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標準SN比

標準SN比は、名前に「標準」とついているので、「標準的なSN比」と誤解されやすいようです。 また、 SN比 の中では、比較的後になって考えられたものなので、 「従来のSN比よりも素晴らしいSN比」と誤解されやすいようです。

標準SN比は、標準状態のロバスト性を評価するためのSN比です。

標準状態とは

標準状態というのは、基準として決まっている因子の水準の組合せのことです。

例えば、決められた条件で動いている工程で、突発的に起きる 外乱 があるなら、 外乱がない場合が標準状態です。

標準状態のロバスト性評価

標準状態のロバスト性評価とは、 例えば、外乱になりそうな因子の有無による影響の評価です。

標準状態と考えている条件の下で、XとYの数値の関係がわかっているケースがあるとします。 「Xが1、2、3、4、5の時に、Yが21、23、25、27、29」になっている等です。 そして、別の条件に変えた時に、同じXに対してYの数値的な関係が変わるとします。
ロバスト設計 としては、条件を変えてもXとYの値はほとんど変わらないことを目指しますので、 条件を変える前後でのYの変化を、ばらつきとして評価する必要があります。

標準状態との違いを見るという考え方は、 当然のことながら「標準状態」の存在が前提になっています。 上記の例で言えば、 何が標準なのかがわからない実験では使えません。 また、ベストな条件を見つけることが目的になっている実験でも使えません。 念のため書くと、 ベストな状態や条件がわからないのに、標準状態や標準条件を仮定して実験を進めた場合、 初心者の実験 と同じことをしているので失敗します。

標準状態との違いの解析方法

標準状態との違いの解析では、 評価尺度として、相関係数を使う場合と、標準SN比を使う場合があります。 品質工学 から提案されているのは、標準SN比の方です。 相関係数の方は、筆者が補足したものです。

相関係数を使う方法

相関性 のページで、Aの使い方として紹介している方法を、 標準状態との比較のための方法として使うものです。

標準条件でXを変えていった時のYと、 変更後の条件でXを変えていった時のYについての、YとYの相関係数を評価します。 ロバストならば、相関係数が 1 に近い値になります。

この方法は、XとYが線形の関係でも、非線形の関係でも使える方法です。 また、Xが 質的データ でも使える方法です。 ただし、「非線形の関係」はいろいろあるので、 非線形の関係に使う場合は、ケースバイケースの対応が必要になります。 「グラフを見ながら適切な水準を取る」、等の対応です。

※ この方法を機械的に実行すると、 XとYの関係を見ていないです。

標準SN比を使う方法

特別な条件が揃っている場合には、 相関係数による解析だけでなく、 標準SN比による解析も可能です。 (つまり、相関係数の方法の方が、汎用性が高いです。)

特別な条件とは、 「変更条件(=誤差因子)が 量的データ で表現でき、かつ、変更条件が2つあり、かつ、2つの平均的な位置に標準条件がある場合」です。 この場合は、ばらつきの尺度として、「標準SN比」が提案されています。

標準SN比の式は、動特性のSN比と同じです。 正確に言うと、 誤差因子と信号因子を 直交表の外側配置 で評価する時の、動特性のSN比と同じです。 誤差因子を「2つの変更条件」とし、 2つの変更条件による実験のYを「Y」とし、 標準状態で実験した時のYを信号因子「X」として、 動特性のSN比を計算すると、 標準SN比を計算できます。

標準SN比の式と、動特性のSN比の計算式が同じになる理由は、 相関性 のページで、@とAの両方が相関係数を尺度にしている理由と一緒です。

動特性の実験のさらなるデータ解析としての、標準状態の解析

動特性の実験の、さらなるデータ解析としても、標準状態の解析の考え方が使えます。 第2段階の解析と言っても良いかもしれません。

まず、普通に動特性の実験を解析して、ベストな条件を出します。 そして、ベストな条件を標準状態とみなします。 すると、ベストな条件と他の条件の比較に、標準状態の解析が使えます。

動特性のSN比と標準SN比

「相関係数を使う方法は、XとYが非線形の関係でも、 Xが質的データでも使える方法」と、上記で書きましたが、 標準SN比を使う方法でも同様です。

おそらく、 「XとYが非線形の関係でも、Xが質的データでも使える方法」という部分だけを読むと、 「動特性のSN比の弱点である非線形が評価でき、 静特性のSN比と同じようにXが質的データでも使えるのだから、 標準SN比は、従来のSN比よりも素晴らしいSN比なのだ!」、 という誤解が起きます。( 動特性と非線形現象 を参照)

しかし、このページで上から順に説明した通り、 標準SN比は、標準状態のロバスト性を調べる目的の時に有効な尺度なので、 従来よりも素晴らしいというような話ではありません。



参考文献

「ベーシック 品質工学へのとびら」 田口玄一・横山巽子 共著 日本規格協会 2007
ネットを見ると、標準SN比の定義や計算式は、いくつかあるようです。 間違いと思われるものもあります。 このサイトの標準SN比は、この本の定義を元にしています。 著者と出版社から考えて、一番信頼できる定義だと思います。



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