本来、「デザイン」という言葉は、その物の存在理由等の、深い意味を考え出すことを含むそうです。 デザインは、その企業を現実的に表現するものになり、顧客と企業をつなぐ接点や鍵になります。 この点は、 マーケティング と、デザインが重なる領域かもしれません。
品質学 の立場で言えば、デザインは品質の一種です。 品質の中でも、根源的なものです。 しかし、品質学が伝統的に扱って来た「品質」は、製品の特性や機能なので、どちらかと言えば表面的なものです。
歴史的には、
SPC(統計的工程管理) :製品の特性にとって重要な事象を見る
品質工学 :製品の機能にとって重要な事象を見る
TQC :製品の特性や機能を包括的に見る
という順番があり、その後で、
価値工学
、
QFD(品質機能展開)
、
感性工学
といった品質の根源的なものを扱うツールや考え方が、
品質学
にも取り入れられて来ています。
「問題解決ラボ 「あったらいいな」をかたちにする「ひらめき」の技術」 佐藤オオキ 著 ダイヤモンド社 2015
デザインの力で、問題解決を進める本です。
発想の仕方や、心構えなど、著者の経験と思いが、まとまっています。
久しぶりに最初から最後まで文字を追うことになった本でした。
「仕掛学 人を動かすアイデアのつくり方」 松村真宏 著 東洋経済新報社 2016
著者は、もともと人工知能の研究者で、データから意思決定に役立つ知識を発見しようとしていたものの、
ある日、世の中のほとんどの事象はデータになっていないことに気付いたそうです。
そこで、データやコンピュータに頼らずに人に生活空間の魅力を伝える手段として、「仕掛け」を提案しています。
仕掛けを問題解決の手段にします。
行動経済学
で出て来る「ナッジ」は、あまり考えずに選ばれる日常的な行動の設計方法で、
仕掛学はつい選びたくなるもうひとつの行動の設計方法としています。
人が仕掛けを見て、何なのかを判断する方法として、
アナロジー
や
アフォーダンス
を挙げています。
著者は、自身が身の回りの中で収集した120の仕掛けの事例について、体系的な分類を進め、それを元にして、今度は仕掛け作りに活用しています。
新しい仕掛けのアイディアは、人(特に子供)の行動の観察にあるそうです。
「しかけは世界を変える!! 毎日がたのしくなる!まほうのしかけ」 松村真宏 著 東京ニュース通信社 2019
仕掛学の子供向けの本です。
わかりやすい仕掛けの事例をたくさん示すことで、問題解決に仕掛けが役に立つことを紹介しています。
「デザインのための数学」 牟田淳 著 オーム社 2010
美しいデザインの中にある数学的な特徴についての本です。
著者は、物理学出身でありながら大学の芸術学部の教員、という経歴をお持ちです。
・古くから5:8の黄金比は注目されて来たが、日本の文化の中で好まれて来たのは1:ルート2の白銀比や、1:1。
比率が変わると印象が変わる。
・球や六角形は、自然にある力の加わり方を最小にする(最適にする)形。
・数列、対称性、繰り返し、比率、等の規則性があると、美しく見える。
・
カオス
から作られる模様は、一見すると乱雑なだけに見えるが、規則性があり、美しく見える。
・フィボナッチ数列は、一見すると規則性のない数字の並びに見えるが、単純な規則でできている。
自然界の中にも、フィボナッチ数でできているものがある。
・世界各地にある模様には、周期性のあるものが多い。
ペンローズ・タイルは、特定の形を敷き詰める模様の一種だが、周期性がない。
「「美しい顔」とはどんな顔か 自然物から人工物まで、美しい形を科学する」 牟田淳 著 化学同人 2013
比率と対称性(シンメトリー)の話で7割くらいで自然美の話です。
残りの3割は機能美の話になっています。
流線形:空気抵抗を小さくすることができる。
放物線やトラス構造:橋脚の間隔を広げたり、頑丈にすることができる。
「アートを生み出す七つの数学」 牟田淳 著 オーム社 2013
数列、フラクタル、複素数、幾何学、微分方程式、最小・最適、対称性の7つに分けています。
7つの数学がどのようにアートに使えるのかが主な内容ですが、宇宙や
原子・分子の世界
といった物理学の話も出て来ます。
複素数:円、対数螺旋、マンデルブロー集合(フラクタルの一種)が描く。
幾何学:無限の世界を、絵(有限の世界)に表現する。
微分方程式:カオスを描く。
「アートのための数学」 牟田淳 著 オーム社 2008
アートでは、光(明るさ、カメラ、色)、音(音階)、運動といった物理を、デジタルやアニメーションで表現しますが、
