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価値工学(VE)

価値工学は、「価値工学」という名前よりも、「VE」という名前で啓蒙活動が進められています。 「VE」は、「Value Engineering バリュー エンジニアリング」の略です。

価値工学が扱うものは、機械式の製品がわかりやすいですが、 ソフトや会社等、複数の機能が集まってできているものでしたら、扱えます。

価値工学は、 コスト分析 の一種ですが、機能の価値を見積もって分析を進めるため、 顧客の立場も意識していくことができるようになっています。 この点が、単なるコストダウンとは大きく違っています。

V = F / C

「V = F/ C」は価値工学の特徴を表している式です。 象徴的に使われることもあります。

VがValue(価値)、FがFanction(機能)、CがCost(コスト)です。 機能が良くても、コストが高ければ価値は下がります。

Fの具体的な内容

「Fは、機能」と言われますが、価値工学では、機能を「価格」で表現します。

理想的には、Fは、顧客にとっての機能の価値を表します。 Fは、「売り値」、「顧客の評価価格」、「設計者による推定価格」等、いろいろと考えられますが、 事例では、設計者による推定価格の事がほとんどのようです。

FとCは機能毎に見積もります。 機能毎に見て、Fに対してCの差の大きな機能や、CがFを上回っている機能が改善のターゲットになりますので、 Fは「目標コスト」と呼ばれています。

Cの具体的な内容

「Cは、コスト」と言うのも、簡単なのですが、これも何の値にするのかは難しいところです。

「Cは、 ライフサイクルコスト を表している」と説明されることが多いようですが、とても大変な計算になります。 事例では、製造コストのみの事がほとんどのようです。

Vの意味

Fが顧客にとっての機能の価値を表し、Cがライフサイクルコストを表しているのでしたら、 Vは、社会にとっての製品の存在意義の大きさを表していると言えるかもしれません。

しかし、事例では、Fが目標とする製造コストで、Cが現状の製造コストを表していることが多いようです。 この場合は、製造者にとっての価値を評価していることになります。 顧客や社会の立場での評価方法としては、弱くなっています。

機能の定義と評価

機械、ソフト、会社等は、全体としてひとつの機能を持っていますが、 その機能は、個々の機能の集合でできています。 例えば、自動車でしたら、進むための機能、止まるための機能、曲がるための機能、等があり、それらはさらに細かな機能が集まってできています。

価値工学では、個々の機能を、「名詞+動詞」の簡単な表現で定義していきます。 これを体系的にまとめると、「物」が機能の集まりとして表現されます。

全体を機能に分解することによって、漠然と物を見るのではなく、具体的なターゲットが見えるようになります。 全体を部品の集合と見るのではなく、機能の集合と見るのが、価値工学のアプローチです。 これによって、より顧客の視点に近い分析ができるようになっています。

FとCの計算

価値工学では、下記のようにして、個々の機能について、FとCを計算します。 個々の機能のFとCが明らかになると、改善のターゲットにする機能が明確になりますし、 改善の必要性や効果が数値的にわかるようになります。

個々の機能のFの計算

個々の機能の価格は、個別に推定する方法と、全体の推定値を機能毎の重みで配分する方法があります。 製品としての、開発目標値が決まっている場合は、後者になります。

重みの決め方は、 一対比較 が使われることが多いようです。 例えば、3つ機能があって、重みが同じでしたら、個々の機能のFは、全体の価格の3分の1になります。

個々の機能のCの計算

個々の機能を、 二元表 を使って、部品と対応付けます。 すると、部品のコストを使って、個々の機能のコスト(C)が計算できます。

例えば、ある機能は、2つの部品を使っていて、それらの部品はその機能以外には使われていないとします。 すると、その機能のCは、2つの部品のコストの合計になります。



参考文献

よくわかるVA/VEの本」 八代弘 編著 日刊工業新聞社 2012
中心になる手順を具体的に解説しています。 後半は様々な分野での事例集です。


バリュー・エンジニアリング入門」 秋山兼夫 著 日本規格協会 1995
「機能の目標コストを設定するステップを、機能評価という」と、はっきり書いてありました。 目標コストの出し方として、アイデア想定、競合品比較、主観、機能重要度の4つを挙げています。
ところどころで、チーム活動としてVEを進める時の注意点に触れています。
全体的に平易な文章です。


新・VEの基本 価値分析の考え方と実践プロセス」 土屋裕 監修 産能大学VE研究グループ 著 産能大学出版部 1998
手法のバリエーションが豊富です。 社内の推進体制の話もあります。
Fは、目標コストを重要度で各機能に配分する方法の他に 実績価値やアイディアによるものによる機能別のコストもあります。。


価値創造経営の視座 実践 価値工学 基礎編」 手島直明 著 日科技連 2011
製品価値、部位価値、商品価値、という分類があり、計算式が違いました。 通常のVEの本で出ているのは製品価値です。
価値とは何か、という議論と、価値を指標とした経営の解説していて、具体的な手法は本の半分くらいです。


VEハンドブック」 上野一郎 監修 日本バリュー・エンジニアリング協会 2007
VEや、VEと組み合わせると良い技術(TRIZ・多変量解析等)を体系的にまとめた本です。分厚いです。


理論的発想でVE改革 誰でもできる科学的VE」 豊田陽一 著 ルネッサンスブックス 2006
「VE技法システム」という名前でVEの流れと手法を体系化しています。手法はブロックにして、ブロックの中で完結するようにしています。 これによって、わかりやすく、手法の追加や、他の分野との連携もしやすくしています。
科学的というタイトルは、このシステム化を指しているようです。



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