風水は、もともと宅地や墓地を作る時の、場所決めの方法のようです。 景色を見て、あるべき姿を読み取ります。 気が流れていると言われる龍脈を、山や川の形から読み取ったりします。
尚、サイトの趣旨から外れるので、ここでは開運術としての風水には触れません。 世の中の風水は、開運術の話ばかりですが、 環境の見方としての風水を論じる方もいらっしゃいます。
方法論としては、 地勢を読み取る方法(形勢派)と、 陰陽五行説 と結び付ける方法(理派)があるそうです。 理派の風水は、陰陽五行説を土地に特化して活用する分野と見れば良いのかもしれません。
風水の面白いところは、風水的に木が欲しいところに木がなけれれば、 「木を植えよう。」という発想をしたりすることです。 あるがままの自然を大切にするという思想ではなく、 必要ならば自然に人間が手を加えることも是認しています。
ただし、「自然に人間が手を加えることを是認している」と言っても、 それは、「あるべき姿」にするためです。 「あるべき姿」でないことを、良くないことと考えています。 欧米流の環境保全も、自然に人間が手を加えますが、 欧米流には、「あるべき姿」という観点はないと思います。 (欧米流の中に、「 アメニティ 」という概念がありますが、今のところ、少数派の思想のようです。)
環境保全の方法として風水を考えるなら、 風水もグローバルに対応できて欲しいです。 中国の地形に合わせて作られた方法論が、 世界の別の地域でどのように活用できるのかは興味深いところです。
「図説 風水学 : 中国4000年の知恵を探る」 目崎茂和 著 東京書籍 1998
沖縄・香港・台湾での風水の実際的なあり方を説明してから、
現代的な意義を提言しています。
この本で提言されているのは、
「入れ子構造として、個人・家族・人類や、家・会社・地域・地球を見る。」、
「気の流れを、人・資源・情報・物・経済の流れに置き換えて、風水的な見方をする。」、
「
環境思想
としての風水」、等です。
全般的に平易な文章です。
「朝鮮の風水 」 村山智順 著 国書刊行会 1972
筆者が見た本の出版年は1972年ですが、この本は復刻版で、元の本は1931年(昭和6年)です。
当時の朝鮮総督府が、民間信仰の調査資料としてまとめた本です。
日本における風水研究のバイブルと言われているそうです。
そう言われるだけあって、857ページもありますし、内容は網羅的で体系的です。
陰陽五行説との関係といった理論的なことや、墓地風水・宅地風水の実例も詳しいです。
「風水都市 ‐歴史都市の空間構成」 黄永融 著 学芸出版社 1999
古代都市に対しての、風水からの考察が詳しいです。
最後の方で、現代の都市計画には、「山環水抱」や「陰陽調和」がキーワードになるとしています。
筆者は、
都市計画
と風水の関係に、興味があります。
香港の風水戦争のような、ドロドロした話が書いてある本は、いくつもあるのですが、
そうではない都市の風水の本として、この本は良いと思います。
著者は、学術的な研究だけでなく、いわゆる風水師に弟子入りされて、実学としての風水の修業も積まれているそうです。
この点でも、この本は良いと思っています。
「風水と身体 ‐中国古代のエコロジー 」 加納喜光 著 大修館書店 2001
中国での環境保護の考え方の歴史と、風水の関係について、半分位で解説しています。
残り半分が、医学と風水の関係です。
身体の問題と、環境の問題を同じように考えているので、前半と後半は2つで1つみたいな感じです。
ヒポクラテスの「環境医学」というのも出て来ます。
「土」等の漢字の成り立ちの解説が詳しいのも、この本の特徴です。
「内側と外側の流れ」という概念を扱っている学問として、槌田敦氏の
資源物理学
が紹介されていました。
この本の内容と関係の深い、目崎茂和氏は、この本を通して初めて知りました。
「定本・地理風水大全 」御堂竜児 著 国書刊行会 1997
地形の見方や、八卦・五行の理論の使い方を、かなり詳しく、わかりやすく解説しています。
「風水という名の環境学 気の流れる大地」 上田信 著 農山漁村文化協会 2007
この本は「図説 中国文化百華」の第15巻です。
風水を「中国の環境学」としています。
著者が実際に中国を歩いて調査した内容を使って、
風水を解説しています。
風水が景観を守る理論になっている地域もあるが、
「木を一本だけ残して、森が保たれている。」とする風水の使い方があることも解説しています。
「風水 その環境共生の思想」 村田あが 著 環境緑化新聞社 1996
風水の歴史やポイントを述べた後、現代の建築の中で風水思想が用いられた例を解説しています。
トルコとモロッコの町についての、風水的な解釈もあります。
「都市の風水土 都市環境学入門」 福岡義隆 編著 朝倉書店 1995
都市にターゲットを絞った
環境学
です。
自然景観とのアナロジーで都市の景観を評価すると、
好ましい都市景観がわかると提言しています。
そして、風水思想を取り上げています。
風水思想はかなり合理的な考え方でできているので、
環境アセスメント
に風水による見直しを入れることを提言しています。
「風水地理入門 」 崔昌祚 著 熊谷治 訳 雄山閣出版 1999
韓国の方が書いた本です。
風水が墓地選びになっていることへの批判があります。
「環境問題にたいする風水の役割」というタイトルの部分もありますが、
具体的にどうこうという訳ではなく、考え方をエッセイ風に書いている感じです。
「風水 気の景観地理学 」 渡辺欣雄 著 人文書院 1994
沖縄の風水が詳しいです。
もっと一般的な風水の話もあります。
全体的には、風水と人類学の関係の本と言えそうです。
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