回帰分析
のシンプルな式は、
Y = AX + B
です。これは、傾きがAで切片がBの直線を表す式です。
構造方程式は
Y = AX + B + E
です。Eというのは、誤差(Error)で、この部分があることで、ばらつきながら直線に近い形でデータが並んでいることを表現します。
この式は、「加法(足し算)モデル」と呼ばれます。
乗法(掛け算)モデルというものもあります。
乗法モデルについての、世の中の解説は、大きく分けると2種類あります。 誤差項の形が違っています。
このページで、「乗法モデルexp(E)」と呼ぶのは、下記のような式です。
Y = B * (X^A) * exp(E)
こちらは、「multiplicative model」で検索すると出て来ます。
このページで、「乗法モデルE」と呼ぶのは、下記のような式です。
Y = B * (X^A) * E
乗法モデルEは、時系列解析のモデルとして紹介されることが多いです。 また、「乗法モデル」で検索して出て来る解説は、筆者の見た範囲では、全部、乗法モデルEでした。
グラフの中の「E0.1」というのは、かっこの中の数字が、平均値が0、標準偏差が0.1の正規分布の乱数であることを表します。
乗法モデルexp(E)の例です。
Xが大きくなるにつれて、Yのばらつきが大きくなってくることを表すモデルなのは、乗法モデルEと似ていますが、Yが全体的に大きくなることも表しています。
乗法モデルEの例です。
Xが大きくなるにつれて、Yのばらつきが、プラスとマイナスの両方で、大きくなってくることを表すモデルになっています。
上記のグラフでは、周期性はありません。 周期性を扱うなら、 ARモデルとその発展形 のようにして、加法モデルで扱うと簡単です。
「乗法モデル」で調べると 時系列解析 の方法として紹介されている記事が、たくさん見つかります。
Xを時系列と考えると、乗法モデルは、「時間が経つほど、不確定要素の影響が増大していく」ということを表すモデルになります。
唐突ですが、加法モデルの構造方程式を下記のように変形します。
この変形をすると、加法モデルと乗法モデルが同じものであることがわかります。
乗法モデルの両辺に対して、対数を取ると、乗法モデルから加法モデルに変形できます。
加法モデルと乗法モデルEの関係も同様です。
乗法モデルと比例分布モデルは、似ていますが、実務面では使い分けた方が良いです。
乗法モデルは、時系列解析のモデルとしてよく知られていて Xを時間と考えて、時間が経つほど不確定性が増大することを表現するモデルとして採用されるようです。
比例分布モデルが合う例は、測定器の値をXとした時のモデルです。 自然現象とその測定の関係を扱う時に適しているようです。
乗法モデルexp(E)と比例分布モデルは、ほとんど変わらないような時と、明らかに違う時があります。
ほとんど変わらない時が下の場合で、左が乗法モデルexp(E)で、右が比例分布モデルです。
乗法モデルexp(E)のシンプルな形は、
Y = B * X * exp(E)
です。
比例分布モデルのシンプルな形は、
Y = (B + E) * X
です。
Eが小さい時は、乗法モデルexp(E)は、exp(E)がほぼ1になり、比例分布モデルはEがほぼ0になるので、いずれも
Y = B * X
に近くなり、両者は似て来ます。
Eが大きい時は、違いが大きくなります。左が乗法モデルexp(E)で、右が比例分布モデルです。
Eが大きい時に違いがでるポイントは、2つあります。 ひとつは、 exp(E) と、Eの違いで、Eが正規分布だと、exp(E)は、裾野が極端に長い分布になることによる違いがあります。
もうひとつは、式の形による違いです。乗法モデルは、3つの要素の掛け算になっていて、比例分布モデルは、BとX、EとXの2つの掛け算を足し合わせた形になっていることからできる違いです。 乗法モデルは、Eが大きいと、BやXの値があまり関係なくなり、Eの影響で決まってきます。 比例分布モデルの方は、Eが大きかったとしても、XとYの比例関係は残ります。
ばらつきが大きくなった時に、乗法モデルexp(E)の場合は、X軸(Y=0)にデータが貼り付くような感じになります。 一方、比例分布モデルの場合は、X軸の近くは、それほど密度が高くなりません。 比例分布モデルの場合は、傾いた直線も周りの密度が高くなります。
乗法モデルEのシンプルな形は、
Y = B * X * E
です。
比例分布モデルで、傾きの項が0の場合、乗法モデルEと比例分布モデルは同じになります。左が乗法モデルexp(E)で、右が比例分布モデルです。
傾きが大きくなると、上記のように乗法モデルexp(E)と、比例分布モデルは似て来ることがありますが、乗法モデルEは比例分布モデルのような傾きを持ったモデルにならないです。
DeepSquareのページ
https://deepsquare.jp/2021/03/time-series-predict-model/
時系列データの予測モデルとして解説しています。
BellCurve 統計WEBのページ
https://bellcurve.jp/statistics/course/23739.html
時系列データの予測モデルとして解説しています。
ScienceDirectのページ
https://www.sciencedirect.com/topics/mathematics/multiplicative-model
とても丁寧にまとまっています。
順路
次は
重回帰分析