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TQC、TQM、その他

TQCは、Total Quality Control、TQMは、Total Quality Managementの略です。

世の中では、TQCやTQMの中身は、人によってまちまちです。 ただ、大きく分けると、日本のTQC、日本のTQM、米国のTQC、米国のTQMに分かれます。 その辺りのことと、TQCやTQMと名乗らないけれども、内容がとても似ている「シックスシグマ」等をまとめてみました。

Quality : クオリティ

TQCとTQMの違いは、「C(Control)」と「M(Management)」の違いで説明されることがありますが、 TQCとTQMの実態を考えると、この説明方法には無理があるように思います。 ここでは、「Q(Quality)」の意味の違いで説明します。

英語の「Quality Control」は、「品質管理」、と訳してきた歴史があります。この訳では
「Quality = 品質(品物の質)」
です。

日本のTQCやTQMでは、
「Quality = 質」
、という、もともとの訳を使って、「Quality」を製品以外の話にも使えるように広げています。 その上で、歴史的な「品質」という訳も使って、 経営の質を「経営品質」という呼び方をすることもあります。ややこしいです。

一方、米国のTQCでは、
「Quality = 製品の質と、製品に付随するサービスの質」
です。 製品の質だけの話の時は、
「Product Quality」
として、ただの「Quality」とは区別されています。 これもまた、ややこしいです。

米国のTQC

品質管理は、まず、不良品が社外に流出することを防止する必要性から、検査工程が重要になりました。

次に、検査工程に製品が来るよりも前の段階、つまり、品物を作る工程で、品物の質を良くしようとして来ました。 これが SPC です。 さらに、工程をさかのぼって行くと、 原料や購買品の品質が良いことも重要になります。 これは、源流管理と言われています。

ところで、顧客にとっての製品の良し悪しは、製品そのものの質だけでなく、 値段や、製品に付随するサービスも入ります。 そこで、このような製品の様々な側面についても配慮しながら、事業として利益も出そうということになって来ました。 これが米国のTQCです。 A.V.ファイゲンバウム氏が提唱しました。

このサイトでは、このページとは別に、 TQC のページがあり、米国のTQCについて詳しく書いています。

日本のTQC

日本のTQCは、 「会社のあらゆる部門で、仕事の問題をなくして、会社を良くしよう」という運動です。 会社の収益性や、品質(品物の質)の全体最適とは違う動きになっています。

日本のTQCでは、「社員全員がやるべき」や「あらゆる部門が関わるべき」と言われますが、 米国のTQCのように、必ずしも製品のためではないです。

Qは、「経営の質」と言われますが、ここでいう「経営の質」は、収益性等の経営指標ではなく、 各部門の業務の質(正確性、効率性、等)を指すことが多いようです。 また、これの達成手段は、方針管理や 小集団活動 の実施の度合いを指すことが多いようです。

日本のTQCの解説は、SPCの部分と、TQCになって加わった部分に分かれることが多いようです。 ほとんど後者の解説になっているものもあります。 「TQCになって加わった部分」というのは、 「方針管理」、「機能別管理」といった組織論、「5S」、「標準化」、「QCストーリー」、「小集団活動」といった方法論、 「PDCA」、「データ重視」、「後工程はお客様」といった思想です。

日本のTQCは、各部門やチームが自分の業務範囲を改善しようとする部分最適の動きを、 「方針管理」によって、全体最適になるようにしようとします。

米国のTQM

「TQM」は、米国で提唱されていますが、 米国のTQCの発展形かというと、そうではなく、日本のTQCを輸入して、使いやすいように作り変えたもののようです。

米国は、もともとトップダウンで会社が動くのが普通なため、 特に、小集団活動によって、ボトムの社員が主体的に改善を進める事の効果に注目し、 これを取り入れようとしたようです。

日本のTQCの表彰制度であるデミング賞を参考にして、 マルコムボルドリッジ国家品質賞(MB賞) を作っています。

シックスシグマ

TQCやTQMは、品質を作り上げて維持するための、組織の話になっています。

その中には品質を改善するための活動が含まれていて、 日本では、「 小集団活動 」や「QCサークル活動」と呼ばれています。 英語だと「Teaming(チーム活動)」と呼ばれています。

