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人の質的研究

質的社会調査は、個人をその個人の立場で調べ、背景にある社会を見て行くアプローチをします。

質的研究

質的研究は、質的社会調査の特徴的な方法です。 個人について、その個人の見方で社会を見ます。

また、質的研究は、社会調査以外にも、対象そのものを深く理解する方法として使われます。

質的研究とテキストマイニングの関係

テキストマイニング は、名前の通りでテキストを分析する方法です。 質的研究でも、テキストデータを分析することがあります。 ただし、テキストマイニングのように単語単位でばらばらにしてから、テキストを理解するアプローチが中心になっていないです。

質的研究は、テキストを理解、要約、まとめ、という分析をします。

質的研究を効率的に進めるソフトはQDAと呼ばれていて、RでできるRQDAというものもあります。(筆者は触ったことがありません。)

量的社会調査

データサイエンス では、データの種類の分け方に「質的・量的」があります。

「量的社会調査」の代表的なものは、 アンケート・感性評価 ではないかと思います。

アンケートは、アンケートを設計する時点で、調査をする人が持っている物の見方が影響します。 このため、単に質的・量的という違い以上に、質的社会調査とは異なっているものになっています。



参考文献

質的研究

質的モデル生成法」 やまだようこ 著 新曜社 2020
質的研究が生まれた経緯として、口述されるものへの回帰、特殊なものへの回帰、ローカルなものへの回帰、時間的なものへの回帰を挙げています。
著者の研究活動を振り返りながら、質的研究法の歴史や考え方を述べています。
壮大な内容ですが、以下は、筆者が読み取ったことになります。
・質的研究では、言語を重視する。画像データも扱ったとてしても、言語化していこうとする。
・言語として表れているものからモデルを抽出しようとする。
・言語データは、研究者と、対象者の関係性から生まれたものであることを念頭におく。
・数値データの分析では、共通部分を読み取って、それ以外は誤差のようにして扱う。  言語データの分析では、共通していない部分も含めた全体が何かを表していると考え、そこからモデルを抽出しようとする。


人生心理学 生涯発達のモデル」 やまだ ようこ 著 新曜社 2020
ひとりの人生から、社会の中のひとりとしての人生に焦点を当てています。


質的データ分析法 原理・方法・実践」 佐藤郁哉 著 新曜社 2008
タイトルに「質的データ」とありますが、テキストデータの他に、映画、写真、絵画、彫刻、楽譜、振付譜などを指しています。 この本では、特にテキストデータを扱っています。 筆者は、「質的変数を含むデータの分析法」の本と思って読み始めたのですが、 「テキストデータの分析法」でした。
さらに、「テキストデータの分析法」と言っても、テキストを単語レベルに分けてから分析するテキストマイニングではないです。 この本では、「コーディング」としていますが、長いテキストを部分ごとに要約することで、原文の情報を見失わずに、分析していくところからになっています。 この後で、ストーリーを組み立てると、分析結果になり、論文にもなります。 いわゆるテキストマイニングは、元のテキストを単語レベルに分解してから、統計的に分析していくのに対して、 この本の質的データ分析法は、コーディングしてからも、元のテキストとは何度も行き来をして、分析を進める方法としています。 こうすることで、質的研究の論文にありがちな、説明不足や、偏った見方を避けます。
また、「質的データ分析法」となっていますが、内容をそのままタイトルにするのなら、 「質的研究の方法と、その論文作成の方法」とした方が誤解がないかもしれません。 著者の問題意識は、質的研究の論文の作り方にあり、そこをゴールとして、テキストデータの分析方法の話につながっています。
この本の分析法は、原文を隅々まで分析者が読み込んで、分割、要約、分類、再構成といった作業を何度も行ったり来たりしながら、精度を高めて行くものです。 この作業を効率的に進める方法として、QDAソフトと呼ばれるものがあるそうで、この本では、「MAXqda」というソフトを紹介しています。


質的研究法 臨床心理学をまなぶ」 能智正博 著 東京大学出版会 2011
臨床心理学の研究手段としての質的研究法の本です。
この本のデータは、研究者と対象者との会話から生まれるインタビューです。
・語られる内容には、それが語られる背景があるので、単純に出て来た言葉だけで考えない。
・インタビューの場合は、聞き手の聞き方に依存したデータにもなる。
・インタビューを文字データにする場合、「間」など、文字にならない情報もある。
・質的データの分析では、分析者の物の見方やとらえ方を自分で客観的に見るようにしていくことも大事。


質的研究入門 <人間の科学>のための方法論」 ウヴェ・フリック 著 春秋社 2011
600ページ以上もある本です。 質的研究と量的研究の組合せ方、質的データの種類、研究方法の種類について、それぞれを対比できる形で体系化しています。
テキストデータは、部分毎にラベルを付けて、後で参照しやすくする。


