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ARCHモデルは、ARかMAか

以下は、筆者の私見です。 誤解があれば、ご教示いただけると幸いです。


SARIMAX三重指数平滑法Prophet など、時系列分析の代表的なモデルは、平均値の変化を扱うモデルです。 ボラティリティモデル は、標準偏差の変化を扱うモデルです。 ARCHモデル は、ボラティリティモデルのひとつです。

ARCHモデルは、名前に「AR」と入っていますが、「Auto Regressive」の略なので、この点は ARモデル と同じです。

面白いことに、ARCHモデルは、「 ARモデル と似ている」と説明する文献と、「 MAモデル と似ている」と説明する文献があります。

以下で、理由を説明しますが、結論としては、どちらも正しいです。 乗法型のARモデルと似ていて、かつ、MAモデルと似ています。

ARCHモデルとは

ARCHモデルでは、誤差eを、σ(シグマ)とε(イプシロン)の積で考えます。
ボラティリティ

そして、σを過去のeを使って推定します。
ARCHモデル

ARモデルと似ている

ARCHモデルの2つの式をまとめると、以下になります。
ARCHモデル

未来のeを、過去のeと、未来のεで予測する式になっています。

「未来のeを、過去のeと、未来のεで予測する式になっています。」という説明文について、 「e → x」、「ε → e」というように入れ替えると、ARモデルの説明文と同じになります。 この意味でARCHモデルとARモデルは似ています。

ただし、ARCHモデルは乗法型、ARモデルは加法型という違いがあります。

もうひとつの説明

以下のように考えることで、ARCHモデルが加法型でも、「ARCHモデルは、ARモデルの式になっている」とする説明の仕方が、世の中では一般的のようです。
ARCHモデル

2つの式をまとめると、以下のようになります。
ARCHモデル

こうすると、加法型のARモデルと式の形が似ています。 そのため、もっともらしく見えますが、不自然なところが2つあります。

まず、ボラティリティの変化に応じて、vの分布の範囲が変わるので、vに正規分布や一様分布のような分布を仮定できなくなります。

また、
ARCHモデル
という式は、左辺が二乗した値なので、両辺は正の値になることを意味しています。

このため、vは、ボラティリティσの二乗のマイナスの値よりも大きいことになります。 不自然な性質を持ったモデルです。
ARCHモデル

以上のようになっているので、ARCHモデルとARモデルの類似性は、加法型よりも乗法型で説明した方が良いと筆者は考えています。

MAモデルと似ている

MAモデルでは、式が、例えば以下のようになります。 n+1番目のxは、定数のc、乱数e、係数bで求まる式です。
MAモデル

2乗かどうかの違いがありますが、MAモデルとARCHモデルは、式の形が似ています。

なお、「MAモデルと似ている」という時の見方は、 GARCHモデルは、ARMAかESか で、「ARMAモデルと似ている」という時にも使います。




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