シックスシグマ は、プロジェクトとして品質を改善するための方法について、組織の作り方、手順、道具などをまとめたものになっています。 やっていることは、小集団活動と似ているのですが、扱うテーマの種類やメンバーの多様性などが、小集団活動とは異なっていて、相補的な関係になっています。

シックスシグマの文献の中で、「シックスシグマはTQMの新しい形」というような書き方を見かけたことがあるのですが、 シックスシグマは、TQMのような体制が土台としてできている中で進めるものになっています。

日本のTQM

1996年に、日本では、「TQC」という呼び名を「TQM」に変更することが発表されました。

日本のTQCは、1980年代の後半に、批判する本がたくさん出ています。 公の場でTQCを批判することができるようになったのが、この時期のようですが、 当事者の中では、もっと早い時期からわかっていたことだと思います。 批判のポイントは、TQCの実用性への疑問と、関係者の言動による害が中心のようです。

日本のTQCは、個別の手法や、物の考え方の盛り合わせであり、体系的な方法論や、 規格 ではありませんでした。 そのため、体系的にまとまっているシックスシグマや、品質のマネジメントの世界標準である ISO9001 は、日本のTQCの存在を脅かす存在になったようです。 TQCからTQMに変更した直接の理由は、日本のTQCの実態と「TQC」という名前が合っていなかったことのようですが、 こうしたことも、呼び名を変更する理由だったようです。

名前を変更した時点では、名前が変わっただけで、日本のTQMは、日本のTQCと同じものでした。 その後も、従来のTQCと内容が変わらないものが、「TQM」と呼ばれていることも多いです。 一方で、手法のウェイトを変えたりして、TQMを再定義しようとする方もいらっしゃいます。

質の経営(新しい流派)

「総合質経営」、「質マネジメント」として、Qを「質」と訳す流派があります。

この流派では、日本のTQCの後に重要視されるようになったもの(ステークホルダーや、ISO9001)を取り入れて、 それらをすべて包含するようにTQMを作り直しています。

日本経営品質賞(他の流派)

日本経営品質賞 は、米国のTQMのMB賞を元にしていて、 MB賞は日本のTQCのデミング賞を元にしています。 しかし、日本経営品質賞の流派では、その活動を「TQM」と呼ぶことはないです。

このコミュニティでは、中心を経営の質にしていて、手法は組織論が中心になっています。 TQMでは、製品の質を管理するための仕組みや統計学の話がありますが、そのような話には触れないようになっています。

また、TQMでは、製品の管理をするために、現状の安定化や改善を重要視してきた経緯がありますが、 このコミュニティではそのような点はあまり重要視していません。 その代わり、組織の変革や、そのための風土のあり方を重要視しています。



環境経営

経営工学(経営科学)

手法の使い分け


参考文献

米国のTQC

米国のTQCの参考文献は、 TQC のページにあります。


日本のTQC

全社総合品質管理 TQCの導入と推進」 水野滋 著 日科技連 1984
TQCは、「みんなで共通な目的をもってやるQC」になっています。
扱っているのは、製品そのものの質と、業務の質、設計の質、製造の質です。 製品に付随するサービスや、マーケティングは対象外です。
品質保証やクレーム対応の話が多めです。


日本的品質管理 TQCとは何か」 石川馨 著 日科技連 1981
品質保証の全社的な全体最適を目指しています。
そのための方法は、購買管理やQCサークルになっています。


新おはなし品質管理」 田村照一 著 日本規格協会 2001
データの取り方や、 QC7つ道具 を中心に説明しています。
「顧客の満足する品質又はサービスを提供するためには、製品に直接関わらない部門の仕事の質や、人の質を上げることの必要性が重要視されるようになり、 そのための手段として、製品の質を良くするための手段が役に立つことがわかって来た。」 、というのが、SPCからTQCへの流れとしています。