それぞれのキーワードは数学的にはどんなものなのかを解説しています。
データやプログラミングとして、どのようになっているのかもわかりますので、この分野の
データサイエンス
の入門書にもなっています。
「最適デザインの概念」 松岡由幸・宮田悟志 著 共立出版 2008
デザインとは、結果(目指しているもの)から、原因(デザイン)を導出するものなので、逆推論なのだそうです。
目的関数や制約条件を考えて、最適値を見つけることによって、デザインが決まるとしています。
数理計画法
の応用と言えるような内容でした。
「かたち」 フィリップ・ボール 著 早川書房 2011
化学反応や生き物の模様など、自然界の様々な形の裏にある数理を詳細に解説しています。
「形の生物学」 本多久夫 著 日本放送協会 2010
「多細胞生物は、袋が複雑に形成される事でできている」、という視点から、生物の形を見ています。
遺伝子が同じ鯉でも、模様は異なる事など、遺伝子が袋の形の関係の話もあります。
「ペルソナ戦略 :マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする」 ジョン・S.プルーイット、タマラ・アドリン 著 ダイヤモンド社 2007
この本は、ペルソナによる開発プロセスを、細かく解説しています。
・ペルソナの必要性:
「ユーザー」の事を考えてデザインしているつもりでも、「ユーザー」として考えているものは、個人差が大きく偏見もあります。
「ユーザー」は、わかっているようで、わかっていないものです。
ユーザーの定義は、社内で同じにする必要があります。
・ペルソナで実現すること:
(1) 1人または、数人のユーザーを想定し、その人のために作ろうとすると、
感情移入がしやすく、ユーザーに対して深い理解をした中で、デザインをすることができます。
(2) 多くのユーザーの情報をデザインに反映させます。
・ペルソナの作り方:
広くユーザーのデータを集め、
親和図法
・
因子分析
・
クラスター分析
等でデータを集約して、人物像を作ります。この人物がペルソナです。
こうすると、少数ユーザーのためにデザインすることの利点と、
多くのユーザーについての情報を使ったデザインの利点を両立できます。
・ペルソナのその他の視点:
ペルソナ戦略では、ユーザーと顧客を混同しないようにしています。
例えば、ユーザーが子供で、顧客が親の場合がわかりやすいです。
実際に製品を使うのは、ユーザーなのでユーザーのためにデザインします。
ユーザーにとって良いものを作れば、顧客が買ってくれると考えます。
「デザイン論」 田中央 著 岩波書店 2000
「デザイン」という言葉は、日本では、形や絵を考える事を指すことが多いけれども、
本来の意味は、その形の中身も含めて考えることを言うそうです。
本の中身は、インダストリアルデザイン(工業製品のデザイン)の話が多いです。
・デザインは仮説 :顧客が、その仮説の正しさを決める。
・3不 :不安、不満、不思議のこと。3不が物事の観察の引き金になる。
・デザインは、形ではなくコンセプトが重要。
「ビジネスのためのデザイン思考」 紺野登 著 東洋経済新報社 2010
iPadの成功が、単なるハードの形だけでなく、ソフトやマーケティングも含めたものであることを挙げたりしています。
この本でいう「デザイン」とは、「プロダクトデザイン」や「アート」だけではなく、
「設計」や、売り方等の考案も含まれています。
「知のデザイン」と呼んでいます。
これからの経営のポイントとして、デザインを掲げています。
にぎやかな本です。
「デザイン開発入門 :製品開発への導入と活用法」 玉田俊郎 著 海文堂 1994
製品のデザインを会社の中で進めるための、会社の仕組みが書かれています。
デザインの本は、大衆向けの商品を扱ったものが多いですが、
この本には、印刷所の印刷機のデザインが働く場所の雰囲気を変えた話もあります。
・デザイン部門の配置の仕方は企業でいろいろ。
・生活文化研究所を設置して、ニーズを研究したり、新しい生活スタイルを研究する企業が増えている。
「デザインマネジメント入門 :デザインの戦略的活用」 長沢伸也・岩谷昌樹 編著 京都新聞出版センター 2003
縦書きで読み物風の本です。
・経営学の中でデザインを経営と結び付ける。
・会社のロゴや社名のデザインが会社を変える。
・情報をデザインに込める。
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