物理的な物については、温度、時間、距離、といった尺度で、それがどのようなものかを表せます。 温度計、時計、定規、など、測定の道具もあります。
一方、心理的なものについては、こういった尺度が明確ではないです。 例えば、同じ「明るさ」でも、光の「明るさ」は測る方法がありますが、性格の「明るさ」は、「測ってください」と言われたら、困ってしまいます。
そのような尺度を計算する方法は、「尺度構成法」と呼ばれています。 数量化理論 とも呼ばれます。
SD法 のように、直接的に測りたい尺度の数字を聞いて調べる方法は、「直接法」と呼ばれます。 例えば、性格の明るさだったら、 「明を7、暗を1としたら、いくつになりますか?」というようにして、測定します。
直接法も尺度構成法の一種ですが、間接法の方が、 データサイエンス 的に複雑ですし、様々な方法が提案されています。 以下、このページで「尺度構成法」と書いている時は、間接法のことです。
ちなみに、物理的、心理的に関わらず、尺度の値を見積もる方法に、 フェルミ推定 があります。 フェルミ推定の場合は、知りたい尺度の数理的な構造を検討して、見積りが可能な部分を集めることで、知りたい尺度を見積もります。
実験計画法
では、データを集める時に必要な方法と、集めたデータを分析する方法に分かれていて、それらを組み合わせて使います。
尺度構成法は、データを集める時の方法と、集めたデータを分析する時の方法を組み合わせている方法になっています。
質的変数は、このままでは数値的な扱いができないです。 クロス集計 をして、集計データを扱うように進めるのがひとつの方向です。
別の方向性としては、 ダミー変換 をして、量的変数の方法を使えるようにする方法があります。
クロス集計 でも ダミー変換 のいずれも、いったん数値にまとまると コレスポンデンス分析 などを使って、変数の中のカテゴリについて、尺度(数値)を与えることができるようになります。
心理的な尺度は、1回で精度の高い値を得るのが難しいです。 また、尺度自体のあいまいさもあります。 そのため、同じ測定を何度もして、サンプルを増やせば良いものでもないです。
2値変数のグループを、1つの連続変数に変換 や 質的変数のグループを、1つの連続変数に変換 は、似たような尺度をまとめることで、尺度自体のあいまいさにも対応した方法になっています。
SD法 では、相反するものを伝えて、その間のどこなのかを質問します。 こういう質問の仕方をすると、だいたいどの位置なのかは答えやすいです。
SD法では、相反するものを対にしますが、「りんご・みかん」や、「A案・B案」のように、必ずしも反対の関係ではないものについても、 比べるものが2つだけだと、どのくらい似ているかや、どちらがどのくらい大きいのか、といったことを、感覚的な見積りで答えやすくなります。
「明・暗」のように反対の概念のデータというのは、尺度構成法としては直接法です。 一対評価のデータが得られると、その後のデータ分析は、いわゆる表データの分析になって、 グラフで調べたりできます。
「りんご・みかん」や、「A案・B案」のようなカテゴリは、3つ以上あるのが普通です。
並列概念については、2つの組合せについて、すべての組合せを調べます。 そうすると、距離行列や一対比較行列が得られます。
距離行列については 多次元尺度構成法 、 一対比較行列については AHP を使うと、「りんご5.3、ミカンは3.1」のように、尺度が構成されて座標のデータが得られます。
ちなみに、一対評価のデータの使い道としては、尺度構成法以外に ネットワークグラフ を使った ネットワーク分析 があります。 ISMとDEMATELは、こちらの仲間です。
データサイエンスの比較的新しい文献で「多次元尺度構成法」や「MDS」という解説がある時は、 距離データからの尺度構成法のことが多いです。 高次元を2次元に圧縮して可視化 の方法のひとつとして紹介されることが多いです。 この意味の時は、狭義(狭い意味)です。
心理などの直接的に測定することができない物について、尺度を構成する話も多次元尺度構成法ですが、
「多次元尺度構成法」とは呼ばれずに、単に「尺度構成」や「尺度構成法」と呼ばれることが多いです。
この意味の時は広義で、狭義の多次元尺度構成法もこの中に含まれます。
「一般化等質性分析による質的データのための尺度構成法」 土屋隆裕 著 土屋隆裕 1997
博士論文です。国立国会図書館のデジタルコレクションで一般公開もされています。
https://dl.ndl.go.jp/pid/3158293/1/1
尺度構成法の分類があります。
「社会調査の実際 統計調査の方法とデータの分析」 島崎哲彦・大竹延幸 著 学文社 2019
尺度構成とは、尺度を使って調査対象を数値化して測定するための方法と説明しています。
7段階のどれに近いのかを選ぶ、などの質問の仕方の方法論と、そこで得られたデータについての、因子分析などの分析方法がセットになったものが、尺度構成法です。
「計量心理学 講座 心理学 第2巻」 田中良久 編 東京大学出版会 1977
タイトルにもありますが、心理をどのように定量的に扱うのかが検討されています。
尺度構成法という章があります。
人の心理的な動きについて、どのような尺度で測るのか、といったことが検討されています。
「音響聴覚心理学」 大串健吾 著 誠信書房 2019
音の大きさは、物理量として測れるものの、音色や音の良さは、主観的な測定になるということで、
SD法と因子分析の組合せがよく使われるそうです。
「尺度構成 心理学研究法 16」 田中良久 著 東京大学出版会 1973
名義尺度、序数尺度(順位尺度)、距離尺度・比尺度、多次元尺度という順で、説明されています
順路 次は 比や差による一対評価