品質管理がわかる本 企業体力をつける 品質向上のための基礎と問題解決力が身につく」 佃律志 著 日本能率協会マネジメントセンター 2007
「不良の正体はバラツキ」としています。
「TQCの基本は、 小集団活動 」としています。
統計、検査、問題解決法、QC7つ道具を解説しています。
著者は、現場を実地で調査することを「現場主義QC」と呼んでいて、これを重視しています。


品質管理」 朝香鐵一 他 著 日本規格協会 1988
SPCの話が多いのですが、全体の2割ほどがTQCの話になっています。 業務の問題の解決、製品のばらつきの減少、様々な欠点の防止をしていくのが、TQCとしています。
この本のTQCは、社長や部課長の役割の話が特徴です。


TQCの基本」 朝香鐵一 著 日本規格協会 1983
「社長が会社の各所を診察」、「部課長の役割」、「営業が喜ぶ品質を目指す」といったことに重点が置かれています。
この本をコンパクトにまとめた内容が、同著者の上記の本のTQCの解説になっています。


QC・TQCの知識」 松田亀松 著 日本実業出版社 1995
QCは品質(製品そのものの質)に対する活動であり、TQCはコストや納期等も総合的に効率化するものとしています。
「QCサークル活動をするのがTQC」とは書いていないのですが、 そう思ってしまうほど、QCサークル活動の解説に重点が置かれています。


TQC活動入門」 石原勝吉 著 日科技連 1986
TQCとは、「それぞれの部門に与えられた仕事を確実に実行していくこと」になっています。


TQCその成長と将来」 鉄健司 著 日本規格協会 1993
TQCの歴史の本です。
業務の管理(監視)が重視されています。
製品に対しての各部門の役割を見ているところもあります。


日本的経営の興亡 TQCはわれわれに何をもたらしたのか」 徳丸壮也 著 ダイヤモンド社 1999
・この本は、デミング賞の受賞企業の倒産や、TQCに関わる人の自殺の話が書かれている本として、 紹介されているのを数回見かけたことがあります。 そうしたショッキングな話だけでなく、 もっと根の深い、どろどろした話を綿密な取材の元に、扱っています。
・TQCを猛烈に批判している本です。 国際競争や経営には貢献しない点、 本業をおろそかにしてでも「完璧な報告」にこだわる点、 社外からの呪縛によって社内が沈滞する点、 非常に威張っている指導者がいる点、等が、批判のポイントのようです。
・この本は、TQCについての批判をしていて、 「TQMはTQCに取って変わったもの」という書き方になっていますが、 TQMがどのようなものであるのかについては、ほとんど触れていません。
・TQCの二本柱は、デミング賞とQCサークル。 前者が経営者向け。 後者が一般社員向け。
QCサークルは、末端社員が品質管理の知識を持ち、改善に主体的に動くという点で、海外ではカルチャーショックになるほど。 海外では、品質管理は専門家が主導するのが通例。
・「TQC」は、日本で紹介された当初から、「みんなでやる品質管理」と訳され、 ファイゲンバウム氏の理論ではなく、日本流の理論がその内容として紹介された。
・TQCは、「社内のあらゆる質の管理」の手段ということになっています。
・「TQC」の名前にもある「全体的に」という点は、方針管理が手段になっています。
・TQCの対象にコストダウンが加えられたことで、 改善活動は、改善した人が仕事を失うことにつながる活動にもなってしまった、としています。
品質工学 は、具体的な内容までは説明されていませんが、 TQCのように経営の手法ではなく、製品の技術開発の手法として説明されています。



日本のTQC その再吟味と新展開」 木暮正夫 著 日科技連 1988
「組織の管理」として、TQCを見ています。
従来のTQCは守りには強いが攻めには弱い、としています。
新しいTQCとして、SMTQC(TQC for Strategic Management)を提唱しています。 「全社」よりも、「事業単位の連合」という風にして、TQCを進めます。


これでいいのかTQC 人間主義のTQC=再構築への提言」 鎌田勝 著 日本実業出版社 1985
QCサークルの良い面を、特に大事に考えていらっしゃいます。
いろいろなTQCの定義が説明されている中に、ファイゲンバウム氏によるものは入っていませんでした。
TQCが良くない理由として、「権力的」、「活動に労力のかけ過ぎ」、「デミング賞」、等を挙げています。


