問題解決と課題達成 の2つに対して、 問題解決の手順 のページがありますが、このページは課題達成の手順の方になります。
なお、 問題解決の手順 のページは、問題解決型QCストーリーを主に説明していますが、このページは、課題達成型QCストーリーを主に説明してはいないです。 問題解決型QCストーリーは「すべての問題」と思えるほど、いろいろな問題を扱えます。 一方、課題達成型QCストーリーは、そこまで万能ではないです。 この原因は、課題達成型QCストーリーの不備というよりも、「課題」の種類が複数ある点にあるようです。
問題解決と課題達成 のページで、一般的には混同されて使われている「問題」と「課題」について、使い分ける話をしています。 課題については、さらに3つに分かれると考えると良いようです。
課題の種類によって、適した手順も違って来ます。
従来からあった何か悪いこと(問題)を直せば、課題が達成できる場合です。
なお、この種類の課題であることに気付いたら、課題達成ではなく問題解決と考えて、 問題解決型QCストーリー で進める方が進めやすいです。
「売上倍増」や、「新規の分野の開拓」など、ゴールを表す言葉はあるものの、漠然としている課題はこれになります。 この場合が、一番難しいかもしれません。 現状や因果関係を調べて、何をすれば、課題が達成できるのかを検討する必要があります。
シックスシグマ のDMADVが適している課題になります。
DMADVは、分析して(よく考えて)から、実行しようとする傾向が強いです。 Define(問題の定義)、Measurement(測定)・Analysis(分析)・Design(設計)・Verify(検証)の5段階です。 4段階目の「Design(設計)」のところで、具体的に実行することを決めて行きます。
「建物を立てる」、「経理処理のシステムを導入する」、「新商品を開発する」など、何かを作り上げていくことが前提になっている課題はこれになります。 人工知能(AI) の分野では、「外観検査AIの導入」、「異常検知AIの導入」などが当てはまります。
この課題の場合は、何を作るのかは決まっていますが、詳しくは決まっていません。 建物の場合は、どういう場所に立てるのか、どういう建物にするのか、といったことを決めながら進めます。 顧客の要求を的確に把握することや、納期通りに作ることが、特に重視される課題です。 他の課題と比べると、「設計」という段階が特に重要です。
プロジェクトマネジメントの標準になっているPMBoKに限らず、「プロジェクトマネジメント」と言われているものでは、 順番が、立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、といった風になっています。 プロジェクトマネジメント の順番は、何かを作る課題に適しています。
ちなみに、 問題解決の手順 で対策を考えた後の進め方や、方策を自由に決められる課題で、方策を決めた後の進め方は、何かを作る課題と同じになって来ます。
何かを作る課題は、他に選択肢があったとしても、それを考えない形で進んでいることがあります。
例えば、「家を作るのが、本当にベストなのか?」、といった検討はされずに、「家を立てるぞ」と進んでいることがあります。
「きちんと考えて選ぶだけの話」、と思いたくなりますが、実社会では選べなかったり、選ぶのが極めて難しいことが多いかと思います。
上記で課題には3種類あり、適した進め方が異なることを書きましたが、この中に課題達成型QCストーリーが入っていません。
私見ですが、結論から書くと、課題達成型QCストーリーは3種類のどれにでも使えます。 ただし、どれに対しても、他の方法論に比べると使いにくいです。
まず、課題達成型QCストーリーは、以下のようになっています。
「テーマの選定」、「効果の確認」、「標準化と管理の定着」の3つは、問題解決型と同じです。
現状把握と要因解析の区別 のようなことは考えにくいです。 そのため、事象の構造を分析してから、それに基づいて方策を立案するようには進めにくく、どちらかというと、 アイディア勝負のような方策の出し方になりやすいです。
方策が最初から決まっているような課題の場合、課題達成型QCストーリーはわりとうまく当てはまります。
しかし、うまく当てはまってしまうため、問題解決型QCストーリーのように、 「最初の思い込みを排除して網羅的、体系的にテーマに取り組む」ということができなくなってしまいます。 実質的に 施策実行型QCストーリー と同じようなものになります。
問題解決の手順 は、基本的に既存のものの悪い部分を直そうとする活動になります。
一方、課題達成の方策としては、既存のものの全体について、 別の仕組みに変えてしまう方法も、選択肢になることがあります。
紙で行っていた手続きを、コンピュータの中だけでできるようにしてしまうような対策になります。
長所としては、既存のものの一部について取り組む方法と比べると、桁違いの効果があり、 「改善」というよりも「改革」と言えるような結果につながる点があります。
短所としては、実現するまでの手間や費用も桁違いになりやすい点があります。 また、新しい仕組みならではの問題が起きてしまう可能性はあります。
問題解決型QCストーリー では、 機械学習 の手法が役に立つことがあります。 しかし、 人工知能(AI) として使う時のように、「推論」や「予測」という使い方はあまりしません。 どちらかと言うと、学習時のモデルとデータの関係を見ることで、データや現象の全体像を理解するために使います。
一方、課題達成が目的の場合は、課題の内容にもよりますが、方策として、推論や予測の技術を使いたいこともあります。 この話は、 問題解決と課題達成のためのデータサイエンス にもあります。
「最新品質管理の基本と仕組みがよ〜くわかる本 製造/技術/事務全てで使える実践ハンドブック」 内田治 他 著 秀和システム 2012
問題解決型はボトムアップのテーマ向き、課題達成型はトップダウンのテーマ向き、としています。
課題達成型QCストーリーは、
新規分野への参入、画期的新製品の開発、チャレンジングな売上増の達成、新工場建設、新興国での生産の開始、新技術の導入、M&Aの成功、
といった「課題」を達成するためのQCストーリーとしています。
上記の3種類の課題が混ざっている感じですが、どちらかというと、設計と計画が中心になるテーマがイメージされているようです。
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