環境問題 に関わるような経済学は、 環境経済学(Environmental Economics)、 エコロジー経済学(Ecological Economics)、 エントロピー経済学(Entropy Economics)、 生物経済学(Bioeconomics)、 生物多様性経済学(Biodiversity Economics)があります。 (筆者が資料を探す時に使ったキーワードは、これらの名前です。 他にもあるかも知れません。)
環境経済学の種類は、上記のようにいくつかあり、おおまかな分類をすると、 このページの下記の説明のような感じになります。 しかし、呼び方は同じでも、扱っている内容は人によって違うため、 あまり厳密な分類はできません。 下記の説明には当てはまらない文献も、おそらくあると思います。
呼び方はいろいろですが、出発点が「従来の経済学」で、 目的が「環境問題の解決」や「持続可能な社会の実現」なので、基本線は同じ学問です。 このサイトでは、すべてをひっくるめて「 環境経済学 」と呼んでいます。 このサイトで「環境経済学」と言っている時は、 環境問題に関わるような経済学全般のことです。 世間一般の分類のことを書きたい場合は、「環境経済学(狭義)」にしていますので、 ご注意ください。
環境経済学(狭義)と、エコロジー経済学の違いを強いて挙げるなら、
@ 「経済系と生態系の関係の違い」、
A 「外部性の内部化の是非」、
B 「データ解析の視点の違い」
の3点があります。
(ただし、考え方によっては、この分類が当てはまらない場合もあります。)
「経済系と生態系の関係の違い」とは、 経済系(人間社会)と生態系(自然環境)の、内包関係の違いです。
「経済系の中に、生態系」が成立するのは、「 外部性は内部化できる! 」という考え方をするためです。
一方、「生態系の中に、経済系」という考え方は、 「ヒトは、生物の一種。ヒトは地球の上で生きている。」という自然な発想から来ています。 筆者としては、こちらが本当だと思います。 外部性の内部化は、「問題解決のための手段のひとつ」と考えれば良いと思います。
外部性の内部化の話は、環境問題を扱っている経済学の本なら、 必ずと言って良いほど出てきます。 しかし、位置付け方に違いがあります。
「データ解析の視点の違い」とは、 経済性のデータ解析 をする時のミクロとマクロの違いです。 ただし、Bの違いは、@Aほど明確ではないです。
エントロピー経済学と生物経済学は、少数のパイオニアがいらっしゃって、 その方々の作り上げた理論が中心になっています。 その理論は、エコロジー経済学の土台になっています。 このサイトでは、エントロピー経済学と生物経済学は、 エコロジー経済学に含まれていると考えています。
エントロピー経済学は、エントロピーの流れやエントロピーの使い方が理論の中心になっています。 「あらゆる活動は、エントロピーの出入りがある。 しかも、入力は低エントロピーで、出力は高エントロピーになる。」、という風に、 エントロピー経済学では、 エントロピーを物質の移動のように説明します。
入力と出力のエントロピーが異なるので、「人間活動や自然活動は、不可逆(元には戻らない)」、 ということになります。 そして、このエントロピーの性質を考えると、 「孤立系ではなく開放系の社会システムでなければならない。」、 という結論になります。 エントロピー経済学は、単に経済学の見方にエントロピーの概念を入れているだけではなく、 社会の仕組みや、ライフスタイルのあり方も検討しています。
エントロピー経済学と題材や考え方が重なりつつも、より自然現象に近いことを扱う分野が、 資源物理学 です。
生物経済学(=バイオ経済学)は、エコロジー経済学の先駆的な議論がいろいろされています。 特徴としては、生態系と経済系を融合したシステムを検討していることではないかと思います。
生物多様性経済学は、生物多様性に問題意識を集中しています。 筆者の知る限りでは、生物多様性経済学は環境経済学(狭義)の一部と考えれば良いようです。
順路 次は 外部性の内部化
環境経済学の参考文献は多いため、 環境経済学の本のページ にまとめてあります。