統計的な意思決定は、歴史が長いです。 「統計的決定理論」と言われたりもします。
意思決定の尺度の初歩は、期待値です。 期待値は、発生し得る事象の発生確率と効果(または損失)の積を、足し合わせたものです。 期待値は、「確率的な平均値」と考えると良いと思います。 期待値は、 リスク評価 でも使われます。
その他には、マキシミン(maximin)基準・マキシマックス(maximax)基準・ハーヴィッツ(Harwicz)基準・ ラプラス(Laplace)基準・サベッジ(Savage)基準があります。 マキシミン基準では、最悪と考えられるパターン群から、最善と考えられるパターンを見つけようとします。 その他の基準は、マキシミン基準の変形・発展版のようなものです。 ちなみに、マキシミン基準が慎重主義者の基準で、マキシマックス基準が楽観主義者の基準です。
上記の基準で実際に行動するには、あらゆるパターンのデータをそろえる必要があります。 そのため、実際に使うことの難しい意思決定の方法です。 実際の場面では、上記の基準に近いことを、限られたデータで実施するしかないです。
現実では、手に入るデータは不完全ですし、状況は刻々と変化するものですが、 世の中のデータ解析手法には、これらの現実に対応していないものが多いです。 ベイズ統計 では、
と言った、人間の判断方法に近い意思決定のデータ解析ができます。 1では「尤度」、2では「ベイズ更新」、3では「主観確率」を使うのがポイントになります。
行動経済学 は、現実的な意思決定を重視します。 ベイズ統計は、行動経済学からも注目されているようです。
「見えないものをさぐる―それがベイズ 〜ツールによる実践ベイズ統計」 藤田一弥 著 オーム社 2015
オオカミ少年の話を例にして、
「たまたま最初にオオカミが現われていたら、少年が嘘つきかどうかの信じ方がどのように変わるのか?」、
「村長は、利得を考えて行動しないといけないが、どのように計算すれば良いのか」、
という説明があります。
「意思決定のための統計学 ‐ベイジアン決定理論入門」 武藤真介 著 東洋経済新報社 1980
期待効用理論を丁寧に説明しています。
「統計的決定理論」 L.ワイス 著 田中穣二・根岸龍雄 訳 日本評論社 1964
確率論や分布の解説から始まり、統計的決定理論を解説しています。
経営や生産計画の例を挙げ、実用面を実感しながら定理等を学べるような構成になっています。
統計学は X を考えることが多く、現実の場面では Y を考えることが多いそうです。
この本は X と Y のつながりを指摘しています。
ワルド(Wald)氏が作り上げたと言われる方法は、
選択肢がいくつかある時に、それらの損失(コスト)の期待値や確率を使って、
ベストな選択肢を選ぶための方法のようです。
「どれだけの数のサンプルを見れば、選択肢を決定できるのか?」、
という、疑問に答える方法のひとつのようです。
全部のサンプルを一気に検査するのではなく、
「サンプリングと検査を繰り返していき、目途が立ったら、意思決定する。」
というようなことをする場合には、特に有用な方法と言えそうです。
「目途が立ったら」の部分が、統計的決定理論の役割です。
こういうケースは、おそらく一件あたりのサンプリングのコストが、非常に高い場合だと思います。
「数理生物学入門」 巌佐庸 著 共立出版 1998
統計的決定理論が
数理生態学
で使われている、という意味の記述がありました。
順路
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