リスクは人の認知の仕方によって、見え方や扱い方が変わってしまうため、 リスクと心理の関係を考える分野があります。
化学物質リスク
や、
信頼性工学
では、リスクの定義を、「発生確率 × 影響の大きさ」としますが、
本当にこれだけでリスクを語ったことになるのかは、触れません。
また、仮に人間がリスクを認知する要素が、
発生確率と、影響の大きさで決まっているとしても、
両者の掛算でリスクを把握しているのかは、自明ではありません。
つまり、上記の定義は、簡単な関数を使ったリスクのモデルのひとつです。
リスク心理学では、発生確率や影響の大きさに対する心理を研究します。 さらに、上記の定義から離れ、 そもそもリスクに対して、心理はどのように捉えているのかの研究もあります。 つまり、 心理尺度 として、リスクにアプローチします。
行動経済学 の中では、リスク認知の研究が盛んです。 行動に結びつく、価値の感じ方と、リスクの関係があります。 代表的なものが、 プロスペクト理論 です。
リスク認知は、 リスク評価 とも関わっています。
リスク心理学の研究方法として、 アンケート で 心理尺度 としての死亡率を調べ、 それを統計データによる物理尺度としての死亡率と比較することがあります。
この比較を元にして、人の心理を考察することがあるのですが、 心理尺度の死亡率というのは、 その人の知識量に大きく依存しているはずです。 そのため、心理を測ったのではなく、知識量を測っただけのような気がします。
ちなみに、経済学で有名なケインズは、経験的確率が知識量によって変わることを指摘しているそうです。 「論拠の重み」と言うそうです。
「環境リスク心理学」 中谷内一也 著 ナカニシヤ出版 2003
環境リスク
とありますが、リスク全般に当てはまる内容だと思いました。
このページの内容の他には、ゼロリスクに働く心理についても解説しています。
「ゼロリスクは非現実的だから、トレードオフの考え方にすべし。」、という主張はしていません。
「環境学研究フォーラムT 環境の安全性 −その評価をめぐって」 鈴木継美・田口正 編 恒星社厚生閣 1987
内容は、リスク・環境基準・化学工場の安全性・化学物質の安全性・放射線の安全性です。
リスクの原因の分類を、疾病・自然現象・人為的、としています。
リスクの受容性の研究があります。
ここでは、リスクを年間死亡率としています。
リスクを受け入れらるか否かのアンケート結果と、
実際のリスクの大きさのギャップから、
人のリスクの受容性に関わる要素を分析しています。
自分自身の利益につながるリスクは受け入れられやすいようです。
「リスク心理学入門 ヒュ−マン・エラ−とリスク・イメ−ジ」 岡本浩一 著 サイエンス社 1992
人のリスクの感じ方の因子についての分析がありました。
また、確率の見積もりが、その人が持っている情報量で変化することの実験がありました。(
ベイズ統計
でも主観確率の議論はありますが、この本では確率の変化を計算で出しません。)
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