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ランダムウォークモデル

複雑な動きをしている折れ線が10種類あります。 ヒストグラム を見ると、平均値の位置も、ばらつきの仕方もかなり違います。
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それぞれの変数について、ひとつ後の値との差を計算して、 速度データ を作ります。

すると、複雑に見えていたデータですが、速度データにすると、同じ現象らしいことがわかります。
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速度データは ノイズ に見えますので、速度データのモデルは
速度(=X(t+1) - X(t)) = 平均が0で標準偏差が1くらいになっている正規分布の乱数
になっているらしいことがわかります。

よって、元のデータは、
X(t+1) = X(t) + 平均が0で標準偏差が1くらいになっている正規分布の乱数
であることがわかります。 実際、このモデル式で、このデータを作っていますので、この推測の仕方は正解です。

このモデルでは、次の位置が、元の位置を基準にしたランダムな位置になります。 「ランダムウォーク」、「酔歩」、「千鳥足」と呼ばれます。 なお、ここでは、次の値がプラス側にもマイナス側にもランダムに決まり、移動量がランダムな正規分布になっているモデルで、 ウィーナー過程と呼ばれています。 ランダムウォークモデルと呼ばれているものには、移動量は一定で、向きだけがランダムなものもあります。

ランダムウォークモデルは、 時系列ばらつきモデル の中では、とてもシンプルなものです。 ランダムウォークモデルで作られるデータは 正規分布 ではありませんが、 正規分布から作られる分布 の一種になります。

ランダムウォークモデルの使い道

ランダムウォークモデルになっていれば、 自己単相関 も高くなって来ます。

自己単相関が高いと、 現在のデータを次のデータの予測値にする方法が使えるようになります。 さらにランダムウォークモデルと言っても良い状態なら、 次のデータの予測値は、中心値が現在のデータになることだけでなく、そこからどのくらいばらつくのかもわかります。

ばらつきが予測できるので、次の値が実際に取れた時に 外れ値かどうかの判定 ができます。

元のデータを見ると、「どうしようか・・・」となるような現象でも、 速度データ が正規分布になっているという単純な法則が当てはまる場合は、 速度データ が正規分布になっていることを使って、シンプルで効果的な対策が立てられます。

見せかけの回帰

UとVという独立した変数があるとします。

独立の定義は、
P(UV) = P(U)P(V)
です。

独立していると、共分散は0になります。 共分散が0ということは、相関係数は分子が共分散なので、相関係数も0になります。
random walk

話は変わりますが、UとVから作られるXとYという2つのランダムウォークがあったとします。
random walk

以下からわかるように、XとYにも独立の関係があります。
random walk

そのため、XとYの相関係数は0になるはずですが、実際はそうなりません。 「XとYが独立、かつ、サンプル数は十分多い」となっていたとしても、相関係数は0にはならず、-1から1まで幅広い値になります。 この現象は、「見せかけの回帰」と呼ばれています。



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