製造業において、「標準」という言葉はよく出て来ます。
製造業において、「標準化」という言葉は、大きく分けて2種類あります。 データサイエンスの手法と、ビジネスのルール作りの2種類です。 これらは、まったく違う場面で使われます。
データサイエンスの手法というのは、 標準化と正規化 のところにある話で、データの加工方法の一種です。
ビジネスのルールが「標準」と言われることがあり、これを作る作業が「標準化」です。
このページの以下は、ビジネスのルールとしての標準の話です。
ビジネスのルールとしての標準については、さらに2種類に分かれます。 社外とのルールとしての標準と、社内のルールとしての標準です。
社外とのルールとしての標準は、規格があります。
社内のルールとしての標準は、例えば、「作業手順書」といったものは標準の一種です。
社内のルールとしての標準は、社外とのルールとしての標準が元になることもあります。
例えば、製品の検査の方法として、社内の標準を作りますが、測定する方法が規格として決まっていることがあります。
こういった場合は、規格に書かれている内容とは合っているようにしつつ、書かれていない内容で必要なことを追加して作ります。
環境や品質の分野では、規格が重要です。 国際規格のISOや、日本の規格のJISがあります。 ちょっと調べただけでも、 このサイトの環境と品質のページで取り上げた様々なものが、 取り上げられています。
確かに、ネジの規格が決まっていると、「元はA社のネジを使っていたが、B社のネジでも代用できる」となるので、 社会的な意義は非常に大きいです。
規格が重要視され、企業の戦略のひとつに数えられる理由としては、下記があります。
ISOとは、ISO(国際標準化機構)の定める国際標準です。 歴史的には、モノや試験方法等のISO規格が古いです。
システムの規格も増えています。 マネジメントシステムのISOの場合、認証の対象は組織になります。 会社のPRで見かける「ISOの認証取得」とは、 「国際ルールに沿っている組織として、認めてもらっています。」 という意味になります。
社外のルールとしての標準がある場合、それを社内で徹底するために社内用の標準を作ることがあります。 SR (CSR) や コーポレントガバナンス の手段になります。
社内のルールとしての標準には、社外のルールに合わせる以外の使い道があります。
標準は必要で、利点もありますが、良いことばかりでもありません。 デジタルトランスフォーメーション(DX) の着眼点のひとつかもしれません。
「標準化ビジネス戦略大全」 江藤学 著 日経BP日本経済新聞出版本部 2021
標準化とビジネスについて、歴史的なことから、最近の傾向まで、まとめられています。
筆者が知らなかった話は、例えば下記になります。
・特許活動は技術を閉じる活動で、標準化は技術を解放する活動で、本来は両輪のような性質だが、特許技術が標準化の内容に含まれることがあり、
それを自社の強みとして利用する企業がある。
・お米は標準化されている、つまり、どんなお米も同じと仮定して、どんなお米でも美味しく炊けるように開発されるのが一般的な炊飯器。
アイリスオーヤマ社の炊飯器は、お米は標準化されていないことに着目して、銘柄に合わせて、美味しく炊けるように開発されている。
しかも、低価格帯の商品として販売している。
・標準があり、標準を中心とした市場ができていても、顧客にとってメリットがあるビジネスができれば、顧客はそちらに移る。
その例が1000円カットの散髪業。
・かつては、標準を作ることで、「敵に勝つための仲間づくり」を進めた。今は、「敵をつくらない仲間づくり」として、標準が利用される。
これをするには知的財産の共有が必要。
・20世紀までは、標準化は標準化機関が時間をかけて作るものだった。
21世紀になると、市場のスピードに標準化機関が追いつかず、複数の組織がデフェクトスタンダードの獲得を争うことが中心になり、
標準化機関はその追認になってきた。
さらに近年では、デフェクトスタンダードができる前に、技術が次の世代に代わり、技術の変化に標準が追いつけなくなってきている。
・「ユースケース」は標準の一種。柔らかい標準と言えるもので、技術の普及に役立っている。
「サービス業の標準化 サービス化する経済にこそ標準化の活用を」 大芦誠 著 日本規格協会 2013
サービス業の標準化には、すでに成功例があり、コンビニやハンバーガーチェーンがあります。
一方で、標準化のメリットがありそうなのに、まだ標準化が進んでいない分野がある、としています。
「水ビジネスを制するための標準化戦略」 滝沢智 監修 日本規格協会 2012
水のビジネスの現状、標準化の一般的な説明、水ビジネスにおける標準化の現状という流れで説明しています。
ISO24510シリーズが飲料水や下水道の事業活動の標準。
水ビジネスは、歴史が非常に長く、国によって違いがある一方で、ビジネスとしては国を超えた活動になっています。
そのため、ビジネスの内容や、言葉を標準として定めることは、非常に意義が大きいようです。
「国際標準化と事業戦略 日本型イノベーションとしての標準化ビジネスモデル」 小川紘一 著 白桃書房 2009
主にパソコンやDVDについて、標準化を巡る各社の動きが書かれています。
「人的資本経営 企業価値創造を実現する」 吉田寿・岩本隆 著 日経BP日本経済新聞出版 2022
人的資本経営のデータの標準化として、ISO30414を紹介しています。
「無印良品の業務標準化委員会 働く人が仕事を変え、オフィスを変え、会社を変える」 良品計画 著 誠文堂新光社
業務標準化委員会という組織の紹介をしています。
「標準化」の対象は、業務だけでなく、あいさつなどの社内での行動も入っています。
みんなが同じ行動をするということよりも、良い行動をみんなで盛り上げる、という感じの活動をされています。
また、この標準化の活動は、働きやすい職場、気持ちの良い職場の変えて行くための改善活動とセットになっています。
「入門物流<倉庫>作業の標準化 バラツキを減らし、ムダとミスをなくす!」 鈴木邦成 著 日刊工業新聞社 2020
標準化の原則は、分類化、単純化、統一化、見える化。
ガムテープの貼り方など、倉庫の具体的な作業について、標準化の例がたくさん紹介されています。
順路 次は ESGとコーポレントガバナンス