TQC神話との訣別 ホンネの国際化をめざして」 佐々木尚人 著 中央経済社 1989
社会科学の立場で書かれています。
QCサークルの延長がTQCになっています。
TQCの全体像についての話にはなっていませんでした。


米国のTQM

TQM practices and organizational culture :Japanese versus American perspectives」 Jonathan W. Pinner 著 UMI 2004
TQMの要素(TQM Dimensions)として、
・マネジメントサポート(Management Support)、
・顧客(Customers)、
・改善(Improvement)、
・管理(Supervision)、
・サプライアーとの関係(Supplier Relasionship)、
・データの利用(Use of Data)、
・従業員の提案(Employee Suggestions)の7つを挙げています。
また、組織文化の要素(Organization Culture Dimensions)として、
・社会的つながり(Social Cohesion)、
・革新性(Innovation)、
・信頼(Trust)、
・コミュニケーション(Communication)、
・仕事のチャレンジ(Job Challenge)の5つを挙げています。 この本は、これらの要素について、米国と日本を比較した本です。 米国の方が勝っているという内容のようです。
アイコンタクト(eye contact)の意味の違い等の、日常的な文化の比較の話もあります。


TQM America :how America's most successful companies profit from total quality management」 Eric E. Anschutz 著 McGuinn & McGuire 1995
日本語のKAIZEN(改善)、KANSEI(完成)、HOSHIN(方針)がローマ字で登場しています。 この本は、日本のTQMでよく言われるテーマに、著者が概念を追加しています。
・KAIZEN(改善)にReengineering( リエンジニアリング )を追加
・HOSHIN(方針)にVision(ビジョン)を追加
・MANAGEMENT(マネジメント)にLeadership(リーダーシップ)を追加
改善の目標を見つけるために、先人に学ぶ方法として、ベンチマーキング(Benchmarking)を挙げているところが珍しいです。


シンガポール航空・TQM戦略のすべて 最高のサービスを追求する総合的品質管理の実践」 チャン・ジェフユン、ヨン・ウィヨン、ローレンス・ロー 著 実務教育出版 1999
TQMが成功したかどうかは、顧客満足で判定するとしています。 成功に必要なのは、システム設計と、継続的改善としています。
この本では、TQMのシステムの具体的な内容として、シンガポール航空社の組織体系、業務、思想、がどのようになっているのかを解説しています。
統計学を使いこなすというよりも、システム設計とその運用で成功しているようです。
「顧客満足を中心に考える」とは、よく言われることですが、多くの会社では、実際の顧客満足度はよくわからない(測定できない)ことが多いと思います。 この会社は、個々の顧客と直接接するので、そこにTQMの思想や方法論がぴったり当てはまって、うまく行ったのだと思いました。


日本のTQM

TQM品質管理入門」 山田秀 著 日本経済新聞社 2006
この本は、従来のTQMへの誤解にも配慮しつつ、時代に合わせた形でまとめています。
TQMの要素は、行動指針と基本的考え方(PDCA、プロセスで作り込む、応急と再発防止、データで語る)、 実践ツール(5S、標準化、改善ステップ、QC7つ道具、統計的手法)、 推進ツール(QCサークル、方針管理、日常管理、機能別管理、トップ診断)、としています。
「TQMは、組織全体で、製品の品質、サービスの質を向上させる活動」としています。
また、製品の質やサービスの質以外では、経営の質を改善するものではないとしています。
「よいものを作るとコストが下がる」という説明で、品質コストを解説しています。 「より上流段階で失敗を見出した方が総合的なコストは小さくなる。」、例えば、内部失敗コストよりも、外部失敗コストの方が、 はるかに大きいことを挙げています。


品質管理の基本がわかる本」 今里健一郎 著 秀和システム 2013
様々な手法や考え方をコンパクトにまとめています。 総合的な品質を、QCDSとしています。Qは商品やサービスそのものの質。Cがコスト、Dが納期、Sが安全です。
TQMは、「総合質経営」と訳してます。


