人工の感情や心は、 人間のように考えて行動するための、中心的な技術のように考えられています。 SFでは、これが暴走して人類が危機になるような話が、いろいろあります。
この分野には、「感情とは何か」、「心とは何か」が、わかるようでわからないという、根本的な難しさがあります。
一方で、人工的な感情や心は空想上の話ではなく、すでに現実の製品になっていものがあります。 これは、コンピュータの中に感情や心を作りこむのではなく、人間側が、コンピュータの中に感情や心があると思うような技術になっています。
面白いもので、人は、でたらめな単語しか返して来なくても、「かわいい」とか「愛おしい」、と言った感情を持ちます。 これが、現実の技術を作る時のポイントになっています。
このページは「感情」の話ですが、 心について書かれている本は、いろいろあり、人間が脳を使って知る仕組みが中心のものもあります。 このサイトでは、そちらは 認知心理学 のページにしました。
「Pythonプログラミングパーフェクトマスター」 金城俊哉 著 秀和システム 2016
前半は、Pythonの入門書です。
後半は、主に会話するAIの作り方です。
それぞれの単語に感情の数値を与えておき、単語のその数値に対して、感情パラメタを変えて反応する事で、
感情を持っているように、見せる話がありました。
「実践機械学習システム」 Willi Richert, Luis Pedro Coelho 著 オライリー・ジャパン 2014
テキストの分類の話が多いのですが、レコメンドや画像認識もあります。
Twitterの短い文章から、感情を読みとる話もありました。
SentWordNetというデータがあり、ほとんど英単語のポジティブとネガティブの度合いが数字になっているので、
これを使うそうです。
この本は、Pythonの事例集にもなっています。
「脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす」 甘利俊一 著 講談社 2016
脳がどのように分析されて来たのかと、ニューラルネットワークの関係をわかりやすく解説しています。
意識とは、情報が統合されることで生まれること、
心を持っているように見える機械を作ることはできても、心を持っているかどうかは別の話、といった話までつながっています。
「心をもつロボット 鋼の思考が鏡の中の自分に気づく!」 武野純一 著 日刊工業新聞社 2011
鏡に映っている自分を見て、「自分」だと判断する技術や、
言葉から感情を形成する技術の2本柱です。
実際にそのよう事のできるロボットを作っているところが、すごかったです。
この本では、このような技術の可能性の話や、ロボットの技術史の話も豊富です。
「心を交わす人工知能 言語・感情・倫理・ユーモア・常識」 荒木健治 他 著 森北出版 2016
いろいろな立場や考え方で、倫理や感情を定義し、形にしていっています。
これによって倫理や感情を分析したり、反応するシステムを実現しています。
「人工知能の創発 知能の進化とシミュレーション」 伊庭斉志 著 オーム社 2017
副題の進化の他にも、
複雑系、
ゲーム理論、
プロスペクト理論
などもあり、非常に広範な分野での、生態系や社会で何かが起こるメカニズムを調べています。
人工生物や人工人間の、行動メカニズムの開発につなげたいようです。
「脳・身体性・ロボット 知能の創発をめざして」 土井利忠・藤田雅博・下村秀樹 編 シュプリンガー・フェアラーク東京 2005
AIBOという犬型ロボットの開発者が、著者の一人でした。
AIBOの学習は、ある程度進むと面白さがなくなって来て、設計者の意図が見えてしまうものだったそうです。
「創発」というAIBOのできなかった事を目指しています。
脳の徹底的な模倣や、人間の発育や学習の過程の模倣を、力学的な動きや情報処理と結び付けることが、アプローチになっています。
この技術の中に、
RNN
があります。
この本ではRNNを「動き」に使います。
「AIは「心」を持てるのか 脳に近いアーキテクチャ」 ジョージ・ザルカダキス 著 日経BP社 2015
人工知能への哲学史と、そこから発展したSFのような話が多いですが、
著者自身の人工知能の技術としては、
サイバネティックス
が軸になっている感じでした。
「皇帝の新しい心 コンピュータ・心・物理法則」 ロジャー・ペンローズ 著 みすず書房 1994
8割くらいは、理論物理学の本です。
量子力学や時間の概念、また数学にある計算の可否の議論に、脳の研究を加えて、「心」や「意識」を説明しようとしています。
ちなみに、著者は、「ペンローズタイル」という不思議な模様で有名な方です。
筆者は学生時代に準結晶も扱う研究室にいて、そこでペンローズタイルの事は聞いていました。
この本でも、ペンローズタイルは紹介されています。
卒業後、20年近く経ってから、それも、人工知能の分野でペンローズ氏の名前をまた見る事になったのは、不思議な体験でした。
「心とは何か 心理学と諸科学との対話」 足立自朗 他 編 北大路書房 2001
心についての様々なアプローチが集められています。
全般的に哲学的な話が多いのですが、下記については実体のある話でした。
・自我状態(他者との入出力の間にある自分)や感情記憶(言葉と概念の結び付き)をモデルにして、コンピュータ上に実現する研究
・座禅で呼吸法から心に迫るアプローチから考えると、心は脳だけではなく、心臓による血液の循環にもある。
「心の計算理論」 往住彰文 著 東京大学出版会 1991
心を扱う諸科学の紹介があります。
文章の中には心がどのように表現されるのかや、
プログラムで心が表現できるのか、といった内容が、比較的抽象的に説明されています。
「「認識」のかたち 自分を知るための心理学」 西川泰夫 著 誠信書房 1988
「考える」、「見る」、「自己認識」といった事は、どういった事なのかを論じています。
「考える」については、「記号を計算する」とされています。
「自己認識」については、鏡の中の自分を「自分」と思うのは、どういうことなのかの話でした。
こういった人間の特徴を、実際のコンピュータで実現するあたりの話は「考える」だけで、
「見る」や「自己認識」については、人間の中の話でした。
「心の科学のフロンティア ―心はコンピュータ―」 西川泰夫 著 培風館 1994
「心は記号の処理をしている。
一方で、コンピュータは記号の処理をする。
よって、コンピュータに心を持たせることができる。」
、と説明しています。
「脳はいかにして心を創るのか 神経回路網のカオスが生み出す志向性・意味・自由意志」 ウォルター・J.フリーマン 著 産業図書 2011
カオス
の理論を織り交ぜつつ、脳の医学的な仕組みと、心の関係を研究しているようですが、
哲学的な話も入って来ていて、大変なボリュームがあります。
「神経細胞の複雑な構造が、秩序を持ちながら、人の複雑な行動を生み出すことの解明に、カオスの理論を持ち込んでいるのかな。」
、というのが、斜め読みの感想です。
相当、腰を据えて読んでみたい本です。
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