「コスト」は、誰でもわかっているようで、実はなかなか奥の深いものです。 考え方や計算の仕方を工夫すると、今まで見えにくかったものが、 お金という尺度で見やすくなったりします。 見やすくなれば、改善が進みます。
品質コストとは、品質管理に関連したコストのことです。 品質問題を予防するための「予防コスト」、品質問題が発生した時に対応するための「失敗コスト」、 品質管理の知識を啓蒙するための「教育コスト」等があります。
品質コストの考え方は、ある特定の目的に使ったお金を集計するという点で、 環境会計やCSR会計 に通じるものがあります。
ひとつのものを作る時には、日によって、人によって、差があるものです。 計画的に生産したり、毎日の出来高の良し悪しを判断できません。 このため、特に問題なく作れた場合の作業時間を、「標準時間」として定めます。 「標準時間」は、 生産工学(IE) で決めます。
標準時間が決まると、その差を使ってコストが計算できます。
従来の会計では、売上原価、販売費、一般管理費、営業外費用などの項目がありますが、 これらはそれぞれの中に変動費と固定費が混ざっています。 付加価値会計では、それが会計が活用しにくかったり、不正操作を生んだりする原因と考えています。
付加価値会計では、 材料費、変動労務費、外注加工費、外注物流費、在庫金利が変動費に含まれます。 固定費は、固定労務費、設備投資、資本コストが含まれます。 そして、これらの項目を分析の対象にします。
付加価値会計では、コストは変動費のことです。 これはコストダウンの活動の対象にします。
固定費は、資源と考えています。 ゼロは目指しません。
「コストダウンが会社をダメにする スループット向上で全体最適」 本間峰一 著 日刊工業新聞社 2008
コストダウンのすべてではなく、原価の計算の仕方や、やり過ぎた場合のデメリットを考えないコストダウンが会社をダメにするものとしています。
「コストは、必ず半減できる。」 三木博幸 著 日本経済新聞出版社 2014
この本では、機械の設計を見直すことによる改善を紹介しています。
「強度、製造のしやすさ、メンテナンス性、という点で、もっと良い構造はないのか?」、「設計と製造のギャップは何か?」といった観点でものづくりを見ています。
「技術屋が書いた会計の本」 吉川武文 著 秀和システム 2016
・「在庫を減らしなさい」:ビジネスモデルから適性在庫を見積もる
・「コストマネージメントをしなさい」:コストダウンの3原則は、「実行可能」、「効果が十分」、「会計的に測定できる」
・「業績評価をしなさい」:財務会計ではなく、新しい管理会計(変動費と固定費をしっかり区分・サプライチェーン全体が対象)で管理
・「IoTの時代だろう」:変動費はコストダウンを目指し、固定費はイノベーションを目指す。
流通業はお客様のニーズを真っすぐに見つめた活動をしているので、製品の転売だけで大きな価値を出す。
製造業は流通業を見習うべき。
自動化は、キャッシュの固定、ラインの更新ができない、作業者が工程改善できない、というリスクがある。
「図解!生産現場をカイゼンする「管理会計」 新しい会計を生産技術者が知るための<なぜなぜ88>」 吉川武文 著 日刊工業新聞社 2020
・会計に表れないカイゼンは意味がない。従来から注力されて来た7つのムダは、すべて変動労務費の話で、他は取り上げられてこなかった。
この本では、従来の7つのムダとは別に、8つのムダを新たに設定している。「ゼロ在庫」、「ムダ取り」、「共倒れ」、「場当たり配送」、
「工場外無関心」、「身分分断」、「会計不毛」、「株主不在」の8つを説明する形で、章が構成されています。
・製造業の主戦場は、工場から物流へ。物流部門が製造部門をプッシュする。
・変動費と固定費で、やることは変わる。コストダウンするのは、変動費。固定費は生産性を管理する。
・「在庫ゼロ」は会計的にも意味にある目標だが、在庫ゼロにこだわり過ぎると弊害もある。
・付録として、各種の改善活動について、活動のビフォーアフターをまとめるための計算シートが付いています。
会計の点で明確に効果が現れる活動をするための参考になります。
内部収益率 > 資本コストなら計画はGO
内部収益率は、EXCELのIRR関数で求まる。
「脱炭素経営の基本と仕組みがよ〜くわかる本 CO2の削減と経済の持続を両立する!」 吉川武文 著 秀和システム 2022
工場のカイゼン活動の経験が豊富でありながら、公認会計士や気象予報士の資格も持つとという異色の経歴の著者です。
エネルギー生産性として、「事業付加価値/エネルギー使用量」という計算式を提案しています。
吉川氏の一連の著作の内容に、エネルギー使用料を会計的に管理する方法が、従来の環境会計なども元にして、提案されています。
エネルギー購入費を変動費、再エネ維持費を固定費に加えています。
「品質コストの管理会計」 梶原武久 著 中央経済社 2008
「なぜ、品質コストを日本企業が利用するのか?」という問いかけから、
日本の品質管理の現状を明らかにしようとしている本です。
実際の電器機器メーカーの工場での分析が、論拠になっています。
現代では、失敗コストが膨大な金額になることがあるので、失敗コストの最小化を第一に考えるとのことです。
また、予防コストと失敗コストの両方が低下していく場合がある一方で、
技術的に高度な場合等では、予防コストと失敗コストがトレードオフの場合もあるそうです。
いずれにしても、品質コスト(予防コスト、失敗コスト)を把握しておくと良いようです。
「トコトンやさしい 原価管理の本」 大塚泰雄 著 日刊工業新聞社 2024
原価について詳しく学んでから、コストダウンの目の付け所の話をしています。
「ケーススタディ戦略管理会計 :MBAアカウンティング」 辻正雄 編著 中央経済社 2010
・原価企画に
価値工学(VE)
が入っています。
順路 次は 利益と付加価値の分析