TQMの考え方とその推進」 光藤義郎 著 日科技連 2014
時代に合う形に、現代のTQMを直しています。後半は、TQMを推進するための指南書になっています。
品質保証を重視したTQMになっています。 方針管理はそれほど強調されていないですし、QCサークル活動は、まったくと言って良いほど解説されていません。


図解基礎からわかる品質管理」 市川享司 著 ナツメ社 2011
第1章が概論、2、3章が品質保証、4章がヒューマンエラー、5〜8章が改善活動、という構成です。
TQMは、「総合的品質管理」と訳されています。 品質管理は、時代の変化によって求められる期待が高まった、としています。
「TQM」の内容として特に書かれているのは、日常管理と方針管理です。


図解 よくわかる これからのTQM」 山田正美 著 同文舘 2006
TQCは、ボトムアップで各部門の最適化(部分最適)を目指すもので、 TQMは、トップダウンで経営全体の最適化を目指すものとしています。 TQMは経営品質の向上のための手段としています。
小集団活動をTQM活動の最小単位として位置付けています。


品質管理」 久米均 著 岩波書店 2005
「TQMは、設計からアフターサービスにいたる各工程が完全に行われることによって、顧客の満足する品質を実現するもの」と書かれています。 この本には、統計的な方法以外の解説があまりありません。


TQM推進のための手引」 久米均 著 日本規格協会 1997
TQMの導入をまとめた本です。 方針管理がきちんと実施された事の確認方法として、経営トップによるトップ診断を挙げています。


品質経営入門」 久米均 日科技連 2005
品質経営は、経営品質、業務品質、商品品質を向上させるものとしています。
この本では、従来のTQMに、経営革新や経営戦略、ISO9000を加えたものを「品質経営」としています。


品質経営システム構築の実践集 :エクセレンス経営モデルのノウハウを公開」 細谷克也 編著 日科技連 2002
題名からはわかりにくいかもしれませんが、半分は日本のTQMで、残りが品質保証体制の解説です。 体系的によくまとまっています。


進化する品質経営 事業の持続的成功を目指して」 飯塚悦功 他 著 日科技連 2014
事業とは、顧客価値の持続的な提供です。 そのための方法が、TQMやQMSとしています。
全般的に事例で説明する形になっています。


トヨタの「頭脳」が挑んだ最強のTQM」 荒賀年美 著 実業之日本社 2002
「TQMの導入」がほぼイコールで、「方針管理の導入」になっていました。 方針管理を非常に重視しています。


品質管理 49(8)  21世紀の新しい品質」 A.V. Feigenbaum. 著 日本科学技術連盟 1998.08
「Total Quality Control」の第3版から、TQMが加わっているそうです。
品質コストの理解が、原価や会計の改善につながる話が印象に残りました。
論文全体の主旨がわからないのですが、活力や熱意の重要さを主張したいように読みとれました。


品質管理 47(12) 21世紀をめざす品質の創造と改革」 A.V. Feigenbaum. 著 日本科学技術連盟 1996.12
会議の総括がファイゲンバウム氏によってされています。
この会議では、品質のマネジメントだけではなく、マネジメントの品質についての議論があったことについて、 こうした議論はリーダーシップを形成していくのに重要、としています。
前の時代では、テクニックの寄せ集めだったが、今は、データベースを使ったシステマティックな方法論が大事、としています。


