自然法則には、常識的な感覚や固定観念が、受け入れにくいものがあります。 環境の分野では、エントロピー増大則が特に有名だと思います。 「エントロピーという量は、増大する一方である」という法則で、 これは「自然環境は不可逆(元には戻らない)」であることを意味します。
エントロピーは熱力学で出て来ます。
ちなみに、「熱」をマクロな視点で扱うのが熱力学で、
ミクロな視点で扱うのが
統計力学
です。
エクセルギー(exergy)は、「エネルギーの役に立つ部分」と説明されたりします。 熱現象は、安定な温度で平衡状態になりますが、 エクセルギーというのは、平衡状態になるまでの仕事(エネルギー)のことです。 特徴としては、下記の2点があります。
そのため、 環境経済学 では、エントロピーよりも実用的な量と言われることがあります。
資源物理学では、 まず、エントロピーの正しい理解を目指します。 「豊富なエネルギーがあれば、資源を無限に再生できる」、 という説を否定するのは、資源物理学です。 また、生命現象や文明を、エントロピーをキーワードにして説明します。
資源物理学は、このサイトで分類しにくい分野です。 「社会や経済を扱うこともあるから、 持続する社会 や、 エントロピー経済学 の所?」、と迷いました。 結局、熱力学的な自然現象の理解を重要視している分野なので、 このページにしています。
エネルギーは英語で「energy」です。 energyの英語読みを片仮名で書くと「エナジー」です。「エ」の部分にアクセントがあります。 日本語では、「エネルギー」の方が一般的と言って良いと思いますが、 「エナジー」もたまに見かけます。 どうやら、エネルギーという言葉はギリシャ語が語源で、読み方はドイツ語から来ているようです。
エネルギーと同じことが、エクセルギーにも当てはまります。 筆者は、 環境経済学 の英語の文献で「exergy」を最初に知り、「エクサジー」と読んでいました。 最初は、「エクサジー」をキーワードにしたので、日本語の文献が見つからず、 「エクセルギー」をキーワードにしたら、結構ありました。 エネルギー管理関係の本で出て来ます。
エクセルギーの本も、資源物理学の本も、 熱力学の基本的な解説はしっかりしています。
「エネルギー環境学」 濱皮圭弘 他 編著 オーム社 2001
エネルギーと環境の関係
「エネルギー論」 藤井康正・茅陽一 著 岩波書店 2001
エネルギーの種類や、利用状況、技術についての本です。
エネルギーシステムの評価方法として、
経済性・環境性・安全性・セキュリティ性・研究開発性をあげています。
そして、
経済性 −
ポートフォリオ分析やオプション理論
環境性 − LCA
安全性 − FTA
セキュリティ性 − 政治的対策
研究開発性 − PERT(
OR
の一手法)
が対応する手法として挙げられています。
「0と1の話 ブール代数とシャノン理論」 ポール・J.ナーイン 著 松浦俊輔 訳 青土社 2013
コンピューターの土台を作った2人の人物として、ブールとシャノンが築いた理論を解説している本です。
最後の章が、この2人の時代の後に出てきた理論の説明になっていて、情報は電気的に表現されるため、
消えた情報は熱として散逸していくとして、情報とエネルギーには物理的な関係があることを述べています。
量子コンピュータ
の話もあります。
「Excelで解く工場の省エネとデータ分析」 板東修 著 オーム社 2015
分析手法のメインになっているのは、エネルギー稼働点図というものです。
この図は、生産量を横軸に、エネルギー量を縦軸にした散布図です。
これを
回帰分析
すると、エネルギーの使い方を固定分(y切片)と比例分(傾き)に分けて把握する事ができます。
分けられれば、改善を考えやすくなります。
この本では、固定分を比例分に置きかえるための具体的な機器等も紹介しています。
分析のための
尺度
としては、エネルギー量を生産量で割った尺度を紹介しています。
「エネルギーの新しいものさし エクセルギー」 アベイラブルエナジー研究会 編著 日本電気協会 2010
エクセルギーの入門書です。先生と生徒の対話形式になっています。
エクセルギーが「新しいものさし」かどうかは、疑問がありますが。。。
「エネルギー有効利用の原理:エクセルギーを活かそう 」 小島和夫 著 培風館 2004
工業で、エクセルギーやエントロピーを考えながら、省エネをするための本です。
理論的な計算が詳しいです。
「エクセルギー講義」 押田勇雄 著 太陽エネルギー研究所 1986
理学的な立場からのエクセルギーの教科書として、筆者の知る限りでは、一番内容が充実している本です。
「資源と環境というのは、相対的な概念で、比較的稀少なものを資源、
豊富にあってただと見なされるものを環境と呼ぶわけである。」、
という、高橋秀俊氏の言葉が引用されていました。
示唆に富むと思います。
「エネルギー工学のためのエクセルギー入門」 信澤寅男 著 オーム社 1980
工場を想定したエクセルギーの教科書として、筆者の知る限りでは、一番内容が充実している本です。
「エクセルギー工学 理論と実際」 吉田邦夫 編 共立出版 1999
化学プロセスや、燃焼プロセス等のエクセルギー解析を平易に書いています。
「エクセルギーの基礎」 唐木田健一 著 オーム社 2005
熱力学の解説書です。
エクセルギーは最後の6分の1位で扱われています。
「エクセルギーと環境の理論」 宿谷昌則 編著 北斗出版 2004
建築関係の執筆陣による本です。
物を温める「温エクセルギー」と、物を冷やす「冷エクセルギー」というのが出てくるのですが、
わからなかったです。
「エクセルギの基礎(新しいエネルギ評価法の提案)」 松永省吾 著 パワー社 1983
「エクセルギーは保存しないから、科学ではない。」という、真意の不明な主張も含む本です。
その主張とも関係していますが、「思考体系」という言葉がよく出てきます。
「思考体系」の違いが重要ということのようです。
エネルギーの経済性として、効率だけでなく燃料の値段も考慮した戦略を提案しています。
「Chemical Energy and Exergy : An Introduction to Chemical Thermodynamics for Engineers」 Norio Sato Elseview 2004
エクセルギーの他にも、アフィニティー(Affinity)や、アネルギー(Anergy)の解説もある本です。
アフィニティーはエントロピーが増える時に、減るもので、
アネルギーは「エネルギー = アネルギー + エクセルギー」で定義されるものです。
全般的に丁寧な解説です。
「資源物理学入門」 槌田敦 著 日本放送出版協会 1982
エネルギーの意味が分野によって異なることも、エネルギー問題の原因として指摘しています。
エントロピーをキーワードに経済、文明、生命を説明しようとしています。
「熱学外論 −生命・環境を含む開放系の熱理論−」 槌田敦 著 朝倉書店 1992
「資源物理学入門」と違い、数式の説明が多いので、数理的にはわかりやすいです。
情報理論
のエントロピーと、熱学のエントロピーの違いの解説があります。
流行語としてのエントロピーについても述べています。
前半が熱学の説明です。
後半が、文明論や科学論です。
「環境理解のための熱物理学」 白鳥紀一・中山正敏 著 朝倉書店 1995
タイトルからはわかりませんが、内容は資源物理学を意識して書かれています。
この本でも
情報理論
のエントロピーの話が出てきますが、
「熱学外論」と同じ題材を違う角度から見ているような面もある本です。
この本は、オーソドックスな物理学を基盤にしている感じがします。
順路
次は
変形と振動と波動(連続体力学)