トップページ | ひとつ上のページ | 目次ページ | このサイトについて | ENGLISH

ESGとコーポレートガバナンス

ESGは、Environment(環境)、Society(社会)、Governance(統治・ガバナンス)の略語です。 これら3つは同列ではなく、「環境と社会のため統治」が、その内容になっています。

ESGのGの部分は、「コーポレントガバナンス」とも呼ばれます。 コーポレントガバナンスは、EやSと関連付けて語られることもありますし、単独で語られることもあります。

コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスは、もともとは、企業の収益の向上を目指して、会社における株主や取締役会のあり方を定めていく活動とされて来たようです。

株主や取締役以外の関係者(ステークホルダー)について、考えられていなかった訳ではないですが、 こちらについてもコーポレントガバナンスの観点で重要視されるようになって来たのが、歴史的な流れのようです。

筆者の経歴と、コーポレントガバナンスの分野はけっこう離れているのですが、 データマネジメント がつなぎになっているようなので、大いに関係があると考えています。

ESG

ESGには、「環境や社会の持続可能な発展と共存するためのガバナンス」という意味がこめられていることが多いようです。

収益を出すために直接的に必要な ビジネスモデル の部分だけでなく、その周辺との良好な関係や、ビジネスモデル自体が環境や社会の持続可能な発展につながるものになっているかどうかが、 ポイントになっています。

環境経営

ESGの文献を見ると、歴史的には、ESGに先立つものとして、 CSR が説明されていることがあります。

ESGの文献に「環境経営」が出ることはないようなのですが、「環境経営」もESGに先立って議論された経営論です。

環境経営は、「環境問題に企業がどのように向きあうか?」、ということで検討されて来たものです。 環境品質環境効率環境マネジメントシステム 等が話題になっています。

ESGやコーポレントガバナンスの関係性

いろいろなキーワードの関係を図にしてみました。
ESG


参考文献

ESG

SDGsとESG時代の生物多様性・自然資本経営」 藤田香 著 日経BP社 2017
大企業が、自身の事業活動と関係の深い領域に対して、保護や共存を進める活動の事例集になっています。


ESG財務戦略 SDGs時代を勝ち抜く」 桑島浩彰・田中慎一・保田隆明 著 ダイヤモンド社 2022
ESG経営で先駆的と評価されているグローバル企業の取り組みを、日本企業に紹介する内容になっています。


ESGの視点 環境、社会、ガバナンスとリスク」 勝田悟 著 中央経済社 2018
環境問題と、それに関係した社会の動向の、事例集のような内容になっています。


ESGがよくわかる本 企業経営の必須知識」 森尚樹 他 著 秀和システム 2022
最初の1/4が、ESG投資についてで、残りが環境問題や社会問題の動向について


SROIとインパクト評価が社会を変える SDGs・ESG時代の新たな経営戦略」 加賀裕也 著 みらいパブリッシング 2021
SROIは、Social Return on Investmentで、社会的投資収益率です。
SROI = プロジェクトの社会的成果の金銭的価値 / プロジェクトに投入された総額
この本は、SROIをESG投資の指標として紹介し、事例を多く紹介しています。
SROIの難しいところは、時間的な価値の変化の扱い方


コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスの基本」 手塚貞治 編著 日本実業出版社 2017
コーポレントガバナンスが必要な理由として、エージェンシー問題を挙げています。 エージェンシー問題とは、お金を出す人と、実行する人が異なっていて、両者に利益の種類が異なることが原因になって起こる問題です。
この本では、他のコーポレントガバナンスの本にあるような株主との関係の話はあまりありません。 社外取締役の役割や実態の話はありますが、少なめです。
従業員、消費者、債権者も重要なステークホルダーで、それらとの良好な関係が、会社の健全性の維持に必要であるとしています。
また、 CSR がコーポレントガバナンスに大事な観点としています。
最終章がCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)です。 CSRは、事業活動にプラスアルファの形で進めるものになって来ますが、CSVは、本業自体を社会的価値に向けた活動にしていきます。 CSVは、ステークホルダーの利益と一致する活動になる点で、コーポレントガバナンスととても関係の深いものになっています。


コーポレートガバナンス・コード」 堀江貞之 著 日本経済新聞出版社 2015
コーポレントガバナンス・コードは、政府が定めた企業の収益力向上のためのフレームワーク。
対象としているのは、株主とのあり方や、取締役会のあり方、その他のステークホルダーとのあり方。


最新コーポレートガバナンスの基本と実践がよ〜くわかる本 事例に見る日本の企業統治の現在」 清水三七雄 著 秀和システム 2018
7割くらいがコーポレントガバナンス・コードが項目ごとに解説されています。 コーポレントガバナンス・コードの解釈ではなく、文言自体を重視した感じです。