総合質経営

ISOからTQM総合質経営へ ISOからの成長モデル」 超ISO企業研究会 編著 日本規格協会 2007
「TQM総合質経営」というものを理想状態にしています。 TQM総合質経営は、製品とサービスの質が扱う対象で、「総合マネジメント」が扱う方法としています。 組織や経営システムの質は、製品やサービスの質が向上すると、副次的に向上するそうです。 (この本の中では、主な対象としているものが、「製品とサービスの質」と読みとれる部分と、 「マネジメントの質」と読みとれる部分があるように思うのですが、よくわかりません。) 従来からの品質管理の分野では、顧客満足を重視しますが、それにステークホルダーの満足も加えています。
ISO9001がレベル1で、TQM総合質経営がレベル4としています。 これらの中間レベルも定めています。 レベル4は、JIS Q 9005に対応しているそうです。
この本の内容は、
ISO9001 + 従来のTQM + α = これからのTQM
と言えそうです。
ISO9001の体系を元にして、その体系を QC7つ道具 等の、従来のTQMで言われて来た事や、 「ステークホルダー」といった近年に重視されている事で補うことによって、 「ISO9001を超えるもの」を作っています。 要は、「TQM」がISO9001以上のものになるように、TQMが再定義されているようです。
筆者はこの本を読んで、「TQMって何だったけ?」と、最初混乱したのですが、 この本のTQMと、比較的古い文献のTQMの違いは、このように解釈すれば良いと思っています。


競争優位の品質マネジメントシステム  TQM総合質経営に向けたセカンドステップ!」 超ISO企業研究会 編著 日本規格協会 2008
上記の本で示された各レベルでの取り組みを、平易に説明しています。


TQM 21世紀の総合「質」経営」 TQM委員会 編著 日科技連 1998
TQCからTQMになって変わったこととして、「顧客」から「ステークホルダー」になったことや、 「製品・サービス」から「経営システム」になったことを挙げています。
マルコムボルドリッジ国家品質賞やISO9000よりも、日本のTQMが勝っていると解説しています。


日本経営品質賞

日本経営品質賞 を中心とした流派には、「TQM」や「シックスシグマ」というような名前がないようです。


経営品質の理論 実践との相互進化を求めて」 寺本義也 他 著 生産性出版 2003
「経営品質は、顧客視点からの経営全体の質」と、まえがきにあるのですが、 「顧客が、その会社の経営全体の質を気にするようなことは、あったとしても稀なのでは?」、と思いました。 この本でいう「品質」には「 ブランド 」のようなイメージがあり、その延長として、経営品質の議論につながっているようです。
マルコム・ボルドリッジ賞(MB賞)が、日本のデミング賞の影響で作られています。 MB賞が、リーダーシップ、顧客志向、従業員の参画、プロセス、事実、といったものを重視することが書かれています。 これは、日本のTQCで言われていたものですから、もともとのアイディアは日本にあると思うのですが、 この本では、日本経営品質賞の内容の由来は、MB賞になっています。 経営品質の評価制度は、従来の日本のTQCの弊害(権威主義、精神論重視、財務軽視、等)を繰り返さないように設定されています。


経営品質入門 効果的なセルフ・アセスメントの実践」 岡本正耿 著 生産性出版 2007
「経営品質 = イノベーションを誘導・促進するための能力水準」としています。
経営品質にとって、セルフ・アセスメント(その会社自身による自己評価)は大事なもの。 リーダーシップ、戦略、顧客理解、各社員の仕事に対する姿勢、といったものを評価します。


図解TQM 「経営品質」の高め方」 新将命 著 日本実業出版社 1998
主に経営論になっています。
デミング賞の功罪として、「何を作るか」ではなく、「いかに作るか」を重視して来たことを挙げています。 また、マーケットインではなく、プロダクトアウトが重視されて来たことも挙げています。
TQMの推進は、日本経営品質賞の審査基準を参考にすれば良いそうです。 この本では、フィリップス社の事例が多いです。


日本のTQM(その他)

未来質管理のすすめ TQCだけでは生き残れない」 徳谷昌勇 著 ダイヤモンド社 1986
リスクマネジメントを「未来質管理」と呼んでいます。 システマティックに各部門が動いて、リスクに対応していくあたりは、TQCと考え方が同じでした。
TQCは「現在質」を扱っていて、リスク管理が弱い、としています。 TQCはプラス面のサイクルを回そうとする。 未来質管理は、マイナス面とプラス面の両方。


技術者の意地 続 (品質工学と品質管理の融合)」 長谷部光雄 著 日本規格協会 2013
この本では、
TQM = 品質管理 + 品質工学
となっています。 この本の「品質管理」は、「生産活動の管理」を指していて、 SPC と同じような意味合いです。
品質工学は、製品や生産方法の設計の手段としています。



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