意思決定論 のページに書きましたが、「意思決定論」の中では、 データサイエンス によって、意思決定を支援するための話がけっこうあります。 データサイエンスを扱っている文献では、 「意思決定そのもの」については、「意思決定者はこうあるべき」のような精神論が多い感じがしています。
一方、心理学は、「意思決定そのもの」を扱う学問です。 「意思決定心理学」という、そのものズバリの本もありますが、 そうでなくても、大抵の心理学は、「意思決定」を扱っています。
心理学の話は、人間の意思決定の仕組みを理解するための役に立つだけでなく、 データサイエンスの使い方を深める上でも重要です。
そして、心理学的な意思決定論は、経済学の基礎を支える理論になっています。 特に、 行動経済学 では、意思決定の行動と経済の関係について、熱い議論がされています。
ベイズの定理 では、「事前確率」というものを使います。 「事前確率」は、主観を扱えるので、「主観確率」とも言われます。 期待値の計算で使う「確率」に、この主観確率を加える手があります。
また、 期待効用理論 では、「効用」の中に、ある程度、主観的なもの(価値観)が入りますが、 プロスペクト理論 を入れると、さらに主観的なものを扱えるようになります。
「ベイズの定理」や、「プロスペクト理論」を使って、「主観」を数理モデルに組み込むアイディアは、 統計的な決定理論で、さらに複雑な意思決定の理論を扱えるようにします。 これらの理論は、統計的決定理論と、意思決定の心理学の両方で成り立っています。
状況が変化して行き、手に入る情報が限られていて、考える時間もあまりない、、、 という限定された場面に対しての意思決定は、合理的ではなく、限定合理的と言われます。 合理的な判断のための解が最適解なので、限定合理的な判断のための解は限定最適解と言っても良いと思います。
私たちが限定最適解を採用する時は、何かしら満足できるかどうかを基準(満足基準)にしているようです。 この時の解を、満足解と言います。
現実的な意思決定では、データと数理だけでは、物事が決まりません。認識の仕組みの理解も大事です。
「心理学が描くリスクの世界 行動的意思決定入門」 広田すみれ・増田真也・坂上貴之 編著 慶應義塾大学出版会 2018
確実な情報がない中での意思決定では、ヒューリスティクスが使われることや、合理的な判断をしようとしている時にどのように考えがちなのか、
また、その時の感情や、ストレス、周囲の集団がどのように意思決定に影響するのか、といった研究を体系的に紹介しています。
「ウォートンスクールの意思決定論」 テファン・J.ホッチ、ハワード・C.クンリューサー 編 小林陽太郎 監訳 東洋経済新報社 2006
論文集です。ノウハウ集に近いです。
感情の影響とその回避のコツ、
ヒューリスティクスへの注意、フレーミングの注意、うその見破り方
東洋と西洋の意思決定の比較。
西洋は、個々の要素を分析する。せっかち。。
東洋は、全体の状況における個人の熟考による行動。忍耐強い。
「決める ‐意思決定の心理学」 日本行動科学学会 編 二瓶社 2009
72ページの薄い本です。
ヒューリスティクスの説明が多いです。
また、社会的文脈の影響を受ける意思決定を挙げていて、そのシンプルな形として、ゲーム理論を挙げています。
脳手術の影響で、感情がない方がいて、その方が意思決定(判断)ができないという事実があるそうです。
その事実から、「意思決定は合理的な考え方だけではできず、感情が影響している。」という説があるそうです。
「意思決定心理学への招待」 奥田秀宇 著 サイエンス社 2008
いろいろな考え方を、要領良く紹介しています。
特に、プロスペクト理論とフレーミング効果が詳しいです。
また、期待値から、主観的期待効用理論までの変遷が詳しいです。
順路
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