制約条件の理論は、エリヤフ・ゴールドラット氏がまとめた、経営のための考え方や道具のことを言います。 制約条件の理論は、Theory Of Constraintsの日本語訳で、制約理論や、TOCとも呼ばれています。
制約条件の理論は、文字通りの「制約条件の理論」の他に、 「思考プロセス」や「スループット会計」も含んでいます。
一列になって行進している時、その隊列のスピードは、一番足の遅い人の速さよりも速くなりません。 ということは、一番足の遅い人のスピードが改善されれば、全体のスピードが上がります。
制約条件の理論では、一番足の遅い人を「制約」と考え、行進の理論を工程に当てはめます。 「工程の中の制約を見つけ、その部分の監視や改善を徹底的に進めよう。」、というのが、制約条件の理論です。
制約条件の理論で、一番時間のかかる工程を制約と考えるのは、わかりやすい例です。 この他に、会社の慣習や方針が会社の「制約」と考えることもあります。
会社の中の制約条件を見つけようとするのが、制約条件の理論の基本です。
制約条件の理論のアイディアは、 PERTのクリティカル・パス と似ています。
「部分最適でなく、全体最適をしよう。」、とはよく言われることですが、 全体のバランスを考えたりしないといけないので、簡単ではありません。
制約条件の理論は、制約条件の管理によって、全体最適を進めようとします。 全体のバランスを考えたりはしないので、何にでも当てはまる理論ではないと思いますが、 これはこれで全体最適の理論のひとつです。
思考プロセスは、制約条件の理論を実際に進めていく時に、 物事の考え方のガイドになるものです。 なぜなぜ分析 に近い道具がそろえられています。
思考プロセスの中には、対立する立場の人たちの対立を解消する方法もあります。 そのためには、それぞれの立場の人が持っている論理の中の前提条件を明らかにして、 それを解消します。
「全体最適の問題解決:「木を見て森も見る」最強の思考プロセス」 岸良裕司 著 ダイヤモンド社 2008
半分位が制約理論の中の思考プロセスの解説で、残りが経営論です。
・問題が何かを定義することが大事
・思いこみをなくすと、対立が解消する。
・足を引っ張っている工程が制約になる。ここの改善が全体を高める。
「エリヤフ・ゴールドラットの「制約理論」がわかる本」 中野明 著 秀和システム 2007
制約理論をコンパクトにまとめた本です。
・仮定をなくすと、対立がなくなる。
・現状問題構造ツリーは、なぜなぜ分析にandの概念が入っている。
TOCの評価尺度は、スループット、純利益、投資利益率の3つ。
・スループット = 販売額 − 原材料費
・純利益 = スループット − 業務費用
・投資利益率 = 純利益率 ÷ 在庫
・在庫 = 投資したお金
・業務費用 = 在庫をスループットに変えるのに使ったお金
「ザ・ベロシティ 製造業・起死回生のシナリオ」 ディー・ジェイコブ 他 著 ダイヤモンド社 2010
TOCLSSという名前のものを提唱していて、TOC、リーン(TPS)、
シックスシグマ
の3つを起源に持っているものとしています。
フレームワークを、SDAIS(Stratety:戦略、Design:設計、Acitivate:実行、Improve:改善、Sustain:持続)としています。
この本の前提として、過去の様々な方法論に共通して欠点として、それらが全体の改善を目指して、すべてに着手しようとしたという点を挙げています。
TOCLSSは、ベロシティ(速度)という書名にもあるように、着目べきポイントを直すだけで、全体のパフォーマンスをすばやく改善できる方法論としています。
本論のところは、小説として書かれていて、登場人物が苦労しながら、業務の改善を進める話になっています。
ほとんど文字の本です。
図が時々出てきて、全部で10枚くらいあるのですが、すべてが
連関図
と業務フロー図の両方の特徴を持ったような図になっていました。
因果関係の流れと、事象の流れがわかるような図になっています。
このような図を中心において、分析と改善を進めていく方法の本です。
「コストダウンが会社をダメにする スループット向上で全体最適」 本間峰一 著 日刊工業新聞社 2008
会社を良い方向に進めるためのシンプルで効果的な方法として、
制約条件の理論の中にあるスループットの考え方を紹介しています。
よく行われている管理会計の計算の仕方と、スループット会計の比較があります。
国、会社、部門、個人といった様々な立場で、スループットを重視した行動の重要さを説明しています。
「二大博士から経営を学ぶ デミングの知恵、ゴールドラットの理論」 ドミニコ・レポール、オデッド・コーエン 著 生産性出版 2005
デミングのは、事象の見方を明らかにしていて、ゴールドラットはツールや方法論を明らかにしているので、
両方を補完するようにして、実践していくのがベストと考えています。
具体的には、両者を融合した方法として、継続的改善のための10段階を提唱しています。
「企業価値創造の管理会計」 櫻井通晴・伊藤和憲 編著 同文舘 2007
第13章は、制約条件の理論の紹介です。
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