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システム思考(システムの構造モデル)

システム思考(Systems thinking)は、 システム理論 の基本になる考え方です。
システム思考

狭い意味でのシステム思考

システム思考の比較的古い文献では、因果ループ図と、ストック・フロー図を使ってシステムを表現する方法論になっています。

氷山モデルと呼ばれますが、これらの図を作る時は、自分が見ているものは「氷山の一角」と考えて、海面の下に隠れているものについての考察を進めて、 図にしていこうとします。

また、具体的な数字が図には出て来ませんが、要素の数値的な関係を見ます。 また、数値は時間によって変化するものとして考えていきます。

因果ループ図

因果ループ図は、Aを増やせば、Bが増えて、Bが増えすぎないように、今度はAを減らす フィードバック のはたらきがあるような関係を図で表現します。

この例では要素はAとBだけですが、実際は、もっと複雑な関係を考えます。

ストック・フロー図

ストック・フロー図では、増減がすぐには伝わらず、要素の中で留まる状況も表現できます。

この図に具体的な数式を当てはめると、 システムダイナミクス ができるようになります。

広い意味でのシステム思考と、システムの構造モデル

2022年の時点で、「システム思考」としては、因果ループ図やストック・フロー図以外もツールとして挙げられるようになっています。 筆者としても、因果ループ図やストック・フロー図では表現できないシステムもありますので、システム思考としては、これら以外も考えた方が良いと思います。

広い意味で「システム思考」を表現するのなら、 システム全体を部分の組合せで考えて、「部分(要素)は何があるか?」、「部分同士に関係があるのか?」、「関係があるのならどういう関係なのか?」、 といったことを、図を使って定性的に分析する方法が「システム思考」と言えるようです。 こうして作った図は、「システムの構造モデル」と呼べるものになります。
システム思考

広義のシステム思考の意味では、 定性的な仮説の探索 の方法や、 業務フロー の分析は、システム思考の一種です。

システムズエンジニアリング の分野で「モデリング」と読んで、システムを要素に分けて要素の動きを表現することも、システム思考の一種と考えられます。



システムの2大構造(木構造とネットワーク構造)

参考文献

狭い意味のシステム思考

システムダイナミクス の本の中でも、システム思考は紹介されています。


システム思考 複雑な問題の解決技法」  ジョン・D.スターマン 著 東洋経済新報社 2009
システムダイナミクス に使うことを念頭に置きながら、システム思考の方法を紹介しています。
ループ図と、ストック・フロー図を使い分けています。


入門!システム思考」 枝廣淳子・内藤耕 著 講談社 2007
この本では、目の前に見えていることを要素に分けて、問題解決を進めることを「分析的思考」と呼んでいます。 多様な視点から全体を理解し、その上で要素に分けて、問題解決を進めることを「システム思考」と呼んでいます。
ツールは、ループ図が紹介されています。


ビジネスで使いこなす「定量・定性分析」大全」 中村力 著 日本実業出版社 2019
システム思考は、因果ループ図。
システムの5原型が応急処置の失敗、問題の先送り、エスカレーション、成功が成功を加速、成功の限界。
システムの定型3パターンが悪化、格差、停止。
システム思考の活用の3つの視点が、大局を押さえる、ボトルネックを突き止める、好循環を加速させる。


社会変革のためのシステム思考実践ガイド 共に解決策を見出し、コレクティブ・インパクトを創造する」 デイヴィッド・ピーター・ストロー 著 英治出版 2018
良いと思ってしたことが、想定したことと反対に結果になるメカニズムを分析する方法として、システム思考を紹介しています。
このような事象には、誰かやどこかの悪い部分に応急的な対策をしたのでは、むしろ悪化することもあり、自分たちも含めた社会全体が長期的に改善していくための対策を打ち出そうとしています。


広い意味のシステム思考

システム思考がモノ・コトづくりを変える デジタルトランスフォーメーションを成功に導く思考法」 稗方和夫・高橋裕 著 日経BP 2019
この本では「システム思考」を広い意味で書いています。
定性的な分析として因果ループ図、定量的な分析としてシステムダイナミクスとそれを表現するストックフロー図の解説がありますが、 第5章だけでこれらを書いています。 想定外を想定し、最適解を得る方法としてこれらを紹介しています。
本全体としては、 システムの要件定義 の話が多めです。 この中で、ステークホルダーの価値の流れを分析する方法として、SVN(ステークホルダー・バリュー・ネットワーク)という矢印で関係を表す図が多用されています。


その他

SEBoK」2021
https://www.sebokwiki.org/w/images/sebokwiki-farm!w/6/66/SEBoK_v_2.6_20220520.pdf
「Systems Thinking」という章に書かれているのは、システムの範囲の考え方や、システムの働きなどの抽象的な話でした。 システムを部分に分解して、それを図にして分析する方法は、この章の次にある「Representing Systems with Models(システムのモデルによる表現)」で説明されています。



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