MTシステムは、 品質工学 から提案された 多変量解析 の手法の総称です。 「システム」となっていますが、コンピュータシステム等の「システム」とは意味合いが違っています。
品質工学 の分野のうち、 パラメータ設計 は、主に設計段階のためのもので、 品質工学の工程管理 は、製造段階のためのものです。 MTシステムは、どちらかと言えば、製造段階のためのものです。 設計段階での抜け落ちをカバーするという意味でも、 設計段階にフィードバックをかけるという意味でも、 製造段階のデータ解析は重要です。
MTシステムの「M」 は、 マハラノビスの距離 で有名なマハラノビス氏の「M」です。 「T」は、 品質工学(タグチメソッド) で有名な田口玄一氏の「T」です。 「システム」については、 当初は、「問題解決のための体系的な考え方」を指していたようです。 現在は、「手法群の体系」という意味で、「システム」と呼んでいることが多いようです。
MTシステムが、「MTシステム」と呼ばれるのは、最初に MT法 が考案されて、 長い間(10〜20年位)、MT法をベースにした手法だったからだろうと思います。 MT法では、「M」も「T」も重要です。 しかし、 T法 では、「M」を使いません。 そのため、現在のMTシステムでは、「M」を名前に入れる必然性が下がっています。
MTシステムは、多変量解析そのものなので、 品質工学から出て来た方法ですが、品質のデータ以外にも使えます。 パターン認識 の手法として解説されることも多いです。
「MTシステムは多変量解析の一種」と考えると、他の学問と比べやすいです。 MTシステムの各手法は、 重回帰分析 や 判別分析 の変形・応用版と考えられます。
MTシステムの事例や、手法の解説には、 実験計画法を使った変数の選択 が使われていることがあります。
実験計画法 が使われるので、 シミュレーション の方法や、 パラメータ設計 との関係が気になりますが、 変数の選択のために、実験計画法の数理を使っているだけなので、 シミュレーションやパラメータ設計の話ではないです。
元祖MT法は、優れた手法です。 使えるデータに条件があるのを、 MT法 の欠点のように考える方もいらっしゃるようですが、 他の多変量解析の手法にも似たような条件はあります。
MTシステムには、 MT法の改良版と言われる手法や、 T法 のように、MT法とは異なる発想で作られた手法がありますが、 元祖MT法以外については、筆者自身は特に利点を見出していません。
MT法の利点は、 単位空間 の概念を使って、品質のデータに特有な性質を、数理でうまく表現した(数学の言葉に翻訳した)ことにあります。
MT法に限らず、こういったアプローチで作られた方法は、 異常状態の工程解析 の強力な武器になります。
Yが量的変数の時はT法で、質的変数の時はMT法を使えば良いのですか?
MT法以外のMTシステムの手法が詳しく書かれている本は、多くはないです。
「入門MTシステム」 立林和夫 編著 日科技連 2008
MTシステムの定説と、有名な事例を知るには、良い本かもしれません。
「よくわかるMTシステム :品質工学によるパターン認識の新技術」 田村希志臣 著 日本規格協会 2009
この本は、MTシステムをパターン認識の方法として、位置付けています。
この本で言うところの「パターン認識」とは、文字認識のことです。
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