対称、非対称の片方だけでも研究分野がありますが、このページは、両者のバランスの話です。 システム論 として、こういう観点も面白いと思っています。
このページのポイントは、2点です。
下記の縦巻き横巻きの法則は、このような対称と非対称のバランスの一例です。 筆者はこれ以外の例を知らないのですが、 アナロジー として使えそうな気がしています。
左右対称の中に、左右非対称が入っているものとしては、3種類に分けられるようです。
人間の体は、外側から見ると、手、脚、目、耳のように左右両方に対称的に配置されています。 一方、体の内側にある、内臓や脳は非対称です。
手は、外側から見ると、左右対称ですが、 利き手の方が、思い通りに動かしやすく、左右で機能の高さが非対称です。
外側から見ると、左右対称で、機能が非対称なものには、もう一種類あり、機能の非対称性が、相補の関係がある場合です。 「相補」というのは、「お互いにない物を補い合う」という意味です。
下記の縦巻き横巻きの法則が、それです。
左右対称の中に、左右非対称が入っているものとして、上記で3種類あるとしましたが、 左右の非対称の表れ方は非対称です。 つまり、左右の発生率にも非対称性があります。
内側の配置が左右非対称な場合、 例えば、内臓の左右は、ほとんどの人が同じですが、ごく稀に逆の人がいるそうです。
機能の高さが左右非対称な場合、 例えば、右利きの人の方が多いです。
人間の体は、左右で、縦に動かしやすい方と、横に動かしやすい方に明確に分かれている、という法則です。 紙媒体にはあまりなっていないようですが、ネットで調べられます。 筆者の場合は、 発達障害 の療育整体の方法として応用されているのを学ぶ機会があって知りました。
応用としては、ボールの投げ方があり、「投げる方の腕が縦の人は、オーバースローが良い。横の人は、サイドスローが良い。」というのがあるそうです。
縦巻き横巻きの法則の場合、左右が非対称というだけでなく、左右に、縦が得意、横が得意、という役割が分かれていることや、その縦と横というのは、2つで1つの機能として使われることも特徴があります。
縦巻き横巻きの法則の場合は、左右の違いが、「縦と横」という対になっています。
縦と横の動きを同時にすると、らせんのような動きができます。 相補の場合、連携することで、どちらか片方ではできないことが可能になります。
交互作用 の一種とも言えます。
人間の場合、手足の長さは、基本的に左右で同じです。
ただ、体の使い方にクセがあると、ミリ単位程度ですが、左右の長さがわりと簡単にずれます。 左右対称な動きばかりしていても、左右の長さがずれます。 つまり、機能が左右非対称になっているものを、左右対称な使い方をすると、外側の対称性が低くなって行きます。
療育整体では、外側の対称性を、維持する方法を教わります。 外側の対称性が高い時は、一番血流が良く、また、体を動かしやすいそうです。
内臓や脳は左右対称ではなく、利き手、利き足といったように片方に優劣があるのなら、体形は非対称の方が自然な気がしますが、そうではないそうです。 なお、筋肉は「内側」と考えた方が良いようで、見た目の筋肉の付き方が非対称なのは、OKで、意識して鍛えて、見た目を同じすると、体を動かしにくくなるそうです。
上記は、外側が左右対称になっているものの話として、人間の体を例にしています。 人間の体のように、外側が左右対称なものは、鏡像対称の一種です。
「鏡像異性体」と呼ばれますが、分子の世界では、自分とは別に、鏡像対称の関係の分子があることがあります。
分子を作る時に、鏡像異性体ができる確率は、同じように思えなくもないですが、どちら片方しかできないこともあります。 発生率に非対称性があります。
鏡像異性体の機能は、同じように思えなくもないですが、まったく異なる方が普通のようです。
※ このページは、ひとつの物の中に左右対称がある物の話がメインです。 鏡像異性体のように、物として別々になっている物については、似たような性質のある物として、このページに入れてみました。
「非対称の起源 偶然か、必然か」 クリス・マクマナス 著 講談社
心臓が左側にある事、右利きが多い事、脳は左右で機能が異なる事から始まって、対称よりも非対称の方が一般的であることや、社会の成り立ちなどにも触れています。
「左右を決める遺伝子 からだの非対称性はなぜ生じるのか」 柳沢桂子 著 講談社 1997
細胞の発達と、左右の決まり方の研究の話が多いです。
左右対称性は、発達の段階の総和のようにして決まって来るので、絶滅しやすい種は、左右対称性のゆらぎが大きく、
また、個体としても、左右対称性の高さは、遺伝子的な健康度の高さと考えられるそうです。
「生物界の左と右 」 根平邦人 著 共立出版 1998
分子の非対称性と、生命体の非対称性を結び付けた話が多いです。
「自然界における左と右 新版」 マーティン・ガードナー 著 筑摩書房 2021
初版が1963年で、
物質の世界の非対称性の話が多いですが、双子における対称性の研究や、右利きと左利きの話もあります。
「左右/みぎひだり あらゆるものは「左右」に通ず!」 國文學編集部 編 學燈社 2006
脳の左右や、生物の左右の話もありますが、芸術や文化の中にある左右の話もあります。
「「右と左」の不思議がわかる絵事典」 富永裕久 著 PHP研究所 2006
身近にある左右のある物を集めています。
「偶数と奇数の記号論 脳と諸記号システムの非対称」 Вяч.Вс.イワーノフ 著 青木書店 1988
左右の脳が対話することで生命が活動しているところから、人の対話や言語論の成り立ちに話を広げています。