「シックスシグマ」は、工程を改善するための運動の名前です。 「シックスシグマ」という名前は、 「不良品が発生するのが、シックスシグマ(6σ・標準偏差の6倍の意味)の外にしよう。」、 つまり、「不良品の発生を限りなくゼロにしよう。」というところから来ているようです。
シックスシグマは ISO にもなっていて、ISO13053です。
筆者は、全社的にシックスシグマを推進している会社で、実際にDMAICのプロセスを進めた経験があります。
シックスシグマは、改善活動をトップダウンのプロジェクト体制で進める形です。
QCサークル活動とも呼ばれ る小集団活動 が、Q(品質)以外のムダ取りなどの活動も含むのと同じで、 シックスシグマも品質以外のテーマを含むようになっています。 「リーンシックスシグマ」とも呼ばれます。
シックスシグマでは、改善のために使う手法群と、改善活動の推進体制の方法論がセットになっています。 改善の手順としては、DMAICやDMADVが使われます。 推進体制としては、ブラックベルトと呼ばれる改善の専任者が中心になる体制にしてあります。
シックスシグマの特徴として、「コンサルタントが入る」、「コンサルタントの役目を、社内から選抜されたブラックベルトが引き継ぐ。」、 等の、導入手順や、教育体制、担当者の地位向上も考えられている点があります。
シックスシグマにもQCストーリーと似たものがあり、DMAICやDMADVと呼ばれています。
QCストーリーには「QC(品質管理)」とありますので、製造業の印象が付いて回る名前になっています。 また、シックスシグマは、シグマ(標準偏差)の6倍の範囲のことなので、統計学に関係するような印象がある名前になっています。 しかし、いずれも問題解決や課題達成の手順として、かなり汎用的なものです。 製造業の会社の品質関係の話だけでなく、どの部門でも使えるような内容になっています。 また、製造業以外の会社でも役に立つような内容です。
DMAICは、 問題解決の手順 です。
主な違いは、DMAICのDMAで「定義・測定・分析」となっているところが、 問題解決型QCストーリーだと「テーマの選定・現状把握・要因解析」となっています。
DMAICはどちらかというと作業の流れになっていて、QCストーリーは論理の流れになっています。
「測定→分析」と「現状把握→要因解析」のいずれにしても、最終的にこの順番で説明できるようにはできますが、 実際に進める時は、「測定←→分析」と「現状把握←→要因解析」を同時並行で何度も行ったり来たりになります。 そのため、DMAICとQCストーリーの違いは、説明の順番の違いで、実際のやることの違いではない、と筆者は理解しています。
内容を理解する立場から考えると、論理の流れになっているQCストーリーの方が、わかりやすいと思います。
主な違いは、DMADVのDMADで「定義・測定・分析・設計」となっているところが、 課題達成型QCストーリーだと「課題の明確化・方策の立案・成功シナリオの追究」となっています。
課題達成の手順 にも書きましたが、DMADVは分析に基づいて方策を決めて行きやすい構成になっています。 課題達成型QCストーリーは、課題達成のためにやることが最初から決まっている場合は使いやすいです。
「コレならわかる シックスシグマ」 ダイヤモンド・シックスシグマ研究会 編著 ダイヤモンド社 1999
入門(ゆで卵の作り方の改善)、初級(通勤時間のばらつきの改善)、
中級(部品発注の改善)、上級(店舗の収益性の改善)の4段階に事例を分けで、シックスシグマの手順を理解できるようになっています。
上級編では、
QFD
や
実験計画法
も出て来ます。
「リーンシックスシグマ より早く確実に成果を出す最強の問題解決ツール」 眞木和俊 著 ダイヤモンド社 2012
2011年に、ISO13053としてDMAICが定められているそうです。
リーンシックスシグマとは、業務のムダ取りにシックスシグマの方法論を使うものです。
従来のシックスシグマは、その名の通り、「ばらつき」の改善を目的にして来ていますが、
リーンシックスシグマでは、「ムダ」を扱います。
シックスシグマの中の、ばらつきの改善のための方法論はあまり使わず、
DMAICのプロセスを使います。
方法論としては、社内外のVOCを起点に活動する事、業務フロー図を分析に使う事、効果は数値で表す事、が特徴と言えそうです。
改善のステップとして、DMAICの他に、DMADVも紹介されています。
「IMPLEMENTING SIX SIGMA」 Forrest W. Breyfogle III 著 WILEY 2003
