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「ならば」や「だから」の多義性

因果推論 や数学では、 「ならば」や「だから」という表現がよく使われます。

日常的に使う言葉なので、違和感なく使えるのですが、「ならば」や「だから」で表せることがひとつではないので、 混用しやすいです。

「ならば」や「だから」になる関係

「ならば」や「だから」になる関係として、ここでは3種類を挙げます。 絵にすると、違いがわかりやすいですが、「ならば」や「だから」という言葉だけだと、ややこしいです。

包含関係


「自動車 ならば(だから) 機械」となっています。

言葉の範囲によって、決まっています。 オントロジー とも呼ばれます。

因果関係


上の例の場合、「走る ならば(だから) 息切れ」となっていて、原因と結果の関係を表しています。 矢印で表せることと、ならばの前後で時間的な差があるのが特徴です。

論理的推論で使われています。

データ構造


上の表が顧客と買った物のデータとします。 このデータだと、「Aさん ならば りんご を買う」ということが読み取れます。

このデータが、包含関係や因果関係のデータの場合もありますが、包含関係や因果関係がなかったとしても、成り立つことがある「ならば」です。

if-thenルールになるデータの構造 のページでは、上記のような「Aさん ならば りんご」のような時に、 データ構造で「ならば」となっていても、因果関係の向きは逆な場合があることを説明しています。 また、 有向グラフになるデータの構造 のページでは、「ならば」のデータ構造をさらに広く考えています。

必要条件と十分条件

必要条件と十分条件は、高校の数学でも出て来る話題です。 数学の話題としても、「どちらが必要条件か」といったややこしさがありますが、 データサイエンス としては、さらに輪をかけてややこしくなっています。

必要条件は、「ならば」の前に出て来るものです。 十分条件は、「ならば」の後に出て来るものです。

包含関係の場合でも、因果関係の場合でも、必要条件や十分条件という呼び方で、ならばの前後の位置付けを考えるのが一般的なようです。

因果関係の分析で、「自動者 だから 機械 なのだ」というような話が入ることがあるかもしれませんが、自動車が原因という話ではないので、ややこしいです。



参考文献

新・論理考究 論理がはじめてわかる」 本橋信義 著 幻冬舎メディアコンサルティング 2016
「ならば」という言葉の使い方として、法則、論理語、推論の、3通りを紹介しています。また、それらは混同されている、という話があります。
高校数学で習う「ならば」は法則で、大学数学で習う「ならば」は論理語の意味で使われているそうです。 論理語の「ならば」には、量の概念が入っています。
推論には、法則型推論、メタ推論、事象型推論の3つがあるとしています。 法則推論型は、条件から条件を導く。 事象推論型は、命題から命題を導く。
法則推論型は、法則の表し方と同じなので、「ならば」の意味が確定している。 事象推論型は、「ならば」の意味が論理の決め方に依存する。 メタ推論型は、「ならば」に特定の意味があり、その意味は背景にあるコミュニティや社会によって決まっている。
数理論理学や、また数学の推論(数理論理学をベースにしている)は、法則型推論。
筆者は上記で、「包含関係」、「因果関係」という呼び方をしています。 包含関係の方はこの本でいうところの法則型推論で、因果関係の方は、メタ推論・事象型推論というように、だいたい対応しています。




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