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SR (CSR)

SR(Social Responsibility・社会的責任)の名称が表すように、 SRの対象分野は広いです。 現在のSRには、 環境・品質・順法・労働・安全衛生・人権・情報セキュリティが含まれています。 SRは、 経営学 の骨格のひとつになるものです。

SRへの変遷 - 「環境」から「SR」へ

筆者は、環境問題への興味から、「日経エコロジー」を2002年頃から読んでいます。 下記の歴史は、SRそのものの変遷というよりも、 「日経エコロジー」のテーマの変遷と重なります。

公害対策

↓ | 公害問題が相次ぎ、公害防止が企業の責務になりました。

環境対応

↓ | 製造業を中心に ISO14000s 等の環境対応が始まりました。
↓ | 環境対応のアピールとして、
↓ | 環境報告書が発行されるようになりました。

CSRへ

↓ | 「環境」の概念が広げられ、
↓ | CSR(Corporate Social Responsibility
↓ | ・ 企業の社会的責任)に変わってきました。
↓ | 報告書も、CSR報告書という位置付けに変わってきました。

CSRからSRへ そして標準化へ

↓ | CSRをISOで標準化(ISO26000)する過程で、
↓ | CSRの「C」を取り、企業以外にも範囲が広がりました。

ISO26000

SRの ISO はISO26000です。

ISO26000の内容

SRを、世界の持続可能な発展に貢献させようとしています。

特に重要な部分は、7つの原則と7つの中核主題のようです。 7つの原則は、「説明責任」、「法を守る」等です。 7つの中核主題は、「人権」、「環境」、「消費者課題」等です。

ISO26000の意義

社会や企業では、「環境」を独立のテーマとして扱い、本業(本質)とずれたことが起きているではないでしょうか。 そのため、「環境」をSRのひとつの主題と定めた意義は大きいと思います。

また、このサイトのもうひとつのテーマである「品質」は、 ISO26000だと、「消費者課題」に含まれます。 尚、「消費者課題」には、製品だけでなくサービスの課題も含まれています。

環境は環境の担当、品質は品質の担当、人権は人権の担当、という風にバラバラだったものが、 経営の中心的課題である、SRという概念で統合されています。

ISO9001やISO140001との比較

過去に ISO9001やISO140001 のインパクトが強かったからだと思いますが、ISO26000はそれらと比較して、

という点が強調されることが多いようです。 ISO9001やISO140001は、SRのためのツールという位置付けになっています。

CSRとコンプライアンスの違い

CSRに近いものとしては、コンプライアンスがあります。 コンプライアンスは、法令遵守の他に、法令で定まっていなかったとしても、やってはいけないことはやらないという意味で、 徹底しようとします。

CSRとコンプライアンスは似ていますが、CSRには、「持続可能な発展のため」と定められているところが違っています。

CSRへの誤解と批判

CSRを実行しようとすると、社外の利害関係者(ステークホルダー)と良好な関係を保つことも、必要になることがあります。 この時に、「有害な物質を工場の周辺に出さない」や「地域の経済や雇用にも影響がある」といったことに配慮した取り組みが、CSR的な活動になります。

一方、企業によっては、地域社会に対して無償でサービスを提供するボランティア活動を進めているところもあります。

両者は、地域社会と企業がコミュニケーションする点が似ています。

また、両者は、間接的に売上を増やす活動になる点が似ています。 CSRは企業の持続的な発展につながり、ボランティア活動は企業のイメージアップにつながることがあるためです。

さらに、両者は、直接的には、売上を減らす活動(コストになる)点も似ています。

これらのことからボランティア活動がCSRの活動として、誤解されていることがあります。

CSRへの批判は、こうした誤解による活動が本業に貢献していなかったり、むしろ本業を圧迫することについて、起きています。



参考文献

CSR

CSR入門」 小野桂之介 著 日本規格協会 2004
CSRの内容や歴史が、わかりやすく書かれています。


CSRと企業経営」 亀川雅人・高岡美佳 編著 学文社 2007
この本の拠り所は、「消費者がCSRや環境配慮製品を企業に求めるようになって来た。」という点です。

ISO26000

ISO26000:2010 社会的責任に関する手引」 日本規格協会 編 日本規格協会 2011
解説本ではなく、ISO26000そのものの、日本語訳です。 解説本には、歴史的背景等のいろいろな事が詰め込まれている本が多いようですが、 原文はページ数が多いものの、平易な文章で、シンプルです。


ISO26000を読む : 人権・労働・環境…。社会的責任の国際規格:ISO/SRとは何か」  関正雄 著 日科技連 2011
ISO26000の背景や内容が、著者の視点で書かれています。 課題解決には、「社会的連帯」を強めることが大事とのことです。


CSR新時代の競争戦略 ISO26000活用術」 笹谷秀光 著 日本評論社 2013
ISO26000は、慈善活動を否定的な評価をしていないものの、慈善活動をすることで、社会的責任を果たすことの代わりにはならないことが書かれています。
CSRとCSVの連携や、CSRとESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)の連携もあります。


ISO26000実践ガイド 社会的責任に関する手引」 松本恒雄 監修 中央経済社 2011
中核課題を、それぞれ細かな課題に分けて、解説しています。


CSRへの批判

ESG財務戦略 SDGs時代を勝ち抜く」 桑島浩彰・田中慎一・保田隆明 著 ダイヤモンド社 2022
CSRは、企業は社会に負荷をかけているので、そのトレードオフを目的として、本業とは別のところで行われている文化活動や環境保護活動として、説明しています。
そして、CSRは株主の利益とは離れているとして、CSVやESGの考え方が重要であるとしています。


ESG経営を強くするコーポレートガバナンスの実践」 松田千恵子 著 日経BP社 2018
CSRは、本業と離れたところで、企業が熱心に行っている活動として紹介しています。


CSRの情報の評価

ESG情報の外部保証ガイドブック SDGsの実現に向けた情報開示」 サステナビリティ情報審査協会 著 税務経理協会 2021
タイトルにある「ESG情報」は、 環境影響評価 の一種で、その会社が排出する水質汚染物質、大気汚染物質、CO2排出量、等を指しています。
こうした情報の妥当性を社外に審査してもらう時のガイドブックになっています。 ESG 自体の本にはなっていないです。




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