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利益と付加価値の分析

利益と付加価値は、日常的には異なった意味で使われます。

会計的には、同じ式を使って計算されたものが、「利益」と呼ばれたり、「付加価値」と呼ばれたりすることがあります。

利益

営業利益や経常利益といった種類がありますが、大まかには、利益とは、
利益 = 売上高 − 費用
です。

スループット

制約条件の理論 では、独自の視点で、スループット、利益、直接材料費、在庫、業務費用が定義されています。

スループット = 売上高 − 直接材料費
※ 通信や生産の分野では、「スループット = 単位時間当たりの処理量」という意味ですが、ここでの意味は違っていて、利益の一種です。

利益 = 売上高 − 直接材料費 − 業務費用

直接材料費は在庫であり、業務費用は在庫を売上に変えるために使う費用です。

損益分岐点とCVP分析

費用は、固定費と変動費があります。

販売数量が少ないと、固定費が売上を上回るため、利益がマイナスになります。 たくさん売れると、固定費と変動費の合計よりも売上が上回るようになり、利益がプラスになります。 利益がちょうどゼロになる販売数量が損益分岐点です。

CVP分析は、Cost(原価)、Volume(数量)、Profit(利益)の略で、これらのCとVが変化したときのPの変化の 予測とシミュレーション をします。

直接原価によるCVP分析

「直接原価」とは、変動費のことです。 直接原価と対比されるのは、「全部原価」や「総費用」と呼ばれるもので、変動費と固定費の合計です。

直接原価と売上の関係は、比例関係として見ることができるので見通しの良い分析になります。 また、売る力だけをシンプルに分析できるようになります。

付加価値

「付加価値」は、「商品の付加価値」のようにして、定性的な特徴を説明する時に使われることもある言葉ですが、 財務会計 では、お金の単位で計算する方法が定義されています。

付加価値と企業価値

付加価値は、 企業価値 と名前が似ているだけでなく、企業価値の大事な要素として、その企業がどれだけの付加価値を出せているのかがあります。

付加価値会計における付加価値

付加価値会計における付加価値は、
付加価値 = 売上高 − 変動費
で計算します。

売上と変動費の関係の分析

CVP分析における直接原価計算の活用、スループット会計、付加価値会計では、着目の経緯は違いますが、
売上高 − 変動費
の関係を分析対象にしている点が共通しています。 これが「利益」と呼ばれたり、「付加価値」と呼ばれたりしています。



参考文献

付加価値会計

図解!製造業の管理会計「最重要KPI」がわかる本 会社を本当に良くして事業復活するための徹底解説」 吉川武文 著 日刊工業新聞社 2020
以前から重視されて来たKPIについて、問題点と新しいあり方を説明する形で章が作られています。
従来から製造業では、最重要KPIとして、利益や利益率を見ていることは、大きな問題があるとしています。 利益は、株主のものなので、従業員のモチベーションが上がらないことや、 また、利益を良く見せるために、他を悪くすることもできることを問題点として挙げています。


技術屋が書いた会計の本」  吉川武文 著 秀和システム 2016
・「利益計画を立てなさい」:まず、売上から総費用(変動費+固定費)を引くCVP分析を紹介した後で、売上から変動費を引くCVP分析を紹介して、後者を「付加価値法」と紹介しています。


従来の財務会計+αの管理会計

道具としてのアカウンティング」 花野康成 著 日本実業出版社 2006
様々な指標が丁寧に紹介されています。 中小企業を意識した記述が多いです。
損益分岐点分析や、CVP分析を簡単にする方法として、直接原価計算を解説しています。


戦略管理会計」 西山茂 著 ダイヤモンド社 2009
直接原価計算は、企業の実体をより明確に表す集計方法として紹介しています。


組織を活かす管理会計 :組織モデルと業績管理会計との関係性」 伊藤克容 著 生産性出版 2007
この本の主題とは少しズレますが、目的と手法の関係がコンパクトにまとまっていました。
・短期の利益計画作成 : CVP分析、予算編成
・利益管理の統制 : 予算実績差異分析
・原価管理 : 標準原価計算、変動予算
・短期の意思決定 : 差額原価収益分析
・長期の意思決定 : NPV、IRR


わかる!管理会計 :経営の意思決定に役立つ会計のしくみを学ぶ」 林總 著 ダイヤモンド社 2007
・この本の「コスト」は「原価」のこと。「費用」とは異なる。
・原価計算や中期経営計画の話が詳しめ。


管理会計・入門 戦略経営のためのマネジリアル・アカウンティング」 浅田孝幸 他 著 有斐閣 2017
原価の計画や、事業戦略です。


ドラッカーと会計の話をしよう」 林總 作 横山アキラ 画 中経出版 2011
ドラッカーは 経営学 だけでなく、会計についても深い考察をしていたという所から始まります。
---利益」と「儲け」---
・利益 = 売上と費用の差 → 恣意的な調整ができるので、データとして信用できない。
・儲け = キャッシュフロー(現金) → データとして信用できる。
・価値を作り出すことが利益を生む。
・利益 = @事業の判定基準、A将来のリスクに備える保険、B資金調達の誘因
---コストについて---
・製品には、寿命があるから、寿命の中のどの時期なのかを考えて、コストをかける重みを考える。
コストは、無駄に使われたのか、利益を生むのに使われたのかを見極める。
・損益計算書の欠点 : お金の使い方がわからず、使った金額だけわかる。
・原価 = 材料の仕込みから現金代金を回収するまでの通しコスト。このような原価計算ではプロセス全体を見る。 ABC原価計画で実現できるようになった。
従来の原価計算は生産時のコストのみ。これは肉体労働が製造業のコストの主体だった時に有効だった。
---価格について---
製品の価格は顧客が決める。 顧客が妥当だと思う値段で、買ってくれる。
売り手は自分のコストだけを考えて価格を決めたがるが、 顧客は買う事に伴うプロセスのコストも支払っている。


付加価値を重視した経営

キーエンス 高付加価値経営の論理 顧客利益最大化のイノベーション」 延岡健太郎 著 日経BP日本経済新聞出版 2023
・顧客の利益の最大化を考える。これによって、社会に貢献する企業となる。 そのためには、顧客を先生として、顧客の工場の熟知を徹底する。 また、商品の提供も迅速。
・付加価値で、自社の利益を得る。 付加価値とは、追加の機能のような意味ではなく、原材料に上乗せしたものの意味。 これが明確なのが、高利益率につながっている。
・ロジックが正しければ、役職や階層とは関係なく意見が尊重される。



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