ヨーロッパでは、四元素説ができました。
四元素説そのものは、現代において何かの役に立っているものではないです。 しかし、物事の関係や、性質を解釈するための方法として、 四元素説の考え方は、参考になります。 また、現代の化学は、四元素説を通過点として、築かれてきたものです。 五行説 は、こういう発展の仕方をしていません。
四元素説では、空気・土・火・水の配合によって、物質ができているとします。
さらに、「火と空気の共通の性質として熱がある。」という考え方もします。 共通の性質を簡単にまとめると、 「火・空気 − 熱」・ 「空気・水 − 湿」・ 「水・土 − 冷」・ 「土・火 − 乾」となります。
硫黄・水銀・塩の3つの物質で、すべての金属ができているとする説です。
「金属」がヨーロッパの人たちの関心事項であったことが、
こういう説からも想像できます。
水銀は現代の
環境法
でよく出てくる規制物質です。
中国でも錬金術(中国では錬丹術と呼びます)があったものの、
金を作ることには熱心でなかったそうです。
むしろ不老不死の薬の方が、興味の対象だったそうです。
錬金術を化学史で見ていると、近代化学の前身として読める部分と、
「賢者の石」(卑金属を貴金属に変換できると言われた伝説上の物質)のように、
滅茶苦茶な部分が混ざっていて面白いです。
近代において錬金術は消えてしまいましたが、元素を変換して金を作るという当初の目的は、
20世紀に成功しているそうです。しかし、費用がかかり過ぎるので、お金儲けができる技術ではないそうです。
四元素説は、今となっては間違いの理論です。 ただ、物事を要素に分解していくことや、要素の属性を考え、属性の共通性を見るという考え方は、 今も生きていますし、今後、消えていくようなものではないです。
五行説 と四元素説は土・火・水が同じですが、これらに対する考え方がまったく違います。 一番わかりやすい違いは、五行説が「行」で、四元素説は「元素」であることです。
中国で発達した五行説は、医療で発達し、今も残っています。 一方、四元素説はなくなってしまいました。 ただし、四元素説は、現在の約100種の元素の発見につながり、現代化学の発展に寄与しています。
五行説 | 四元素説 | |
研究の中心地 | 中国 | ヨーロッパ |
目的 | 健全な生活 | 物質変換(錬金術) |
要素間 | 相剋や相生の関係 (有向) |
共通の性質 (無向) |
要素の集まり (全体)の見方 |
要素間の関係や、 それらの調和 |
要素の配合で、 各物質ができる |
発展の仕方 | 肯定され、現在に至る | 否定され、現代化学に変貌 |
このサイトの趣旨に沿って、 環境 の分野で、つながりを扱う方法として考えると、四元素説は当てはまりません。 五行説が良さそうです。
「鋼の錬金術師」 荒川弘 著 スクウェア・エニックス 2002〜2010
錬金術が出てくるマンガです。
「錬丹術」や、
風水
に出てくる「龍脈」という言葉は、この本を読んで初めて知りました。
「入門化学史」 化学史学会 監訳 朝倉書店 2007
「化学の歴史T」 大野誠・梅田淳・菊池好行 訳 朝倉書店 2003
錬金術から、現在の化学までの流れを解説しています。
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