効果量は、例えば、 平均値の差の検定 なら、その平均値の差による効果の量になります。
差の意味で検定を補強 のページがありますが、平均値の差の検定効果量は、差の意味の一種です。 差の意味で検定を補強 では、経済的・実務的な意味の話が中心ですが、効果量は、統計学的な意味を表します。
上記の平均値の差の検定用の効果量は、ざっくりと説明するのなら、平均値の差を、標準偏差で割ったものです。 つまり、 標準化 したデータの、ばらつきの大きさです。 (比べたい分布が2つあるので、標準偏差は2つあります。 効果量の計算では、2つの標準偏差について、サンプル数なども考慮しつつ、1つに合わせます。)
相関の検定用の効果量は、相関係数です。
効果量は、データをグラフにして、グラフから言えることを定量的に表す量になっています。 新しい概念のように語られることもあるようですが、 統計量の分布 のような日常感覚でわかりにくいものは出て来ないので、検定の理論よりも、直観的に理解しやすいです。
ノンパラメトリック検定 の多くの手法などは、 z検定 に帰着するように作られています。
z検定では、検定統計量の分母が、 標準誤差 で、標準偏差をサンプル数の平方根で割ったものです。 そこで、検定統計量の分母に、サンプル数の平方根をかけると、標準偏差で割ったことになります。 そうすると、効果量として活用できます。
質的変数の相関は、 連関係数 で測れます。 そこで、質的変数の場合は連関係数が効果量として使えます。
効果量が解説されていることで、引き合いに出されることの多いのが、「Statistical Power Analysis for the Behavioral Sciences」というコーエン氏の本ですが、この本は、1988年です。
本になったのがこの年だとすると、60年代頃から、すでに考案されていたようです。
しかし、統計学の一般的なユーザに広く知られ始めたのは、2010年代になってからのようです。
筆者の想像ですが、P値を巡る混乱への対策として、いろいろ検討した中で、「良いものが、あるではないか」と、発掘されて来たのが効果量のようです。
P値には、「P値がどのようなものかを知らなくても、とにかくソフトにデータを入れて、0.05以下になれば、研究は成功になる」という、認知が広まった歴史があります。
これと似たことが、効果量でも始まっているようです。 つまり、「効果量がどのようなものかは、よくわからないが、基準値を超えれば、研究は成功になる」という認知をしているように見える解説を見かけます。
効果量を使ったとしても、 差の意味で検定を補強 のような考察は、丁寧にした方が良いです。
ネットなどで、効果量の解説を読むと、難しい理論の一種のように見えますが、よくよく読み解いて見ると、 効果量は、データをグラフにして、グラフから言えることを定量的に表す量です。 厳密に説明しようとして、複雑な式が出て来ることもありますが、 やっていることは、標準化や、相関係数の計算と変わらないです。 この点が、混乱を避けるポイントかもしれません。
「伝えるための心理統計 効果量・信頼区間・検定力」 大久保街亜・岡田謙介 著 勁草書房 2012
「心理統計」というタイトルですが、副題の効果量・信頼区間・検定力の解説書として、統計学を実務で使うすべての人が知っていた方が良いような内容の本になっています。
「効果量とその信頼区間の活用 児童心理学の進歩 2014年版」 吉田寿夫 著 金子書房 2014
「本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本. 補足2」 吉田寿夫 著 北大路書房 2018
効果量として、平均値の差を標準偏差で割ったものがありますが、平均値の差自体にも、効果量としての意味があることを説明しています。
しかし、心理の研究では、差の絶対値に意味付けすることが難しいため、標準偏差で割ったものを使うことに意義があるとしています。
「心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし」 高野陽太郎・岡隆 編 有斐閣 2017
筆者は、この本で、上記の2冊を知りました。
「Effect size」 Wikipedia
英語のウィキペディアのページです。
網羅的に解説されています。
https://en.wikipedia.org/wiki/Effect_size
「効果量」 日本理学療法学会連合
効果量の種類が簡潔にまとまっています。
https://www.jspt.or.jp/ebpt_glossary/effect-size.html
順路
次は
効果量の信頼区間