破壊工学というのは、「物の壊し方」の学問ではなく、「物の壊れ方」の学問です。 破壊力学でも、ほぼ同じ内容の議論がされていますが、 材料の劣化の話が入っていたりして、力の話だけではないので、ここでは「破壊工学」にしました。
信頼性工学 は、物の壊れ方の確率を調べることはしますが、 「なぜ、その確率になるのか?」には、あまり踏み込みません。 破壊工学は、壊れ方のメカニズムを明らかにします。
破壊工学には、亀裂に注目して、亀裂への力のかかり方や、亀裂の成長の仕方を考えるアプローチや、 亀裂は特に問題にせず、材料の変形の大きさと破壊するまでの時間を考えるアプローチがあります。
亀裂の成長には、力だけでなく、高温環境での分子の活性化や、化学反応による腐食も関係します。
材料力学は、物理学の力学の応用分野と言っても良さそうです。 応力やひずみを整理した後に、引っ張り、圧縮、曲げ、ねじり、座屈に応用します。
材料力学だけだと、その材料特有の事情はわからないので、 本当に壊れるかどうかまではわかりません。 しかし、力のかかり方はわかります。
破壊現象のきっかけとなる数字の統計量を扱う分野に、 極値統計 があります。
「破壊・フラクチャの物理」 蕪木英雄・寺倉清之 著 岩波書店 2007
ミクロとマクロの両方の観点で、破壊現象を解説しています。
破壊現象というのは、例えば、亀裂をきっかけにして固体が壊れる現象です。
「亀裂の安定性」という見出しもあります。
「絵とき 破壊工学 基礎のきそ」 谷村康行 著 日刊工業新聞社 2009
マクロな理論の話や、破壊に関わる現実的な話(測定方法・遊具の安全管理)があります。
壊れやすさのシミュレーションとしての応力解析や、
フェイルセーフ構造
についてもあります。
・破壊には、材質の変形のある「ぜい性破壊」と、変形のない「延性破壊」がある。
・応力は、外力と形状で決まる。材質は関係がない。
・応力と強度の単位は同じ。
・靭性(じんせい)は、破壊のエネルギーに関係する。
・寿命予測 ― パリス則 + 応力比(R)
「よくわかる 破壊力学」 萩原芳彦・鈴木秀人 著 オーム社 2000
金属・セラミックス・高分子の原子構造の解説から始まって、
それらの共通した内容と、材料別の内容の解説になります。
「システム制御の基礎と応用 −メカトロニクス系制御のために」 岡田昌史 著 数理工学社 2007
制御工学
の本ですが、破壊現象に関することも少し書いてあります。
・共振周波数 : 機械システムにとって危険な周波数。壊れる原因になる。
・オーバーシュート : 制御の行き過ぎ量のことです。
オーバーシュートは、適正な値に制御する時の、途中の値です。
適正な値の時は問題なくても、オーバーシュートの時に機器が耐えられなくて、
適正な値になる前に壊れてしまう場合があります。
「連続体損傷力学」 村上澄男 著 森北出版 2008
連続体損傷力学とは、損傷を表す変数を考え、その変数を応力やひずみの関数で表す学問のようです。
「基礎からの衝撃工学 : 構造物の衝撃設計の基礎」 石川信隆 他 著 森北出版 2008
破壊力学のように、ある一点を起点にして破壊するのではなく、
物が衝突したりして壊れる現象を扱っています。
最後の章で、土木や建築の分野での設計の話や評価の話があります。
・衝撃問題では、2つの物体の接触している時間が重要な変数
・波動解析 :応力波の伝播を、位置と時間で評価
・振動解析 :固有モード関数の重ね合わせで評価
・波動解析と振動解析は等価
「絵とき 材料力学 基礎のきそ」 井山裕文 著 日刊工業新聞社 2006
字が少なくて、見やすい本です。若干、難しいことも書いてありました。
カスティリアーノの定理 : 外力の関数として与えられた物性全体のひずみエネルギーを、
その中の一つの外力で偏微分すれば、
その外力の作用点での力の方向の変位を求めることができる。
「図解 材料力学の基礎」 稲村栄次郎 著 科学図書出版 2009
上記の本よりは、詳しいです。
順路
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