フーリエ変換は、 データサイエンス の道具として使うなら、 スペクトル解析 が一番の使い道と思います。 データを別の尺度に変換することで、データを扱いやすくしたり、データ分析をしやすくします。
もうひとつの使い道としては、直接的には データサイエンス とは言えないかもしれませんが、現象を数式で分析したり、数式で現象を処理しやすくする方法としても使えます。
フーリエ級数は、三角関数(sin や cos)の和で、関数を近似する方法です。 フーリエ級数の係数が、各周波数の大きさを表します。
区間が決まっているか、周期的な関数に対して有効です。
空間軸は、どの方向にも無限に伸びていますが、 たとえば、画像データのように、範囲が決まっていることがあります。 時間軸は、過去にも未来にも無限の領域がありますが、実際のデータは、有限の時間のものしかありません。 このため、区間を想定することができます。
周期関数で近似すると、ひとつの区間の式が、区間毎に繰り返すことになりますので、 区間の外について 外挿 すると、現実にはあり得ない状況を予測値として計算します。 この近似の場合は、 外挿 は禁止になります。
フーリエ級数の実用的な使い道は、データの特徴を、各周波数の大きさで見てみる使い方です。 スペクトル解析 と呼ばれています。
現実の時間や空間には切れ目はありませんが、データは、各地点の値です。 このため、離散値のための理論が、データを直接扱う理論にもなります。
実際のデータから、各周波数の大きさを求めるには、離散フーリエ変換を使います。 RapidMinerやExcel には、「Fourier transformation(フーリエ変換)」や、「フーリエ解析」という名前で、データを周波数のデータに変換する機能がありますが、 それらは離散フーリエ変換です。
離散フーリエ変換では、データは等間隔にサンプリングされている事が前提になっています。
離散フーリエ変換をすると、たまたま偶関数になっている時以外は、 フーリエ変換後のデータは、複素数になっています。 1つの周波数に、実数成分と虚数成分の2つの数字が出て来ます。 そのままでは解析が進まないので、複素数の絶対値を計算する方法もありますが、複素数の扱いは不便です。
離散コサイン変換は、元の関数を偶関数になるように変換してしまってから、 離散フーリエ変換をする方法です。 こうすると、フーリエ変換後のデータが、実数だけになります。
元の式が空間や時間の関数の場合、 フーリエ変換は、周波数の関数に変換します。 空間や時間の関数でなくても、周波数に相当するものの関数に変換する方法として使えます。 ラプラス変換は、周波数ではないのですが、やはり別の次元の関数に変換します。
変換する事で、数式が扱いやすくなったり、見通しが良くなったりします。
(連続値の)フーリエ変換や、ラプラス変換には、区間や周期性の前提がないのが特徴です。
式の形で言えば、ラプラス変換は、フーリエ変換の式に少し追加をしたものになっています。 フーリエ変換は「周波数の関数」と説明できるのですが、ラプラス変換は「周波数」に相当するものが複素数になるので、 イメージしにくくなっています。
ラプラス変換は、 微分方程式 を解く方法として説明される事が一般的です。 フーリエ変換も、微分方程式を解く方法になります。
微分方程式をラプラス変換すると、代数方程式(微分積分のない方程式)になります。 代数方程式を変形して簡単な式にしてから、逆ラプラス変換すると、微分方程式の解が求まるようになっています。 ラプラス変換をして、最終的にY=G*Xの形になると、解の見通しが良くなります。
(1) 式の両辺をそれぞれ変換
(2) 「F(s) = 」の形になるように、式を変形
(3) 式の両辺を逆変換
ラプラス変換は、制御システムを数学的に扱うのに便利です。 特に古典的な 制御工学 の中では、かなり文献があります。
「道具としてのフーリエ解析」 涌井良幸・涌井貞美 著 日本実業出版社
ラプラス変換を勉強していて、気になる事が、端的にまとまっています。
ラプラス変換は、フーリエ変換の拡張。
フーリエ変換と違って、積分が収束しない問題が起こらないので、より実用的。
また、ラプラス変換の方が、式が簡単になる。
ラプラス変換のsの空間は、複素数。
フーリエ変換は、単調な波で関数を表す。
ラプラス変換は、指数関数的に発散する波で関数を表す。
これによって、積分の発散を防ぐ。
データから周波数成分を抽出するのが、離散フーリエ変換。
実際のデータは有限の時間のデータなので、「フーリエ変換」という名前だが、実体はフーリエ級数と同じ。
離散コサイン変換は、サンプリングのポイントを(D/2)にしていくと、データを折り返した時に、データが失われない。
これは時間のかかる計算なので、改良したアルゴリズムが、高速フーリエ変換(FFT)。
δ関数(瞬間的な値)を入力にして、出力を解析すると、すべての音声に対する出力信号がわかる。
「今日から使えるラプラス変換・z変換」 三谷政昭 著 講談社 2011
ラプラス変換とz変換を、並行しながら、解説しています。
事例は、電気回路が中心です。
ラプラス変換は、アナログ・システムを記述する微積分方程式を解くための強力な解法。
z変換は、ディジタル・システムを表す差分方程式を解くためのテクニック。
両者は、とても似ている。
ラプラス変換のsは、微分を表す。
1/sは、積分を表す。
「やさしく学べるラプラス変換・フーリエ解析」 石村園子 著 共立出版 2010
積分の復習から始まって、ラプラス変換になり、フーリエ変換につながります。
例題が多いです。
波動方程式、熱伝導方程式、ラプラス方程式という、物理学の有名な式の解法もあります。
「ラプラス変換」 國分雅敏 著 共立出版 2011
数学の本としてまとまっている感じの本です。
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