世の中には、「AI・機械学習・データ分析のプロジェクト」というものもあります。 プロジェクトマネジメント に、この領域ならではの特徴があります。
以下の特徴があります。
「会社の問題解決や課題達成のためには、 AI・機械学習・データ分析のプロジェクトを立ち上げて、システムを作る」という話は、 世の中では、よく解説されています。
しかし、AI・機械学習・データ分析のプロジェクトには、独特の難しさがあります。 難しさの原因としては、PoCやメンテナンスがあることよりも、以下の事情の方が多いようです。
ちなみに、 データの利活用の進め方 に似た話があります。
筆者の経験の範囲ですが、 会社の中の問題や課題に対して、プロジェクトを立ち上げて進める場合は、 問題解決の手順 や 課題達成の手順 をベースとした進め方が基本です。
まず、データ分析ですが、 問題解決と課題達成のためのデータサイエンス のページにあるように 、 問題解決の手順 や 課題達成の手順 の中で、適材適所で実行すると効果的です。 それなりに大変なデータ分析になるのなら、 この部分だけを、プロジェクトの中のプロジェクトとして進めた方が良いことがあります。
対策や方策を検討する中で、ひとつのアイディアとして、「AIや機械学習を使う」というのが出て来ることがあります。 ここまで進んだ場合に、プロジェクトの中のプロジェクトとして、AIや機械学習を使ったシステムのプロジェクトを立ち上げると良いです。
なお、実際には、「AI・機械学習・データ分析をやってみたい」ということが先に来て、 その目的として問題解決・課題達成の題材が選ばれることもあります。 そのような経緯だとしても、順番を入れ替えてロジックを考えるのが、一番良いようです。 世の中の成功例も、この入れ替えがうまくできたものが多いような気がしています。
「データ×AI人材キャリア大全 職種・業務別に見る必要なスキルとキャリア設計」」 村上智之 著 翔泳社 2022
データ×AI活用プロジェクトと、「データ×AIの人材になるには」といった内容の本です。
「データ×AI活用」と「データ×AI活用プロジェクト」として、それぞれ3つを挙げて、対応関係がありました。
・「機械学習による自動化」:「機械学習システム構築プロジェクト」
・「データに基づいたインサイトの発見」:「データ分析プロジェクト」(データを根拠にした施策案がアウトプット)
・「データに基づいた経営判断」:「データ可視化・BI構築プロジェクト」
「データ分析プロジェクト実践トレーニング ケーススタディで学ぶ現場の問題解決」 下山輝昌・川又良夫・佐藤百子 著 秀和システム 2022
アイディア創出、やりたいことに対する現状の精査、強みの再発見、おおまかな将来像づくり、ユーザーごとの「つくるもの群」の設定、
試行錯誤(「つくってみる」ユーザーに「あててみる」)、運用へのインストールの7つの項目を「地図」と読んでいます。
プロジェクトの進め方の一般的な説明は、こうした項目は「プロセス」として説明されるので、まずここから違っています。
この本では、地図のどこから始めても良いし、同時でも良い、としています。
常に自分たちが地図のどの位置を進めているのかを念頭に置いて、地図の中の情報をどんどん更新していく進め方になっています。
正解がない、正解がわからない、何をしたら良いのかがわからない、といったスタートの中で、進めながら答えを見つけて行く、
答えを高めて行く、という考え方です。
このページで、QCストーリーやDAMICの順番は最終形態であって、実際の進め方ではないことを書いていますが、それと同じ考え方をされています。
「データ分析人材になる。 目指すは「ビジネストランスレーター」」 木田浩理 他 著 日経BP 2020
Demand、Design、Data、Develop、Deployの5段階でデータ分析のプロジェクトが進みます。
料理人が、要望を聞いて、食材を集め、調理、食べてもらう、といった順で進むことを例にしています。
「ビジネストランスレーター データ分析を成果につなげる最強のビジネス思考術」 木田浩理 他 著 日経BP 2023
三井住友海上火災保険 経営企画部 CXマーケティングチームの皆さんによる共著となっています。
ビジネストランスレーターのスキルとして、ビジネススキーマ活用力、プロジェクト遂行力、ビジネス背景理解力、データ解釈基礎力を示し、
ビジネストランスレーターの役割を明確にしています。
「いちばんやさしい機械学習プロジェクトの教本 人気講師が教える仕事にAIを導入する方法」 韮原祐介 著 インプレス 2018
企業内へのシステムの導入に従事してきた著者が、
機械学習を組み込んだシステムの導入について、体系的にまとめています。
通常(従来)のシステムは演繹的。機械学習のシステムは帰納的であり、データから推論して結論を出す。
機械学習のシステムを作るには、質の良いデータが大量に必要。そのため、実際のデータを使ったテストが大事。
「人工知能システムのプロジェクトがわかる本 企画・開発から運用・保守まで」 本橋洋介 著 翔泳社 2018
人工知能システムの開発に特有なのは、データ分析、テストの実施、モデルのメンテナンスがあること。
モデル作成では、異常値やデータの偏りに気を付ける。
的中率が70%だったとして、それが良い悪いかは、人がやる場合と比較する。
すべてを人工知能に任せるのでさなく、人と協調していく。
「データ分析プロジェクトの手引 データの前処理から予測モデルの運用までを俯瞰する20章」 David Nettleton 著 共立出版 2017
マーケティング、保険の加入者、テレビの視聴率といった、社内から社外の動きを見るデータ分析が題材になっています。
実際に検討されたデータの項目も、かなり具体的です。
目的のためなら、何でも使う感じで、
決定木
、
回帰分析
、
ネットワーク分析
などがありました。
分析で実際に大変な事の話は、ありませんでした。
システム開発やプロジェクトの話は少しで、ほとんどが分析の話です。
データ分析は、データからの知識発見と、モデリングのためにしています。
(
因果推論
のためではないです。)
モデリングはシステム開発につなげている。
「AIエンジニアの実務と知識がこれ1冊でしっかりわかる教科書」 AIエンジニア研究会 著 技術評論社 2021
AIの入ったシステムの開発の手順として、要件定義の前に、アセスメントとPoCの段階が入っています。
アセスメントとは、どんなデータで何をするAIなのかを決める段階です。
PoCは、AIを試しに作ってみる段階です。
「AI・データ分析プロジェクトのすべて ビジネス力×技術力=価値創出」 大城信晃 他 著 技術評論社 2021
データサイエンティストという立場の人が、プロジェクトとして、AIを作るスタイルが想定されています。
「仕事ではじめる機械学習」 有賀康顕・中山心太・西林孝 著 オライリー・ジャパン 2018
プロジェクトとして
機械学習
を使うことを想定していますが、
プロジェクト特有の話は少しです。
代表的な機械学習の手法を紹介。
効果検証として、
検定
や
因果推論
。
機械学習を使わない分析として、Kickstarterを使ったExcelベースやのデータ分析。
「データで話す組織 プロジェクトを成功に導く「課題発見、人材、データ、施策実行」4つの力」 大城信晃 他 著 技術評論社 2023
データ分析の専任チームを作るアプローチの本です。
第2章として、現状把握の大切さの説明に1つの章を使っているのは、この本の特徴です。
現状把握するものして、社内業務、意思決定プロセス、事業課題、アクションのための情報収集、情報システム部門、ステークホルダー、外部人材の活用、情報セキュリティ、社内システム、データを挙げています。
順路 次は 業務フロー