85%くらいを使って、DMAICの各段階で使う手法について、体系的かつ詳細に説明しています。
残りは、業務の流れを扱うテーマである、リーンや
制約条件の理論
のテーマをシックスシグマの流れで行う話や、DMADVの話、シックスシグマの運営に話になています。
手法の概略は下記になります。
D:顧客の声の分析
M:概念のグラフ化、関係の情報のグラフ化(QFD(品質機能展開))、データの精度の評価
A:検定、推定、回帰分析
I:実験計画法
C:管理図、信頼性の評価
DMADVのツールとしては、TRIZや、21ステップのツール群があります。
「シックスシグマ」 Forrest W. Breyfogle III 著 三田昌弘 監訳 エコノミスト社 2006
上の本の日本語版です。
ちなみに、筆者は日本語版については、図書館でパラパラ見た程度です。
この本は英語の原著を古書で買って、読んでいます。(5分の1くらいの値段でしたので)
「シックスシグマ」 シビル・チョウドリ 著 翔泳社 2001
小説仕立てで、登場人物の会話から、シックスシグマを理解できるようになっています。
ピザ屋の改善事例が出ています。
「シックスシグマ 品質立国ニッポン復活の経営手法」 青木保彦・三田昌弘・安藤紫 著 ダイヤモンド社 1998
MAIC
について、やや詳しい説明がありますが、具体的な手法の説明はない本です。
シックスシグマの名前の由来である、「エラーやミスの発生確率が100万分の3.4回以下を目標にしている」とする点を、
シックスシグマの手法を取り入れた企業の目標であり、到達点として強調しています。
GE社での、シックスシグマの形態について、詳しく説明しています。
改善できる対象の大きさ等、シックスシグマが小集団活動よりも優れた点だけを、両者の比較に挙げているように見受けられますが、
小集団活動では自部署をなくすような改善はできない点等は同感でした。
「シックスシグマ導入プロジェクト 品質向上を実現させる新たなるアプローチ」 ジョージ・エッケス 著 岩崎尚人、神田良 監訳 日本能率協会マネジメントセンター 2001
日本のTQCを米国が取り入れることでシックスシグマが作られ、GE社で展開されるまでの話がよく書かれている本です。
MB賞
も、デミング賞と同じ問題を抱えているらしく、MB賞の基準だと優れていると判断されて受賞したものの、
経営上の問題を抱えている会社が多いそうです。
DMAICのMの部分を、「現状把握」して説明する本が多いように思いますが、この本では文字通り「測定(Measure)」の段階としています。
つまし、データを測定(収集)する段階です。
この次のAの段階で、このデータをAnalyze(分)することになっています。
シックスシグマが失敗する理由として、統計学への過度な期待や、コスト低減に傾倒してしまう点を挙げています。
「シックスシグマ・ハンドブック」 ト-マス・ピゼック、シックスシグマ研究会 著 日本能率協会マネジメントセンター 2001
4割が、シックスシグマの仕組みを社内で運営していく話で、残りが手法です。
手法は概念の説明が中心で、そんなに詳しくありません。
「シックスシグマ・ウエイ 全社的経営革新の全ノウハウ」 ピーター・S.パンディ 他 著 日本経済新聞社 2000
シックスシグマを使う組織体制の話が半分以上ある感じです。
SIPOCという名前の業務フローの分析手法を使った、業務フローの改善について、相当なページを使って解説しています。
この本の「測定」とは、現在のパフォーマンスの測定になっています。
上級のツールとして、
管理図
、
検定
、
回帰分析
、
実験計画法
、
FMEA
、ポカよけ、
QFD(品質機能展開)
が紹介されています。
「シックスシグマ・ブレイクスルー戦略 高収益を生む経営品質をいかに築くか」 マイケル・ハリー、リチャード・シュローダ 著 ダイヤモンド社 2000
6σの品質を達成するためのブレイクスルー戦略として、認識(Recoginize)、定義(Define)、測定(Measure)、分析(Analyze)、改善(Improve)、
管理(Control)、標準化(Standardize)、統合(Integrate)の8つを挙げています。
その中の中核が、MAICとしています。
この本のM(測定)は、測定システムの検討としています。
品質の測り方になっています。
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