トップページ |
ひとつ上のページ |
目次ページ |
このサイトについて | ENGLISH
三重指数平滑法は、 単純指数平滑法 を発展させたものです。 季節性も扱えるので、近年紹介されることが増えた、 Prophet に近い分析ができます。 また、データの差分について適用すれば、 SARIMAモデル に近い分析もできます。
私見ですが、数学的な研究対象としては、SARIMAモデルが面白いです。 三重指数平滑法は、実務向きです。 Prophetは、周期性、トレンド、イベントが共存しているような現象には、一番良い感じです。
ホワイトノイズモデルやランダムウォークモデルを使った予測では、予測する時に、直近の最新の値を使います。 ホワイトノイズモデルは、直近までの平均値です。 ランダムウォークモデルは、直近の値そのものです。 ばらつきの大きさがわからないので、それは予測に含めず、直近まででわかった情報の範囲で予測します。 この点は、単純指数平滑法も同じです。
「トレンド」というのは、上昇傾向や下降傾向がある場合をいいます。 例えば、上昇傾向がある場合に、単純指数平滑法で予測すると、ほぼ間違いなく、予測値が実測値より低くなります。 下降傾向でも同様です。
そのため、トレンドがあるとわかっているのなら、トレンドの分も加味した方が、予測値の精度が上がります。
二重指数平滑法は、トレンドを加味する方法です。
比較すると、下のグラフのようになります。
単純指数平滑法では、トレンドが考慮できない様子がわかります。
二重指数平滑法では、トレンドがうまく検出できないことがあります。 その弱点については、 トレンドの、局所モデルと大局モデル で説明しています。
最後に、三重指数平滑法ですが、これは季節性(周期性)を、二重指数平滑法に加えています。
三重指数平滑法には、加法型と乗法型があります。 加法型は、各項が足し算の形で組み合わさっています。 乗法型は、掛け算です。
「対数にすると、掛け算を足し算に変換できるので、加法型と乗法型は同じ」と考えることができますが、 実際は違います。
まず、加法型が適していて、乗法型が合わない例です。
下の例では、加法型は実測値の延長のような形で、もっともらしい予測ができています。
乗法型は、振幅が大きくなってしまっています。
次に、乗法型が適していて、加法型が合わない例です。
下の例では、乗法型は実測値の延長のような形で、もっともらしい予測ができています。
加法型は、おかしな予測になっています。
加法型は以下の式です。
三重指数平滑法があまり知られていない理由ですが、おそらく、三重指数平滑法よりも、ARIMAモデルの方が多くの研究者を引き付けたことが理由です。
ARIMAモデルは、抽象化や一般化がしやすいので、数学的な研究対象として面白いです。
一方、三重指数平滑法は、抽象化や一般化がしにくいので、数学的な研究対象になりにくいです。 これがマイナーな理由と思います。
ところで、三重指数平滑法は、直近のデータを重視する予測の方法として作りこまれた感じの理論なので、 ARIMAモデルよりも使い勝手が良く、予測の方法としては実務向きです。
Excelの予測シートに三重指数平滑法が採用されたのは、これが理由ではないかと思います。
三重指数平滑法も Prophet も、一言で表した時に、「季節性を扱える」という点は同じですが、扱える季節性の性質が異なっています。 その点については、 季節性の、局所モデルと大局モデル で説明しています。
Excelでは、三重指数平滑法が非常に簡単に使えるようになっています。 このサイトでは、 Excelで三重指数平滑法 のページで説明しています。
例えば、下の分析例は、東京の平均気温です。
12か月の周期がありますが、その周期を考慮した予測をしていることがわかります。
ちなみに、この関数は、「12」という周期を自動で判断して、考慮してくれます。
季節性がなければ、二重指数平滑法でモデルを作ってくれます。
Excelでは、加法型が使えます。 また、予測値は中心値だけでなく、予測区間も出力されます。
「Forecasting: principles and practice, 3rd edition 予測: 原理と実践 (第3版)」 Hyndman, R.J., & Athanasopoulos, G. 著 OTexts 2021
https://otexts.com/fppjp/ets-forecasting.html
8章が、三重指数平滑法になっていて、詳しく説明されています。
順路
次は
外生変数付き三重指数平滑法(ETSXモデル)
