疫学(えきがく)は、医学の一分野です。 集団で発生した病気(伝染病)の原因を追及する学問です。
真の原因は何かの菌だったとして、菌が特定できなかったとします。 しかし、菌の特定まで行き着けなくても応急対策はできます。 例えば、何の菌かはわからなくても、ある水源が原因だとか、 ある食材が原因だとかいうところまでがわかれば、 その水源を使用禁止にしたり、その食材を絶対に食べないようにすれば良いからです。
こういう対策法は、 リスク管理 で予防原則といわれています。 予防原則は、やり過ぎると日常生活が成立しなくなるので、バランスが大切です。 尚、根本原因がわかるなら、それに越したことはありません。
あらかじめ暴露された集団を設定し、その中での発生率を調べます。
「疫学とはなにか データと理論思考で探る病気の原因と予防」 中村好一 著 技術評論社 2021
因果関係を判断する際の視点として、「関連の一致性」、「関連の強固性」、「関連の特異性」、「関連の時間性」、「関連の整合性」という5つが、
1964年に米国で喫煙と健康の関係を研究する委員会から出されたそうです。
現在は、これに項目を追加したものがいろいろ出ているものの、基本的な考え方は変わらないそうです。
「関連の一致性」や「関連の整合性」というのは、複数の研究の結果と一致していたり、理屈が同じであることを確認する作業です。
一方で、
因果推論
の分野では、手元のデータだけから因果関係を判断しようとすることがあります。
非常にローカルな現象だと、こうするしかないこともありますが、やはり5つの視点のような確認は必要だと改めて思いました。
最後の方で、ビッグデータの話がありますが、ビッグデータだとしてもデータに偏りはあることへの注意や、
ビッグデータを使えば何でもわかる訳ではないことがありました。
「リスク科学入門―環境から人間への危険の数量的評価」 松原純子 著 東京図書 1989
アプローチとして、疫学・
信頼性工学
・
生態系
が出てきますが、題材としては放射線関係が中心です。
「空間疫学への招待 ―疾病地図と疾病集積性を中心として―」
丹後俊郎 ・横山徹爾 ・橋邦彦 著 朝倉書店 2007
疫学の基礎が始めの方にコンパクトにまとまっています。
「環境学研究フォーラムV 環境研究と疫学 −その有効性と限界」 鈴木継美・大井玄 編 恒星社厚生閣 1987
火山灰の健康影響・肺ガン・水俣病・脳卒中、等を通して疫学を述べています。
「環境疫学入門」 山崎新 著 岩波書店 2009
因果推論
の方法論、水俣病などの公害の調査の事例、地球温暖化などの環境問題の人や生態系への影響の調査の事例で、3部構成になっています。
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