ESG経営を強くするコーポレートガバナンスの実践」 松田千恵子 著 日経BP社 2018
コーポレントガバナンス・コードが登場したことで、これに合わせようとする人が多いものの、 本質的な部分の理解に基づいた活動にはまだなっていないとして、理解を深めるための説明をされています。
「コーポレントガバナンスの本質を考える」、「株主は何を考えているのか」、「ステークホルダーとどのように付き合うか」、 「なぜ情報開示がそれほど重要なのか」、「取締役会の実効性をどう担保するか」の5章で構成されています。
ESGの特にG(Governance:ガバナンス)についての本でした。 第3章の「ステークホルダーとどのように付き合うか」の最後の方で、企業の社会的価値に触れ、 そこからCSR、CSV、ESG、SRI、SDGsについて、経緯や現状について解説しています。


コーポレート・ガバナンス「本当にそうなのか?」  大量データからみる真実」 円谷昭一 編著 同文舘出版 2017
定説に対して、データで検証を進めています。 中期経営計画の是非や、自己株式取得の実際などもありますが、ページ数としては役員に関するものが多めです。


環境経営

環境経営入門」 岡本眞一 編著 日科技連 2007
環境経営に関わる様々な項目を、事典風にまとめています。 このサイトの項目と重なるのは、 環境経済学環境会計ISO14000シリーズLCA です。


環境経営の分析」 金原達夫・金子慎治 著 白桃書房 2005
諸説の展開の解説があります。


実践環境経営論」 堀内行蔵・向井常雄 著 東洋経済新報社 2006
環境経営には、ISO14001等の 環境マネジメントシステム (Environmental Management System・EMS)が必要で、 EMSにはリスクマネジメントが重要としています。 方法論として、 LCA・環境適合設計・環境ラベル・環境会計・環境報告書・環境情報システムが出てきます。 スウェーデンの環境NGO「ナチュラル・ステップ」の提言や、 デシモン=ポポフ=WBCSDの提言について


エコロジカルな経済学」 倉阪秀史 著 筑摩書房 2003
環境経済学 の本ですが、環境経営の重要性を指摘しています。


環境問題の経営学」 高橋由明・鈴木幸毅 編著 ミネルヴァ書房 2005
歴史や指標について触れた後に各論になります。 各論は、企業分析(リコー等)・ごみ問題(エコセメント)・NPOの運営課題等です。


環境格付けの考え方 −環境格付のステークホルダーと評価理論−」 環境格付プロジェクト 著 税務経理協会 2002
環境格付の意義や、社会的背景を論じてます。


ステークホルダーと、会社の利益の関係

管理会計がうまくいかない本当の理由 : 顧客志向で売上を伸ばす新アプローチ」 金子智朗 著 日本経済新聞出版社 2011
管理会計 の問題を挙げつつ、経営全般について、いろいろとコメントしている本です。
損益計算書は、ステークホルダーへの富の分配プロセスを示している。 現在は、一番下に来るのが当期純利益。当期純利益は株主のもの。 一番下にあると、株主の利益を最大化しようと特に思わなかったとしても、 これを最大化しようとする意思がはたらくようになる。
当期純利益の最大化は、株主以外のステークホルダーのためにはならない。 従業員が会社に不満があるような会社に、顧客が満足を感じる訳がない。 会社にとって重要なのは、まず従業員。 当期純利益の最大化は、人件費を削ることにもなりかねないが、これは従業員の不満になる。
・損益計算書は、中世に、貴族の利益を計算するために作られたもの。 その頃と変わっていない。 貴族が株主だった時代は、株主がその会社に対して思い入れがあったので良かったが、 現在は、金儲けだけが目的の、通りすがりの通行人のような人が株主になっている。


SDGs

経営戦略としてのSDGs・ESG “未来から愛される会社”になって地域×業界No.1を目指す」 白井旬 著 合同フォレスト 2022
SDGsを現代の方針を示す象徴的なキーワードとして紹介している感じでした。
かつての CSR とSDGsは似ていて、企業の中には、本業とは離れたボランティア活動を、SDGsと理解していることがあるそうです。 SDGsは、本業を通じた社会的課題の解決のための活動として説明しています。 また、企業側にはSDGsに対しての誤解がある一方で、就職活動をしている学生側は、「本業を通じた」という点を正しく理解しているそうです。


ものづくり中小企業のためのSDGs入門」 森健人 著 アニモ出版 2020
SDGsは、やらなければならないことであると同時にビジネスチャンスとも捉え、行動の宣言や、説明責任などの「実装」に向けた手引書として書かれています。


SDGs思考 2030年のその先へ17の目標を超えて目指す世界」 田瀬和夫・SDGパートナーズ 著 インプレス 2020
この本全体としては、世界的な視点で、環境や人権の諸問題と、今後の方向性の解説書になっています。
実行策の立て方や、時間的・論理的な逆算をして、今、取り組むことを決める方法や、様々な観点や目標が互いにリンクしていることに着目する方法を紹介しています。




順路 次は 企業価値

データサイエンス教室