環境学 と似たものに、「環境科学」があります。 環境学の本 を片っ端から見始めたら、 「環境学と環境科学って何が違うんだろう?」なんて思い始めて、 環境科学も見ました。
環境科学として作られた本の内容は、環境学と重なるところもありますが、 環境問題のメカニズムに重点が置かれている点が違います。 「環境学と環境科学は違わない。」と思っていたので、ちょっと意外でした。
環境科学の本の内容は、環境学ほど多様ではないです。 データサイエンス の立場から考えると、 「何を 環境影響の尺度 (環境指標)にするのか?」、 「それをどうやって正確に測るのか?」、という 測定 に関する項目がある環境科学の本は、良い本だと思います。 この項目がないと、漠然とした議論や、定性的な議論しかできないです。
環境科学の本について、環境学ほどの量は見ていません。 筆者が特に良いと思うものには、◎が付いています。 分野横断的な内容で、志向がある程度明確なものを「良い」としています。
鈴木孝弘 著 昭晃堂 2006
公害・水・都市環境・酸性雨・大気汚染・化学物質・温暖化・森林破壊・循環型社会・江戸時代の仕組みを解説しています。 文章が読みやすいですし、 見た目の読みやすさも、考えられている本です。
藤倉良・藤倉まなみ 著 有斐閣 2001
大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・悪臭・騒音・廃棄物・オゾン層・温暖化についての、
メカニズムや対策等が主な内容です。
環境指標で環境を評価することの意識が比較的強いです。
御代川貴久夫 著 培風館 2003
地球科学・エネルギー科学・化石燃料・原子力発電・大気汚染・酸性雨・温暖化・生態系・水質汚染・リサイクルを解説してます。 ビッグバン(宇宙の始まり)の解説から始まるという意味では、壮大な構想でできている本です。
日本環境学会編集委員会 編 有斐閣 2001
執筆者が14人で、多いです。 一般的な環境科学のテーマは網羅していますが、 技術史が石器時代から始まっている点が変わっています。 また、環境問題の本で、 交通事故・水害・地震・雪害・食品や医薬品による公害を「問題」として含んでいる点も変わっています。 物事をとらえる時の枠組みが、非常に大きいようです。
小島次雄・川平浩二・藤倉良 編著 化学同人 2005
環境計測・有機汚染物質・酸性雨・オゾン層・温暖化・環境経済学で章が、 構成されています。 各章は独立しているので、各論集のような感じです。 環境計測は、測定方法の種類、誤差の考え方、測定原理等が、コンパクトにまとまっています。
河村哲也 著 インデックス出版 1998
環境問題として、
温暖化・オゾン層・酸性雨・海洋汚染・熱帯林減少・砂漠化・エネルギーを挙げています。
そして、地球の成り立ちの話があります。
この本の特徴は、
数値シミュレーション
の概要が書かれていることです。
流体力学をどういう風に使っているのか等も含んでいます。
シミュレーションの対象は、温暖化と大気の流れです。
山下栄次・阪本博・若村国夫・野上祐作・坂本尚史,・安藤生大 著 大学教育出版 2006
水・大気・エネルギー・生態学・化学物質・廃棄物・土壌流出・砂漠化・土壌汚染を扱っています。 環境問題の本で、花粉症や粘土がキーワードとして出てくるのは、興味深かったです。
朝倉書店から出た、3巻の本です。
筑波大学大学院環境科学研究科のカリキュラムに沿って、
教科書として編集されました。
平易な文章になっています。
「測定と評価」を第3巻として独立させているところが特徴です。
環境問題が発生するメカニズムの解説もありますが、ごく一部です。
純粋に自然科学や社会科学を扱っている本と言えるかもしれません。
このページでは、そういう本はこの本だけです。
保田仁資 著 化学同人 1996
毒性・水・大気・食・農業・温暖化・環境ホルモン・ダイオキシン・化学物質過敏症を扱っています。 多くの章が概要と対策のような構成になっています。 対策は日常生活レベルです。
金原粲 監修 太洋社 2006
大気・水・土・毒性・廃棄物の問題を、化学的に書いています。
日本化学会 編 東京化学同人 2004
各項目が、問いかけ式になっている本です。 少し面白い角度から、物を見ている感じのする本です。 豊かさ・化学物質リスク・生物多様性・食糧・きれいさ・環境修復・地下資源・リサイクル・ゼロエミッションを解説しています。 「豊かさ」や「きれいさ」は、抽象的な話と、 科学的な定義の話です。
塚谷恒雄 著 化学同人 1997
筆者の読んだ環境科学の本で、この本以外に「科学」そのものを語っている本は、
多分ありません。
環境が絡んだ人間の悲劇の歴史を振り返り、
「環境問題をこれからの科学で解決する。」というスタンスの本です。
産業革命・エネルギーとエントロピー・水俣病・サリドマイド・エルニーニョ・水紛争・砂漠化とアラル海・環境と思想というテーマ設定です。
すべての環境問題の原因はエネルギーの浪費とし、
省エネルギーや新エネルギーの技術が解決策としています。
ここでの「水紛争」には、イスラエルでの戦争に、ヨルダン川の取り合いが関係しているという話もあり、
環境問題の話題としては特殊な感じです。
ここでの「環境と思想」は、
環境思想
のような話ではなく、世界の宗教に対しての著者の宗教観が中心です。
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