思います。

感性工学の文献で、 「顧客が欲しくなるものを作るから、ニーズの有無は無関係。 顧客自身が、ニーズを認識していなくても作れてしまう。」という発想を見かけたこともあります。 「面白いことを考える人がいるものだな」、と思いました。

感性工学の方法

顧客が欲しがるものを、 データから見つけて行こうとします。 一般的な製品開発は、 開発者が「顧客はこういものを欲しがるだろう」と想像するだけの事が多く、裏付けとなるデータがあまりないので、 だいぶ違ってます。

高度な感性工学になって来ると違うかもしれませんが、 感性工学は、物事を静的にとらえる手法が中心ですし、また、感性の背景や文脈までは踏み込んでいません。 例えば、「ゆったりできる製品が求められている」とわかったとします。 静的なので、一年後も同じとは限らないことに注意が必要ですし、 どんな時に「ゆったり」が求められるかは、わかっていないこともあると思います。



参考文献

感性工学のおはなし」 長町三生 著 日本規格協会 1995
・感性の6〜7割は感性工学の範囲、残りはデザイナーや開発者の独創性
・生活者の感性レベルは向上していくので、それに合わせなければいけない。 (筆者としては「向上」よりも「変化」の方が、しっくり来ます。)
・「あ」や「う」等の単音文字のひとつひとつを感性評価しておくと、 名前の響きが分析できるようになる。
・感性工学手法T類 : ターゲットを決める → コンセプトを決める → 感性ワードで表現する  → 具体的なものの状態に結び付ける → 技術を考える。
・感性工学手法U類 : T類の技術への置き換えの部分を、 エキスパートシステム で実施。 感性ワードと実際の技術の関連がわかったら、データベース化して、簡単に利用できるようにします。
・感性工学手法V類 :  多変量解析 で、感性と技術を結びつける。
・感性工学手法W類 : 別名、バーチャル感性工学。 バーチャル(仮想)の世界で、使用者が擬似体験をし、そのデータから商品化に結び付ける。
・感性工学手法X類 : 別名、感性品質管理。 顧客の感性を分析し、そこから品質管理の活動内容を決めていく。 (感性工学の対象を、「商品」から「会社」に置き換えている。)


感性工学 : 感性をデザインに活かすテクノロジー」 長町三生 著 海文堂 1989
「感性は感覚よりも総合的なもの」、「感性は形容詞で表現できるもの」としています。 また、人間の感性は、時が経てば変わることや、時代や世代でも異なることを、感性工学の課題としています。
感性工学は、人が持っているイメージや感性を、デザインに変換する技術としています。
事例として、カラーイメージ、室内照明、自動車があります。


数理的感性工学の基礎:感性商品開発へのアプローチ」 長沢伸也 ・神田太樹 編 海文堂 2010
SD法主成分分析ニューラルネットワーク遺伝的アルゴリズムラフ集合AHP を、感性を分析する方法として使っています。
この本は、 心理物理学 にもひとつの章を使っています。 従来の心理物理学は、刺激と反応の一対一の関係を研究して来ているので、感性に基づいた製品開発には、さらに発展する必要があるとしています。


感性の科学 : 心理と技術の融合」 都甲潔 ・坂口光一 編著 朝倉書店 2006
感性QFDとして、 QFD の企画品質に感性を追加することを提案しています。 QFDを使うと、「設計品質を決める時に恣意性がつきまとう」と述べています。
経験価値に焦点を当てたマーケティングは、感性品質の話と似ています。
認知心理学社会心理学 も少し紹介されていました。


カオス・フラクタル感性情報工学」 中川匡弘 著 日刊工業新聞社 2010
中心的な内容は、 カオスフラクタル の方法による脳波の分析でした。 この方法で、感情、視覚、聴覚を分析しています。 また、脳波とは別に、肌の構造や魚の動きの分析もありました。 脳の分析方法としては、脳波の他に、近赤外分光法もありました。


感性と設計」 矢川元基・吉村忍・松田聡浩 著 培風館 1995
感性的尺度と工学的尺度の非線形の関係をつなぐ物として、 ニューラルネットワーク を解説しています。


商品開発と感性」 長町三生 編 海文堂 2005
感性工学の事例がのっています。
感性の評価方法の紹介があります。 ひとつめが尺度です。心理的なものを何で評価するのか、です。 ふたつめが解析法です。 多変量解析 が中心でした。
ラフ集合 もありました。


感性工学への招待 ― 感性から暮らしを考える」 篠原昭・清水義雄・坂本博 編著 森北出版 1996
「知性情報に感性情報を付加すれば言葉の壁を乗り越えられる。」 という提言があり、 リスクコミュニケーション の問題としても面白いと思いました。


感性工学の基礎 :美とエントロピー」 小竹進 著 丸善 2005
「美」を作るには、労力が必要で、「美」でないものを作るのは簡単と言った考え方で、 「美」であることは、エントロピーが低い状態と解釈しています。 知覚とエントロピーの関係や、 「美」の事例の解析に話が及んでいます。



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