質的調査法を学ぶ人のために 」 北澤毅・古賀正義 著 世界思想社 2008
質的調査の個々の方法について、意味を論じている感じでした。


社会科学の考え方 認識論、リサーチ・デザイン、手法」 野村康 著 名古屋大学出版会 2017
社会科学の方法として、事例研究、実験、横断的・縦断的研究(多変量解析的な研究)、インタビュー、エスノグラフィーは・参与観察、アンケート、言説分析を挙げています。
方法論は、その方法は、事実や対象者とどのような関係にあるのかの話もあります。 エスノグラフィーは、客観性を重視する実証主義の方法ではなく、非実証主義の方法です。 研究対象を長い期間関わることによるメリットがありますが、この本では研究対象と一体化してしまうことで、 研究対象の物事の考え方から出られなくなるという指摘もあります。


質的社会調査の方法 他者の合理性の理解社会学」 岸政彦・石岡丈昇・丸山里美 著 有斐閣 2016
「質的社会調査」の本ですが、質的についての話はそれほど多くはなく、社会調査とは何かや、社会学とは何かという点の本になっています。
副題に「他者の合理性の理解」とありますが、この本で力説されているのは、 自分にとは大きく異なる生き方をしている集団や地域について、それが合理的になっている理由を理解しようとして調査をしている点でした。
データの分析の仕方ではなく、データを取るための手段や心構えについて、詳しく書かれています。


日記とはなにか 質的研究への応用」 アンディ・アラシェフスカ 著 誠信書房 2011
調べたい対象者から、調査の影響を与えずに情報を得るための方法として日記を使っています。
もともと書かれていた日記を研究のために使う場合と、 書いて欲しい内容を決めて書いてもらった日記を使う場合に分かれます。 後者については、自由記述欄のアンケートと似ていました。
この本の質的研究では、「行為者の立場になって、行為者の行動を理解する」という考え方は出て来ません。 知りたい内容の記述の発生回数を調べて、統計的に調べるのがこの本の研究の仕方でした。
テキストマイニングの方法では、「ほぼ同じ内容だけれども、使われている言葉や表現・文体が違う」ということを数えるには、 相当な量の学習データがないとできないと思いますが、この本の場合は、その部分は人がやってしまうことで研究が可能になっているように見受けられました。


「行動観察」の基本」 松波晴人 著 ダイヤモンド社 2013
商品やサービスを開発するための最初の段階として、行動観察を解説しています。 当事者の場に、自分も身をおいて、当事者の視点や考え方を把握することが、変化が激しく、過去の経験では判断ができない時に役に立つ、としています。


災害対応と近現代史の交錯 デジタルアーカイブと質的データ分析の活用」  佐藤慶一 著 共立出版 2024
地震、疫病、戦争といった災害を振り返り、それらがどのように語られたのかを調べています。 そこから、防災につなげようとされています。


エスノグラフィー

エスノグラフィー入門 <現場>を質的研究する」 小田博志 著 春秋社 2010
実際に調査をする学生向けの入門書です。柔らかな文体で、非常に読みやすい本でした。
・エスノグラフィーは、自分にとって、「異」となることを理解する研究。
・エスノグラフィーは、ディティール(細部)にこだわる。細部に答えがある。
・エスノグラフィーは、文脈(経緯や歴史)から抜き出して来るのではなく、文脈の中で理解しようとする。
・現場の調査は、「教えていただく」姿勢。調査する相手の都合や権利が第一。
・「問題」とは、「うまく説明できない何か」
・基本的に現地に行って研究するが、歴史的な事実の研究では、文献の調査が中心になることがある。
・素材が主、道具は従。分析を、既存の理論の当てはめの作業にしない。


最強の社会調査入門 これから質的調査をはじめる人のために」 前田拓也 他 編 ナカニシヤ出版 2016
「聞いてみる」、「行ってみる」、「やってみる」、「読んでみる」の4部構成になっていて、それぞれの中の章で、執筆者が違います。 16人の著者による、それぞれの社会調査の体験談を集めた本になっています。
共通しているのは、素人、新参者、初心者といった立場で、自分にとって馴染みのない事柄の世界に入ることになっていました。 そこから、社会学的な研究として価値のあるものが生まれてくるようです。


自閉症という知性」 池上英子 著 NHK出版 2019
自閉症 のある人は、インタビューによる調査は、環境をコントロールしたラボでの実験に参加してもらうことが難しいので、 当事者によって、自然で心地よい環境に著者の方が入って、そこで調査する方法を使っています。
そのひとつが、デジタル・エスノグラフィーで、著者自身が仮想空間のアバターとなって、自閉症のある人がコミュニケーションをしている環境に入っています。


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