コンピュータは、0と1の組み合わせを使って、様々な計算をします。 より正確には、電気のONとOFFなどの現象を、0と1に当てはめて計算をしています。
量子力学が扱う量子にも0と1に当てはまる状態があるのですが、重ね合わせや、トンネル効果等、 量子特有の不思議な性質があります。
量子コンピュータは、量子の状態を作り出せるコンピュータの中に作り、 この不思議な性質を積極的に使うことによって、コンピュータの計算を劇的に改善しようとする技術です。
大規模な並列計算による、最適化計算に威力を発揮することが期待されています。 (最適化計算は、 多変量解析 、 シミュレーション 、 人工知能 等で、答えにたどり着くための重要な技術です。)
従来のコンピュータは、0と1の組み合わせが最初にあって、それをスタートとして最適な組み合わせを探します。
量子コンピュータも最終的に0と1の最適な組み合わせを見つけることは同じなのですが、 重ね合わせの原理を使うことで、 スタートがもっとあいまいな状態なところからになります。
従来のコンピュータでは、極小値が見つかった時に、それが最小値であるかはわかりません。 そのため、最小値ではないとしても、できるだけそれに近い極小値を探そうとします。
量子コンピュータの場合は、トンネル効果を使うことで原理的に最小値に行きつけるようになっているようです。
従来のコンピュータでも、確率をデジタルの数字で表現して扱います。 ひとつひとつの数値は0と1の組み合わせでできています。 そのため、見た目は「確率」というあいまいな状態を扱っているように見えても、 実際は、0と1の膨大な組み合わせをいじって答えを出します。
量子コンピュータは、ハード自体に量子の性質を持ったものを使うため、 確率的な現象を実際に発生させて、それを計算に使います。 ここにも、量子コンピュータの計算の速さの秘密があるようです。
「量子コンピュータが人工知能を加速する」 西森秀稔・大関真之 著 日経BP社 2016
量子ゲート方式が量子コンピュータの理論と考えられていた頃は、量子コンピュータの実用化は当分無理と考えられていた。
しかし、量子アニーリング方式の実用化が進めた会社があり、一気に現実的な技術とみなされるようになった。
エネルギーの分布から一番低い所を見つけるのは、量子アニーリング方式は従来と同じ。
従来の
アニーリング
だと、分布の山を乗り越えながら探し回って見つけるので、時間がかかるし、局所解になる事があるが、
量子アニーリングだと、トンネル効果によって、山をすり抜けて、一番低い所に行き着く。
量子アニーリング方式は、組合せ最適化問題にしか使えないもの。
しかし、巡回セールスマン問題のような従来から組合せ最適化問題と認識されているものだけでなく、
ディープラーニング
のモデル作りなどにも応用できる。
「よくわかる最新量子コンピュータの基本と仕組み」 長橋賢吾 著 秀和システム 2018
量子コンピュータの仕組みを簡単に説明した後に、応用の話に広がります。
様々なタイプの量子コンピュータの違いや、量子ニューラルネットワークやイジングモデルとの違いもあります。
利用形態として、期待されているのが、
クラスター分析
、
分子計算
、仮想通貨の世界の暗号。
分子計算に使う理由は、科学技術分野で行われる大規模なシミュレーションの計算に便利なためでした。
(量子コンピュータは量子の性質を使うので、
第一原理計算
に直接使えるようにも思いましたが、そういう使い方ではないようです。)
「絵で見てわかる量子コンピュータの仕組み」 宇津木健 著 徳永裕己 監修 翔泳社 2019
量子コンピュータの仕組みの話が中心です。
ビット、ゲート、回路、アルゴリズムと順に進みます。
順路 次は マテリアルズインフォマティクス・ケモメトリックス