「アトラクタ(Attractor)」の動詞形は、「アトラクト(attract)」で、「引き寄せる」という意味です。 カオス の現象は、どうなっていくのかがわからないような現象のこともありますが、 アトラクタはある意味、秩序ある状態です。 アトラクタは、カオス現象を制御したり、特徴を捉えたりする上で、重要なものです。
アトラクタで一番わかりやすいのが、平衡点で、実用上は「安定点」として、重要です。 これは、「点」に状態が落ち着くアトラクタです。
リミットサイクルは、初期値の大きさに無関係に、一定振幅、一定周波数の周期解を持ちます。 この性質は、発信器に利用されているそうです。
周期運動は、sin(サイン)やcos(コサイン)で表現できる運動です。 振動現象や波動現象があり、周期性を分析するための フーリエ解析 は、必須の知識です。
平衡点のアトラクタは違いますが、リミットサイクルや、ストレンジアトラクタは、 周期運動の一種です。 しかし、sinやcosできれいに表現できる周期運動ではありません。 この意味で、「準周期運動」と言えます。
「線形現象は、非線形現象の特別な場合」、と考えることができますが、同じように、 「周期運動は、準周期運動の特別な場合」、と考えることができます。
地球は昼と夜の繰り返しや、一年という周期があるように、周期性があります。 一年の周期は、まったく同じ状態に戻るわけではないので、 周期性とは言えないかもしれませんが、準周期性があります。
GDP 等、世の中には尺度がいろいろありますが、定常的な状態を評価するものが多いようです。 筆者は、「 持続する社会 の評価には、準周期性の尺度もたくさん必要ではないか。」、と考えています。
「非線形制御」 平井一正 著 コロナ社 2003
非線形の
制御工学
の本です。
リミットサイクルについて、詳しいです。
リミットサイクルの存在定理 − ポアンカレ・ベンディクソンの定理 −
環状領域の内部と境界上に平衡点を持たず、解軌道が常に領域の内部に向く時には、
領域の内部に少なくとも一つの安定なリミットサイクルが存在
リミットサイクルの否定定理 − ベンディクソンの定理 − 符号が変わるかどうかで存在を判断
記述関数法 − リミットサイクルの存在を推定する、近似的な方法。
記述関数を解析して、解の有無を調べる。解があれば、リミットサイクルがある。
記述関数とは、伝達関数の拡張概念。入力の角周波数と、入出力の位相差、入力の振幅で作った複素関数。
「カオスと時系列」 松本隆 他 著 培風館 2002
アトラクタのいろいろな特徴が載っています。
「基礎からの力学系 :分岐現象からカオス的遍歴へ」 小室元政 著 サイエンス社 2005
徐々に次元を増やしたアトラクタの解説があります。
順路 次は 複雑系